見出し画像

対人援助の前線である相談窓口で果たす役割とは

自立相談窓口で毎日相談にのるようになって考えるようになったことがある。それはキャリアコンサルティング(就・転職相談)と生活自立相談とは全く違うということ。どういうところが違うかといえばその目的である。その前に、どちらにも共通する部分について考えておきたい。その共通する部分というのは対人援助職で欠かせない要素である、共感的理解や受容的態度、また、誠実で傾聴的な姿勢が重要である点については言うまでもなく、共通している部分であると考えられる。

一方、明らかに違う面について目を向けてみると、やはりその目的であると思う。その目的とは、キャリア支援では往々にして、就職や転職の成功と定着にあると思う。その人自身のキャリア形成においてそれが出発点になる。対して自立支援では、就職や転職といったキャリア形成以前の段階における支援と見ることができる。すなわち、生活自立支援はキャリア形成支援の根幹であり、人生構築における土台・基礎となるものである。

そのようなことを踏まえたうえで、今のこの仕事を振り返ってみると、さまざまな人が窓口を訪れるわけだけど、その多くの相談が生活の根幹を揺るがす問題に直面しているということ。たとえば、突然の解雇で失業してしまった人や、ついに手持ちの現金がなくなり生活に困窮してしまった人、個人事業主として生計を立てていたがこのコロナ禍によって財政が破綻しそうになっている人、さらには転職が決まっていたが同じくコロナ禍によって休業を告げられた人など、抱えている問題は千差万別である。このような問題に対して自分がこれまで蓄積してきたものはほとんど使い物にならない。これらの状況では、就職や転職に関するノウハウを使う以前の問題がはらんでいる。

まずは生活を安定させなければ自分の将来について考えられない。自分の今が安定したものでなければ将来にむけての挑戦もできない。

そのような中で、やはり、対人援助職である以上、冒頭で言った共感的理解や受容的態度の重要性について再認識している。それと同時に、現時点でどうしようもない問題に直面している人に対して、いかにして有益な情報を提供できるかという新たな課題もある。相手に対して「気持ちわかります」とか「大変でですね」「お辛いですね」と声をかけたところで、気休めにはなっても今の問題の突破口にはならない。やはり、いかに豊富な情報を蓄積していかにしてその人にとって有益な情報を適切に発信できるか、これにかかっているように思う。

特に今のコロナ禍の状況では、各メディアでさまざまな支援策について報じられている。特に経済的な金融支援策などはおさえておきたい。貸付と給付金とがあるが、貸付については別の機関の窓口対応になるが、それでも基本的なところは知っておかなければならない。給付金については主に「住居確保給付金」の手続きを行うわけだが、その手続きが煩雑であるため実際にオペレートできるまでにはまだ時間がかかりそうである。さらに、4/20以降には支給要件が緩和されるため、相談が殺到しそうな予感である。

加えて、「休業手当」や「雇用調整助成金」「無利子・無担保融資」、税金や年金の支払い猶予、各種公共料金支払い猶予についてなど、知っておかなければならない支援策が多い。また、個別の事例に対処するために、労働基準法をはじめとする各種法令についての理解も必要である。特に、支払いの減免や猶予というものが存在していることを知らない人も多い。もちろん、それらすべてをこの窓口で行えるわけではなく、結果的に他の窓口へ問い合わせしてもらうことになるのだが、あくまで解決への一歩としての情報提供として、役割を果たしたい。現に上記のようなことを知らない人が多く、そのような人に教えてあげると「そんなこと知らなかった」とか「もっと早く知りたかった」という声をいただくこともある。いくらネット社会とはいえ、すべての人に知りわたることは難しい。できるだけ多くの人に有益な情報を提供できるように、たとえ広く浅くであってもまずは様々な情報を提供することによって、少しでも多くの人の助けになるような仕事をしていきたい。

この窓口を訪れる人の多くは、今日明日の生活さえままならない人たちである。また、突然自分の将来を取り上げられ、出口の見えない不安にさいなまれている人々に何ができるかを考えていかなればと思う。

最後に、電話での問い合わせも多くいただくのだが、中にはどうしても支援策の条件に当てはまらない場合が出てくる。それを当然相手に伝えるわけだが多くの人はそれを聞いたとたん、怒り出してしまう。もちろん気持ちはわかるのだが公的な機関である以上、柔軟性がないことも痛いところだが理解してもらうしかない。それをいかにして伝えるかである。また、別の案件では、いくつかの情報を伝えると「いろいろ親切に教えていただきありがとう」と言葉をかけてくれることもあった。もちろんそれでこちらはやりがいを感じるわけだが、こちらがやりがいを感じたところでである。それでも、そういった言葉をかけてくれることによってもっと頑張らなければと思える。

いずれにせよ、僕が目指すべき広義と狭義の両方の併用的なキャリア形成支援のための土台、基礎となる生活自立支援事業で経験を積み、できるだけ多くの人たちへの支えになれるように仕事をしていきたい。今は経験を積むとき、知識を積み重ねるとき。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?