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タバコカラムーチョ

免許取得のため、ついに府中へ来た。

試験場はめまぐるしい。全ての人が少し不機嫌で、与えられた職務をまっとうするべく喋り続けている。たくさんのベルパーでできた道から正しいものを選び、その中をすいすいと進む。なんか消化されているご飯の気持ち!!全てがオートメーション化された試験場は扉や床が未開発でアンバランス、機械の 機 が旧字体だった。

なぜか受付終了からニ時間のフリータイムが発生したため、例のごとく送迎してくれている恋人とからあげ弁当を食べていた。「あそこの人はみんな怖い、顰めっ面でテキパキしてる」と嘆くと、「そりゃだれも免許の試験場で働きたくないでしょう」と言われた。もしかしてあそこには志摩や伊吹みたいになりたかった警察がいるのか?そりゃあ顔が多少無愛想になったって仕方ないかも。あいつはわたしが緊張してると言ったら腹を抱えて笑いやがったので許していない。わたしが試験を受けてる間は温泉に行くらしい、余罪である。

待合室は当たり前だが水を打ったように静かで、みんなカラフルな教材を睨みつけていた。大学受験の時といい大勢が試験のために集結するとスカしてしまう習性のあるわたしは、机に突っ伏してみたり窓を眺めてみたりした。とっても滑稽。

試験が終わった。ふむ、どちらとも言えない手応え。いや、落ちたな。落ちた落ちた、もうやってらんねぇぜ!
近くのファミマでピースとライターとお茶を買った。一週間ぶりの喫煙はなんと府中である。府中試験場の喫煙所は駐輪場の奥にある。ゴミ置き場とさして変わらない位置とサイズだった。久々のレギュラーに喉をザリザリされていると、日本語がペラペラで日本人ではない兄ちゃんが声をかけてきた。曰く、食べきれないからこのカラムーチョを食べてくれ、とのことだった。手に持ったカラムーチョは食べかけで、いつもより赤さが目に染みた。一応警察の敷地内、悪い人では無さそうだったがさすがに怖いので腹がいっぱいだとお断りする。

「お腹イッパイ?何たべたの」
「からあげ、そこの」
「からあげ?あーね」
たばコミュニケーション史上一番適当な会話だった。

「何しにきたの」
「免許とりにきた」
「とれた?」
「まだ。結果待ちなの」
「あーね」
相槌がネイティブすぎる、すごいぞ、すごい。

「がんばってね」
「ありがとう…ゴザイマス」
すまん、今わたしは神に祈るためにここにいるんだ。

続々と人が集まり始めた。あっつい、日陰も何もない炎天下である、まだニ割しか吸ってないけど中に入ろうかと思っていたら隣の敷地で芝刈りがはじまった。
ブゥゥゥァァゥゥゥゥゥゥン!!!!!!!!!!
あーもうやめだやめだ、爆速で喫煙所を去った。
彼に手を振ったりすればよかったかなぁ、いや、いいか。


受かっていた。番号が発表されると、教室では小さなうねりみたいなものが起きた。
同じ誕生日の免許ベビーがこんなに産まれたんだなぁと思うと感慨深い。

うきうきカーライフ、スタート!!!

追記:廊下の椅子に座っていたら、奥の方から「チンゲンサイ大好き!」と話す事務のマダムたちが歩いてきた。「お肉と炒める?」とも聞いていた。はい、チンゲンサイとお肉の組み合わせ大好きです!!!!!

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