洗濯物は干しても干されるな

洗濯は洗濯機に洗濯物を放り込む瞬間が一番楽しい。

部屋中の湿っぽいタオルや、脱ぎ捨てられた服を集めて洗濯機の中に放り込むと、それまでの怠惰な生活の証拠がなかったことになる気がして気持ちがいい。きちんとした生活を送っているというアリバイはないが、怠惰な生活を送っているという証拠もない。私を逮捕したいならそれなりの証拠を持ってきてください、と刑事さんたちを追い返すこともできる。

それから、後はよろしくと洗濯機に任せて、自分の手は汚さないでいられるところも好きなのかもしれない。

ここまでの話を聞かれると人間性を疑われそうだが、私にだってピュアで優しい気持ちはある。干した洗濯物を眺めるのが好きという人は多いと思うが、私も好きだ。ベランダに干した洗濯物が風になびいている光景を見ると、幸せな気持ちになる。洗濯物も太陽の光をいっぱいに浴びて、外の風に触れて幸せだろう。

自分が洗濯物だったらという妄想もはかどる。特に、普通のハンガーが足りなくてピンチつきのハンガーに逆さまに挟んで吊したヒートテックは私の抜け殻のようで、まるで自分が逆さまに干されているような気分になる。びよーんと腕を伸ばしていて気持ちが良さそうだ。

ただ、私はやはり怠惰だった。

洗濯物たちを部屋の中に連れて帰ると、36時間も外に閉め出された彼らは、かぴかぴになっていた。一日半、野ざらしにされた私(ヒートテック)の気持ちを想像して震えあがる。

まさに私の人生は洗濯の連続でできている気がする。

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