見出し画像

国内NFTを実際やってみての独り言

ここ最近の絵描き界で話題になったNFTというものがあります。デジタルな絵を著作権保護し、売買しても描いた人にロイヤリティが入ってきてウハウハとかいう例のアレです(かなりいい加減な説明)。
話だけ聞いていると損なんて全然無さそうなNFT。しかしチラホラ胡散臭い話も聞こえたり、でもこれからメタなバースがひと盛り上がりするらしい?から早く参入した方が良いかも?みたいなビックウェーブ感もあります。

私自身はNFTという仕組み自体はとても興味があって素晴らしい技術だと思っているのですが、どうにも取り巻いている人たちが苦手で参入していません。
「あの人がNFTイラストを販売開始しました!」とか「あのコレクターさんが何万円分NFT購入してくれるそうです!参加するなら今!」みたいなツイートを絵師さんなら見かけたことがあるんじゃないでしょうか。アレです。文面だけ見ると悪徳業者かネズミ講なんですが、しらねぇよ勝手に見えないところでやってろよって感じです。

しかし悪態をついてみましたが、実は私もお遊びでNFTをやろうとしたことがあります。たまたま小銭が入ったのでこれでOpen see(海外のNFTマーケット)に1点くらい絵を投げ入れてみようと思って登録やら何やらまではやっていたのですが、ここで問題になったのがいわゆる「ガス代」というやつ。つまりは出品手数料みたいなものなのですが、当時は通貨のイーサリアムが高騰していたこともあって出品する手数料だけで2万円を超えることに…流石に自分の適当な絵でペイできる気がせずにそのまま放置してしまいました。

さてそれから数ヶ月。国内でのNFT業者もポツポツ増え始め、周りのNFT!NFT!とうるさい人達をブロ解する作業(ヒドイ)をしていたのですが、そこに一緒にNFTで遊ぼうぜ!というDMが届きました。国内のマーケットから転売ヤー捕まえてOpen seeまで持って行ってもらった人が勝ちという、わらしべ長者的ゲームです(とんでもねぇゲームを考えたもんだ)。

ふむ、正直NFTで儲ける気も儲けれる気も全くなかったのですが、そういうゲーム感覚でやるなら楽しいかもしれない。というかやらずにNFT批判してましたが、実際やってみれば思ったより面白いかもしれない…じゃあやってみよう!ということであまりお金がかからないで参加できるHEXAというマーケットに登録しました。

HEXAでは日本円での取引が可能で、しかもガス代がかからないというのは魅力ですね。1000円から販売しても手数料の2割引かれて800円は手元に入り、二次流通して転売されれば設定したロイヤリティ分の金額が入ってくるので、英語圏のOpen seeが敷居が高くて参加しづらかった人にはちょうど良いのではないでしょうか。

というわけで手持ちの似たようなイラストをシリーズ化して登録、毎日1作品を1000円でオークション形式で公開する、という事を2週間程度続けました。
また、宣伝は最小限にするためにオークション開始時間に一度Twitterでリンクを流すだけにしました。これは単純に宣伝するツイートをTLに流したくなかったためですが、逆に宣伝しない場合どの程度の売り上げになるかの目安になるかもしれないと考えたためです。(なお使用したアカウントはフォロワーは1400人程度、イラスト系アカウントです)

そして結果ですが…なんと今現在まで販売開始しているものはほぼ全て売れています(入札あり含む)。これは本当に驚きです。宣伝はほぼしていないので、単純に見かけて興味を持ってもらえたという感じでしょうか。

しかし内訳を見ると内情は少々異なります。全14枚のイラストのうち、1人の方が11枚購入しているのです。こんなに買って大丈夫なんでしょうか。普通に心配です…私の絵が好きでファンとして買っていただいたならばこれほど嬉しいことはないのですが、これが転売目的だったらそんな価値ないぞ大丈夫か!?となる訳です。こんな木端絵師のイラストをわざわざお金を払って集める理由とは…ありがたい気持ちと心配な気持ちが半々の複雑な気持ち。とはいえ購入していただいた皆さまには頭が上がりません。ありがとうございました。

しかし買ってもらって終わらないのがNFT。さらに二次流通で一儲けできる訳です。さぁ買ってくれたみんなは頑張って売ってOpen seeまで持ってってくれよ〜!

…となるかというと、そうそう簡単にはいきません。そもそもコレクションのつもりで買った人は売らないですし、売りに出したところで無名の絵師のイラスト。元値以上で買ってくれる人なんてそうそういません。
そうなってくると二次流通を狙うには「絵(絵師)の価値を上げる」のと「買ってくれる可能性がある人達と交流を持つ」ことが必要になります。極端な話、絵のクオリティよりもコレクターとかいう人達と仲良くしたほうが売れる可能性が高いと思います。けっきょく宣伝やコミュニティでの交流は必須…コミュ力が試される時代、やはり最低限の宣伝で伸ばすのは難しそうです。


以下は個人のNFTに対する率直な感想です。

NFT上位の方々は置いといて、末端のユーザーのコミュニティは仲間内でお互いの絵を買い合ってロンダリングして、なんとなく有名人感を出しているようにしか感じません。特によく見かける「ボディを流用して色を変えただけ・髪型や飾りを変えただけ」の大量生産品のアイコン。小銭を稼ぐためか何かは知りませんが、あれらが売れているということが本当に信じられない…ファミコンのゲームの色違いの敵みたいなもんじゃないですか。現代アートと同じジャンルで見ればいいんでしょうかね、アレ。
しかも圧倒的に供給が多すぎて一般の買う人がおらず、結局描いてる人たちと取り巻きが買って盛り上げようぜ!みたいな感じで自分で自分の足を食ってる状態に見えるのがなんとも。

そもそも一般の人たちがNFTを買う理由がほぼ無いのが致命的で、使えるとしたらアイコンくらいですがそれなら大量に買う必要もないですし、特に低価格のNFTは自己満足で集めるか製作者への投げ銭くらいの意味合いしかない状態に見えます。コレクターがNFTを買ってあげて絵師が気持ち良くなるシステム…キャバクラみたいなもんですかね。少なくとも投資でやるのであれば原資貯めてOpen seeに行くべきでしょう。

とりあえずNFTはデジタル時代の絵描きが自分の絵に付加価値をつけるという意味ではそれなりに良いシステムだとは思います。けれどこのまま成功するかというとそれは微妙かなぁと。

まず「オリジナル」のデジタルデータを本当に欲しい人がいるのか?という点。アナログ一点ものと違い、証明書があろうがなかろうがスクリーンショットでも何でもやろうと思えばコピー出来てしまうものに、あえてお金を払う意味は何なのか。

絵を描いた人への対価として払うのか?となると直接注文できる人なら、そのまま取引して自分の欲しい絵を描いてもらって直接代価を払った方がwinwinではないでしょうか。skebでも何でも直接お願いできる環境は今やいくらでもあります。

じゃあ投資目的で高くなりそうな作者や作品に唾をつけておこうかというと、そんなコピーしやすいデジタルデータに本当に投資手段となり得るのかというとどうなのか。
実際に何億何千万の価値がついたNFTはたくさんありますが、果たして実際にその価値はいつまで持続するのか…いつか来るブームが去るまでの転売ババ抜きになっているような気もします。
そもそも基本的に仮想通貨でしか取引できない以上、その通貨の価格の変動に影響されすぎて安定した投資手段とはなり得ないようにも思います…が、そもそもNFTも一過性の流行り物で終わる可能性はあるわけで、ギャンブルやってるのと対して変わらないですね。

しかも拾ってきたイラストデータを使って他人が無断で登録できる時点でもう既に正規性も何もあったものじゃない市場になってしまっているというのもどうなのか。売れてる人のコピーページなんてすぐできてるあたり完全に闇市ですね。そういった部分は早く何とかしないといけないですがどうなるやら。

そういう意味でやっぱアナログ絵は強えわってなるし、現物があるというのは満足感も所有感もあるしで、どう頑張っても敵わないと思わされるわけです。

以上、長文の駄文にお付き合いいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?