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【フォト・ドキュメント】パンクムーブメントの軌跡【第17回】

80年代の日本のポストパンクにおける超重要バンド「カトラ・トゥラーナ」。これほど誰の真似でもなく、誰も真似できないバンドはかつてあっただろうか。その唯一無二の音楽が生まれる現場を最前線で目撃してきた地引雄一氏が真実を語る。


カトラ・トゥラーナ
さかしまの世界


胡散臭くていかがわしい


〈女装したボーカリストが何語ともつかない奇妙な歌を歌い、バイオリンやピアノといった楽器が美しくも妖しげな曲を奏でる。美少女コーラス隊を従えた女装のボーカリストは、まるでパリの裏町の娼館の女主人のようでもあり、何とも言えないいかがわしさを漂わす。その音楽もどこか胡散くさく、摩訶不思議な魅力を放っていた。それがカトラ・トゥラーナだった〉(1stアルバム『カトラ・トゥラーナ』ライナーノーツより。地引氏著)

 1981年8月、新宿ロフトで日本初のインディーズ・レーベルのライブイベント「FLIGHT7DAYS」が行われた。スターリンや非常階段が圧倒的かつ過激なライブパフォーマンスで話題をさらうなか、イベントの最終日、地引氏は衝撃的なバンドを目撃した。

「とにかく奇妙奇天烈だったんだ。ロック、シャンソン、民族音楽、オペラなんかの様々なジャンルを複雑怪奇に異種配合させた音楽を、女装した男が訳のわからない言葉で歌うんだよ。さらにガラクタパーカッション(排水管や古い鐘など)をステージに並べて歌の合間に叩くわけ。とにかくこれまで全く見たことのないパフォーマンスに驚いてさ。それが凄く面白くて印象に残ったんだ」

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