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【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】長野県松本市の男根を担いで回る奇祭『道祖神まつり』

乗れば子宝に恵まれる

 長野県松本市の美ヶ原温泉郷で行われている「道祖神まつり」は、人々にハピネスを分け与えてくれる祭りだ。

ご神体がある神社
由来の説明書き

 ご神体となっているのは、長さ4メートルあまりの『男根』。ハッピを着た10人ほどの男性陣がご神体を担いで20軒ほどの宿泊施設を回る。

巨大なご神体。完全に〝アレ〟の形をしている

 クライマックスは、黒光りしたご神体に女性を乗せて、ユッサユッサと揺さぶるシーン。最初は、躊躇していた女性も、『エイッサ、ホイッサ。エイッサ、ホイッサ~』というかけ声に乗って揺られているうちに、笑みがこぼれるようになる。

ご神体にお酒をぶっかけ
厄除け・縁結び・子宝を祈願する

 実は、ご神体に乗ることができるのは、宿泊施設に泊まっている女性客に限られている。地元の人たちは、蚊帳の外なのだ。大勢の宿泊客の中から選ばれて、運良く乗ることができると「子を授かる」と言われている。

女性を乗せてわっしょい!
子宝に恵まれるという
みんな楽しそう!

 湯の原町会長の金宇保昌さんは話す。 

 「男根が登場したのは1960年代の後半です。衰退していく温泉郷を何とかしてアピールしたかったんですよ。最近の女性は大胆ですねぇ。昔では考えられなかったことです。でも、ご神体に乗ったことによって子どもが産まれたら、こんな幸せなことはありませんよ~」

 「道祖神まつり」は、村に伝わる古いしきたりなどには囚われていない。祭り自体がインチキだとかアホらしいなどとかいった意見にも耳をかさない。みんなで楽しめればいいのだ。地域社会を活性化させようとしている人たちの絆は、絶対にブレることはない。

写真・文◎酒井透(サカイトオル)
 東京都生まれ。写真家・近未来探険家。
 小学校高学年の頃より趣味として始めた鉄道写真をきっかけとして、カメラと写真の世界にのめり込む。大学卒業後は、ザイール(現:コンゴ民主共和国)やパリなどに滞在し、ザイールのポピュラー音楽やサプール(Sapeur)を精力的に取材。帰国後は、写真週刊誌「FOCUS」(新潮社)の専属カメラマンとして5年間活動。1989年に東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(警察庁広域重要指定第117号事件)の犯人である宮崎勤をスクープ写する。
 90年代からは、アフロビートの創始者でありアクティビストでもあったナイジェリアのミュージシャン フェラ・クティ(故人)やエッジの効いた人物、ラブドール、廃墟、奇祭、国内外のB級(珍)スポットなど、他の写真家が取り上げないものをテーマとして追い続けている。現在、プログラミング言語のPythonなどを学習中。今後、AI方面にシフトしていくものと考えられる。
 著書に「中国B級スポットおもしろ大全」(新潮社)「未来世紀軍艦島」(ミリオン出版)、「軍艦島に行く―日本最後の絶景」(笠倉出版社 )などがある。

https://twitter.com/toru_sakai