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【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】沖縄県伊仙町の「不思議な喜念権現」

伝説の美女が現れる洞穴


 1970年代以降、急激に観光地化が進んだ沖縄本土。この影響もあって、琉球諸島に伝わる伝統的な文化や習俗の一部は、時の流れとともに廃れてしまった。しかし、同じ琉球諸島であっても奄美諸島には、今でも伝統的な文化や習俗が残されている。

 徳之島の伊仙町や天城町には、数多くの風葬墓があり、その中には未だに使われているものがある。

 伊仙町には、いくつものミステリアスなスポットが存在する。その中でも喜念権現(新田神社)は、理解できないことが次々と起こることで知られている。

うっそうとした森の中に神社はある
モノノケを感じて振り返ったが、そこには誰もいなかった…
喜念権現の入口。中に入るのには相当な勇気が必要だ


 伊仙町で生まれ育ったGさんに話を聞いた。 

「あれは今から40年くらい前のことになります。お盆のときにお花やご供物をもって行ったのです。すると見たこともないような女性が立っていました。あまりにも美しいのと、そんな女性がここにいること自体が似つかわしくなかったので、もう…〝ソワッ!〟となりましたよ。何をすることもなくそこに佇んでいたのですが、何やら困っているようでしたね…。結局、何も語ることなく〝スッ〟と消えてしまいましたけれども、きっとあの女性は『伝説の美女』だったのだと思います」

 伊仙町に伝わる伝説によると、その昔、喜念村に島一番の美女がいたという。この美女は、他人に自分の素顔を見られることを恥と考えていたとされている。

洞穴の中には、謎の祭壇があった
焼酎などの入った瓶や缶が置かれている
男性器に似た石もある。どんな意味があるのだろうか…


 どれくらい昔の話かは分からないが、村の若者が、彼女の妹をそそのかして、顔を見ることに成功した。するとこの美女は、喜念権現の岩穴に姿を隠してしまったという。それ以来、彼女の姿を見た者はいない。毎年、お盆になると、彼女が帰って来ているのだろうか(??)。

写真・文◎酒井透(サカイトオル)
 東京都生まれ。写真家・近未来探険家。
 小学校高学年の頃より趣味として始めた鉄道写真をきっかけとして、カメラと写真の世界にのめり込む。大学卒業後は、ザイール(現:コンゴ民主共和国)やパリなどに滞在し、ザイールのポピュラー音楽やサプール(Sapeur)を精力的に取材。帰国後は、写真週刊誌「FOCUS」(新潮社)の専属カメラマンとして5年間活動。1989年に東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(警察庁広域重要指定第117号事件)の犯人である宮崎勤をスクープ写する。
 90年代からは、アフロビートの創始者でありアクティビストでもあったナイジェリアのミュージシャン フェラ・クティ(故人)やエッジの効いた人物、ラブドール、廃墟、奇祭、国内外のB級(珍)スポットなど、他の写真家が取り上げないものをテーマとして追い続けている。現在、プログラミング言語のPythonなどを学習中。今後、AI方面にシフトしていくものと考えられる。
 著書に「中国B級スポットおもしろ大全」(新潮社)「未来世紀軍艦島」(ミリオン出版)、「軍艦島に行く―日本最後の絶景」(笠倉出版社 )などがある。

https://twitter.com/toru_sakai