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【2019年度第46問】行政書士試験の記述対策はどうすればいいの?

行政書士試験を受験される方へ


記述式試験が苦手ではありませんか?
今回も前回に引き続き、行政書士である私が過去問を使って解答に続く考え方の道筋を書きたいと思います。
前回にも書きましたが、ここで書いているのはあくまで「考え方」であって「正しい知識の習得」ではありません。ですから、試験のあった年の条文に基づいています。法改正後の条文だと回答できなくなる可能性がありますので、どうかご了承ください。
過去問の問題文は著作権が絡んでくる可能性がありますので書いていません。行政書士の試験センターから見れると思いますので、そちらからダウンロードしてください。
前置きが長くなりましたが、2019年度の問題46を考えます。なんとなくでも解答を作れるイメージがわいてくれると嬉しいです。よろしくお願いします。
今回で2019年度の民法の記述式は終了です。


| 行政書士試験の民法検討(問題46)


民法の択一は問題27~35の9問です。記述式は問題45と46です。

【問題46】
この問題は全く分からなかった受験生が意外と多かったのではありませんか。

閃いても債権譲渡と間違えてしまったりするかもしれません。形としては、代金支払い請求権をAがCに譲渡したようにも見えます。ただ、売主(A)と買主(B)との契約では債権譲渡はできません。債権譲渡をするには譲渡人(A)と譲受人(C)との契約が必要です。ここまで考えると間違いに気付けるかもしれません。

売主と買主との契約は“第三者のためにする契約”と言います。“第三者のために”ですから、第三者が契約に納得しなければ成立しません。一般的には第三者は利益を享受しますから了承することが多いですが、実際には契約に負担がついていたりすることがありますので、第三者が契約に納得する必要があります。ここまで考えが至れば正解を導けます。

“第三者のためにする契約”は、当事者の一方が第三者に対して一定の給付をすることを約する契約です。

不動産取引ではこの“第三者のためにする契約”を使うことがあります。といいますのも、不動産売買の取引をすると所有権移転登記が必要です。登記をするには司法書士の報酬と登録免許税が必要になります。登録免許税は結構な高額になりますので、できれば節約したいと考えるのが通常です。

ある土地・建物について売主と買主がすでにいる場合、不動産屋は仲介をしてもいいのですが、売主から買ってから手直しをして買主へ売ることもあります。このような場合、登記にかかる費用を節約するために、売主と買主の許可を得て、売主から直接買主へ登記を移転することができます。その方法が“第三者のためにする契約”なのです。他人物売買が禁止される不動産屋でも“第三者のためにする契約”は例外とされています。

不動産取引で第三者のためにする契約を使う場合には、重要事項説明書や契約書に第三者のためにする契約であることを明記します。司法書士とも綿密な打ち合わせが必要になります。

話が脱線しました。問題46では、Aから時計を購入したBがCに対して代金を支払うことを約束する契約ですから、“第三者のためにする契約”になります。

“第三者のためにする契約”には2つの要件と4つの注意点があります。

[要件]

1 売主と買主の間で、第三者に対する給付を約束すること。

2 第三者が利益をうける意思表示をすること。

[注意点]

1 売主と買主の間の契約につく抗弁を第三者に対しても主張できる。

2 第三者は物権でも債権でも取得することができる。

3 第三者のためにする契約は“特約”として規定できる。

4 売主と買主の間での契約時点で、第三者が特定されていなくても特定しうるものであればよい。

以上から、“第三者のためにする契約”が成立するには、(1)売主・買主間での第三者への給付の約束、(2)第三者の受益の意思表示の2つがあれば成立します。

本問では、売主Aと買主Bの間で第三者Cへの給付の約束はあります。あとは第三者Cの受益の意思表示があれば、“第三者のためにする契約”が成立します。

問題文に沿って解答を作っていきます。

(1) A・B間の契約を何というか。

[解答例] 第三者のためにする契約といい

(2) 誰が誰に対してどのような事をする必要があるか。

[解答例] CがBに対して50万円を受け取る意思表示をする必要がある。

これらを合わせて解答にします。

[解答例]

“第三者のためにする契約といい、CがBに対して50万円を受け取る意思表示をする必要がある。”(44字)



| まとめ


1 債権譲渡と間違えないように!

2 第三者のためにする契約と気付けるかどうかが肝!

3 第三者のためにする契約は不動産取引で使われます!

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