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《漫画原作》 盆栽甲子園! 【第一話】


あらすじ

この漫画の主人公・古橋友樹菜は、勉強もスポーツも趣味もこれと言って秀でたところのない、ごくごく平凡でどこにでもいそうな高校二年生女子。
ところが!地元の老舗盆栽園の四代目に当たる同学年男子・風間幹矢が、翌年香川県で開催予定の「第一回盆栽甲子園」に出場すると決意し、盆栽部を立ち上げたことから、幹矢にほのかな好意を抱いていた友樹菜も、それまで見たことも聞いたこともなかった盆栽の世界に巻き込まれて行く。
しかも、盆栽はド素人なはずの友樹菜には、樹木と念話できるという、思いもよらない能力が秘められていたのだ……。
前代未聞の《盆栽バトル》を通じて若者たちの成長を描く、愛と友情の学園青春コメディです!

第一話

 東北地方南部。福島県F市。
 一面のモモ畑とリンゴ畑とサクランボ畑に囲まれて建つ、県立暁山ぎょうざん高等学校。通称「ギョーザ高」。
 歴史は長いものの、最近では生徒数が減って、別の高校との統廃合も噂されている。
 夏休み明け。ホームルームの開始を告げるチャイムが鳴った。
 休みボケのボーッとした頭のまま、窓際の席にだらしなく腰かけ、机に半分突っ伏して眠たげに黒板に目をやる女子生徒一名。
 彼女の名は古橋ふるはし友樹菜ゆきな
 この物語の主人公である。
 だが、本人にその自覚はまったくない。
 これから自分の身に起こるであろう波瀾万丈の出来事を、彼女は当然、知る由もない……。

「しっかしさー、まだ八月だってのに、何で学校始まるかねー。こちとら小学生のときからずっと、『お前たちは夏休みが短い分、冬休みが長いんだぞ』って丸め込まれてきたけど、それってホントは嘘じゃん」
 担任が現れないのをよいことに、前の席の新藤しんどう愛里あいりが、身体ごとヨッコラショと振り向いて友樹菜に話しかけた。
「まーそーだけどー、あと一週間余計に休んだからってー、宿題終わるわけじゃないしー」
「ゲッ! 友樹菜、まさか今年も宿題まだなの?!」
「うーん……半分くらいは」
 今年の夏もひたすら遊び呆けてしまった。反省ハンセー。いや反省だけなら猿でもできる。
 つーかさ、遊び相手はずっと愛理だったのに、わたしは宿題終わってなくて、愛里は全部済ませてるの、おかしくない?
「マズイよ、友樹菜……また荒垣あらがきに締め上げられるって」
「だいじょーぶー。さすがに荒垣の分だけは、きっちり仕上げてあるから」
 そこまで喋ったところで、教室の前の扉がガラリと開いた。担任の荒垣ことが、長い髪をなびかせ、不敵な笑みを浮かべながら入ってくる。新学期初日からホームルームに遅刻とは、万事において抜かりのない彼女には珍しい。
「お!」
「ん?」
 愛里が何かに驚いて声を上げた。つられて友樹菜も顔を上げる。
 荒垣の後ろに、どこかで見たことのある男子生徒の姿。
「あの人……確かA組の」
「ええっと……風間かざま幹矢みきや?」
「どうしてアイツが? 愛里、何か聞いてた?」
「ううん。全然」
 荒垣がコホンと一つ、咳払いをした。ザワついていた教室がたちまち静まる。
「皆さん、突然ですが、A組の風間くんから、皆さんにお願いがあるそうです。二年生と一年生の全クラスで話をしてよいと、校長先生からも了承をいただいています」
 何? 何? 緊張が高まって、教室中の視線が黒板の前に立っている幹矢に集中した。幹矢はほんのちょっとたじろいだ様子だったが、ゴクリと唾を飲み込んだあと、こう切り出した。
「ええっと、来年の夏休み、四国の香川県T市において『第一回全国高等学校盆栽選手権大会』、略して『盆栽甲子園』が開催されます。みんな、知っているかどうかわからないけど、俺の家はひいじいちゃんの代からずっと盆栽作りをしていて。言ってみれば『盆栽屋』です。その盆栽屋に生まれた四代目として、どうしても『盆栽甲子園』に出場したいと思っています。でも」
 友樹菜は再び、机に突っ伏した。何だ。わたしにはまったく関係のない話だった。
「この高校には盆栽部がありません。『盆栽甲子園』に出場するには、三人一組でチームを組む必要があります。誰か俺と一緒に『盆栽甲子園』に出場してくれる人はいませんか? 盆栽の作り方は俺が全部教えます。よろしくお願いしますッ!!」
 幹矢が深々と頭を下げる。
 だが、C組の生徒からは、一切反応なし。当たり前と言えば当たり前だ。突然そんなイミフな話を振られたところで……。
 けれども幹矢は、いじける素振りも見せず、
「いますぐじゃなくてもいいんで。その気になったら、いつでも声をかけてください」
 と言い置くと、教室をあとにした。
「さて」荒垣が続きを引き取る。「まずは明日の実力テストの時間割確認から~」

 帰りの電車。
 今日も今日とて西の空に日が暮れる。
 オモチャみたいな二両編成の電車はガタゴト揺れながら走り続ける。
 まばらに座席を埋めている大人たち。子どもたち。温泉のある終点駅から帰ってきた観光客。
 窓の外に見えるのは。
 時間が止まったような中古自動車店。
 いつの間にか建っていた携帯電話の基地局のアンテナ。
 一斉に薄黄金色に染まり始めた田んぼ。
 その向こうには、ショッピングモールとも呼べない規模の、全国チェーンのスーパーマーケット。
「あー、友樹菜よー」
 並んで座っていた愛里が、何気ない口調で話しかけてきた。
「なによー」
 と友樹菜。
「風間って、イケメンだよな」
「そ、そーかなー?(な、なんだよ、とつぜん)」
「そーだよー」
「そっかー」
「んで、な」
「うん?」
「友樹菜は風間とくっついてみる気はないか?」
「へ?」
 友樹菜は思わず愛里の顔をまじまじと見つめた。
「ちょっと、何それ? 愛里あんた、何言ってるかわかってんの?」
 自分でも気づかないうちに早口になる。友樹菜の反応を確認した愛里が、ニヤリと笑った。
「ふふ、焦ったねー」
「焦ってなんか、ないって」
「いーや、脈あった」
「うっそでしょー」
「友樹菜」
「何」
「盆栽、やってみたら」
「何で」
「暇そうだから」
 その言葉に友樹菜はグッと詰まった。痛いところを突かれた。
 そのとおり、わたしは暇だ。正直言って、年がら年中、暇を持て余している。まるで猫か年寄りみたいだと家族からもからかわれている。だってさあ。これと言ってやりたいこと、見当たらないし。十七年間生きてきて、勉強も、スポーツも、趣味だって、何一つ真剣に取り組んだことがない。長続きしたためしがない。
「風間くん、困ってたよー。教室ではあんな感じで強がってたけど、本当はすごく困ってるんだよ。ここで友樹菜が名乗り出ようものなら、間違いなく大・大・大チャーンス。評価爆上がり~。思いきってやってみなよ」
「な、何で、わたしが……」
 電車がF駅に到着した。愛里がサッと席を立つ。
「あ、これから野崎くんとカラオケ行く約束してるから、友樹菜は一人で帰って。じゃ、ねー」
「え? あの、えーっと……」
 そんな、殺生な……なぜ、わたしが、盆栽を。

 とりあえず、見に行くだけである。話を聞くだけである。まだ「やる」とは決めていない。
 堅い意思に支えられたつもりで、翌日の昼休み、友樹菜は2年A組の教室を覗いた。
(あ、いた!)
 風間幹矢が、教室の一番後ろの席で、机に突っ伏したまま眠りこけている。
(ウッ、もしかして、わたしと同類……)
 どうしよう。一度話を持ち出したら、断り切れないかもしれない。風間くん、どういう性格の人か、よくわかんないし。無理矢理引っ張り込まれたりしたら、わたし、流されてしまうかも。それってもしかして、セクハラとかパワハラとか、あるいは不同意ナントカ罪に当たるんじゃ……(友樹菜の頭の中で、極めて美化された自分が、幹矢の腕にがっしりと抱き寄せられている妄想が、薔薇の花のように広がる。背景には、友樹菜の想像するクリスマスツリーのような形をした盆栽が、ずらりと並べられていて……)。
 友樹菜はブルブルッと首を振り、教室に最初の一歩踏み入れようとした。すると、その途端、
「おい、風間ァ!」
 野太い声が辺りを圧した。
 あ!アイツ!「絵に描いたような天然記念物級不良高校生」吉川きっかわまゆみ
 髪を逆立て、わざと乱れた制服(注:暁山高校の男子は詰襟の学生服です)を身にまとった吉川が、手下の二人とともに風間の机を取り囲んでいる。呼ばれた幹矢は、のっそりと頭を上げた。
「テメエ、うちが盆栽屋だとか言ってたよな。いまどきそんなケチくさい商売で、よく食っていけるよなぁ。俺のじいちゃんも昔、盆栽やってたけどよぉ、たまに水やったり、枝を切ったりするだけで、クソつまんなくて、あの世に行っちまったあとは家族も面倒見きれないからって、全部捨てちまったぞ」
 幹矢はぼんやりした表情で、吉川たちを見回した。反論しようともしなければ、格別腹を立てている様子でもない。
(ちょっと。あんなひどいこと一方的に言われて、何で黙ってるのよ。わたしならガツンと言い返してやるんだけど)
「夏休みが終わったばかりだってのに、『盆栽甲子園』だとか、一緒に盆栽やってくれとか、しゃらくせえこと言ってんじゃねえよ。一人だけカッコつけやがって」
 子どものころから、正義感だけは人一倍強いのが友樹菜である。言うだけ損と頭では理解しているものの、筋の通らないことに出くわすとどうしても我慢できず、つい口出ししてしまうのだ。
 友樹菜は、我を忘れたかのようにズカズカと教室に入って行くと、頭ごなしに吉川を面罵した。
「吉川! アンタ、何の権利があって他人の職業をそうやって馬鹿にできるの? それに、いまの言い草、おじいちゃんがお墓の中で泣いてるよ! 何て情けない孫だって。アンタのおじいちゃん、アンタのことも盆栽のことも、一生懸命可愛がってくれたんじゃないの?」
 吉川は、鳩が豆鉄砲を喰らったみたいにぽかんとして、友樹菜の顔を見つめた。
「C組の……古橋?!」
 吉川の頬がほんのりと桃色に染まる。なぜか視線が不自然に揺れ動く。
 (え? 何それ? 怒るんじゃなくて照れるって、どゆこと?)
 吉川の反応を見ていた幹矢は、何かに勘づいたらしかったが、あえてそれは言葉に出さず、黙ってその場から立ち去ろうとした。
「おい、こら、待てぇ」
 気づいた吉川が、問答無用とばかりに幹矢の襟首を掴む。
「これからテメエに空手の稽古をつけてやろうと思ってたんだ。つき合えッ!」
「おお、吉川さん、何かすごい気合い入ってますゥ!」
 手下がわざとらしく感心して見せる。幹矢はスッと片手を上げると、友樹菜を背後に退かせた。
「……ったく、令和の時代に、どうしようもない骨董品だよな、お前ら」
「ほざけぇぇぇッ!!!」
 吉川が全力で蹴りを入れた瞬間、幹矢は相手の攻撃を紙一重でかわし、寸止めの正拳突きを吉川の顔面に叩き込んだ。
「う……ぐ」
 なすすべもなく崩れ落ちる吉川。
「な、なぜ、友樹菜ちゃんの前で、こんな……」
 そのつぶやきが友樹菜に届いたかどうかは、誰にもわからない。

「俺さ、中学を卒業するまで空手教室に通っててね……で、何しにきたの? きみ」
 いかにも面倒くさそうに、幹矢が友樹菜に尋ねた。
 助け船を出してあげたというのに、腹立たしい対応。
 そりゃまあ、すべてこちらの勝手ではあるが、せめて型どおりの礼くらいは伝えてもらいたい。
 友樹菜はムッとして、
「いえ、何も用事はないので、すぐに帰ります」
 と素っ気なく答えた。
「本当はボン……」
「ボン???!!!」
 幹矢が突然目を剥いて、話に食いついてきた。
「ボン……タンアメという食べものがどこの名物か知ってるかなーって」
「そんなの、宮崎に決まってる……」
「おお、思ったより博識ですな。結構結構。あ、それと、もう一つ、ボン……」
「ボン???!!!」
「盆と正月が一緒にくるって言葉、ありますよね。盆と正月、本当に一緒にきたら、マジ困りますよね~」
「あのな……実際に盆と正月が一緒にくるわけねーだろ。スイカと餅を一緒に食ったら、身体がびっくりして腹壊すだろ……つか、お前一体、何が言いたいんだよ」
 ふむふむ。愛里の言っていたとおりだ。垂らした餌の周りを懸命に泳ぎ回っておるぞ。じゃ、そろそろ。
「ボン……」
「ボン???!!!」
「……風間くんって、そんなにも盆栽が好きなんですか?」
「え、あ、おぉ……そりゃもちろん大好き、さ。俺の人生だからな、盆栽は」
「ええええええええええッ!!!!!」
 教室中から一斉に湧き上がる驚きの声。生徒たちが椅子から立ち上がるガタンガタンという音がけたたましく響き渡った。
「こ、コクってる……!!」
「風間が、古橋にコクったぞ!!!」
「白昼堂々……羨ましい、いや、恥ずいーッ」
 ざわざわざわざわ。ザワザワザワザワ。
「ち、ち、ち、違ーーーうッ! お前ら、誤解すんなーッ!!」
「ち、ち、ち、違いまーーーすッ! 誤解です、誤解!! 全部誤解なんだから!!」
 全身を真っ赤に染めて固まる幹矢と友樹菜。そこに廊下から荒垣先生が駆け込んできて、二人の手を力強く握りしめる。
「二人とも高校生だから、まだ早いわよ~。でも、もし式を挙げるときは、先生が仲人になって、心を込めて挨拶するから、ゼーーーッタイに声をかけてネ♡」
 違う。違う。違う。何かがどんどん間違った方向に進みかけている。
 オネガイ。カミサマタスケテ。
 友樹菜の心の叫びが谺するのだった。

(第二話へつづく!)


補足1:この漫画の狙いと背景

基本的な作りは、オーソドックスな学園ラブコメ&スポ根ものです。
では、この作品のオリジナルは何か?
それは、盆栽という、一般的には年寄り趣味でとっつきにくいと思われがちなジャンルを通じて、若い男女の成長物語を描く点にあります。
そのために設定したのが「全国高等学校盆栽選手権大会」=「盆栽甲子園」という架空の枠組みです。本家本元の野球の甲子園大会のほかにも、俳句甲子園や写真甲子園など、高校生部活動を対象とした「甲子園」はいくつも実在しますが、その盆栽版。全国から集まった盆栽部の高校生たちが、大勢の観客を前に、盆栽の手入れの技を競い合う大会なのです(残念ながら、現実には、高校盆栽部はほとんど存在しません。検索した限りでは、東京都立園芸高等学校が唯一と思われます)。
漫画の舞台のモデルに選んだ福島県福島市は、日本三大五葉松ごようまつの一つに数えられる「吾妻あづま五葉松」の産地であり、古くから盆栽栽培が盛んな土地柄です。国内でよく知られる盆栽産地としては、埼玉県さいたま市(旧大宮市)や、香川県高松市が挙げられるでしょう。
そして、盆栽は今や、日本由来の伝統文化であると同時に、世界の「BONSAI」であり、ヨーロッパや中国、東南アジアなどで熱い注目を集めているのです!

あ、それはそうと、実は福島市は「餃子の街」として売り出し中なんです。
その他、わかる人にはわかる地元ネタをぽろぽろと……。


補足2:登場人物(第四話以降のストーリーにも触れています)

古橋友樹菜(ふるはし・ゆきな)
この漫画の主人公。
福島県F市で生まれ育った、県立暁山ぎょうざん高等学校(通称:ギョーザ高)の二年生女子。十七歳。
成績優秀なわけでも、部活動に打ち込んでいるわけでもない、ごくごく平凡で、どこにでもいそうな目立たない女子高校生である。
髪型は垢抜けないし、メイクも下手っぴ……なのだが、よくよく見ればそれなりに可愛らしいし、生来の気立てのよさ(≒天然ボケ気味)と相まって、陰で慕う男子生徒もチラホラ。
中でも、いまどき珍しい不良高校生・吉川檀からは、かなり惚れられている(友樹菜本人にはその自覚なし)。
一方、A組の風間幹矢のことは、盆栽甲子園の話が持ち上がる前から密かに推していた(自覚あり)。
カナヅチ。小学生のとき、プールで溺れそうになったところを新藤愛里に助けられて以来、無二の親友に。
愛里の悪巧み(?)に乗せられた結果、幹矢の熱血指導の下、盆栽甲子園出場を目指すことになる。
そして、彼女には、樹木と念話ができるという、思いもよらない特殊能力が秘められていた!

風間幹矢(かざま・みきや)
暁山高校の二年生男子。
彼で四代目となる「風間盆栽園」の跡取り息子。
曾祖父は、江戸時代から受け継がれた技を習得し、数々の銘木を世話した名人。祖父や父は、海外の盆栽家から指導の依頼が引きも切らない実力派。幹矢は、そんな盆栽一家で育ったサラブレッドである。盆栽以外に興味がない「盆栽馬鹿」とも言えるが、友樹菜からは「むっつりスケベ」の本性を見抜かれてしまう。
約一年後に香川県T市で開催予定の「第一回全国高等学校盆栽選手権大会」に何が何でも出場したい(かつ優勝したい)と念じ、盆栽部を立ち上げ、部員を集めようとするものの苦戦。愛里にそそのかされてやってきた友樹菜をしぶしぶ(?)部員第一号として迎え入れる。
自分に好意を抱いているらしい友樹菜を憎からず思っているものの、生来の唐変木ぶりを発揮して、なかなか距離を縮めることができない。さらに、友樹菜が樹木と念話できることを知り、同世代の誰よりも盆栽を愛し、打ち込んできたはずのアイデンティティが揺らぎ始める……。
イケメンで空手が得意。

新藤愛里(しんどう・あいり)
暁山高校の二年生女子。
主人公・友樹菜のクラスメートにして親友。
ちょっぴり斜に構えたところのある(でも本当は義理堅い)メガネっ娘。
父子家庭で、下に双子の弟がいる。
幼少時から水泳に才能を発揮し、中学生時代は将来の日本代表候補とも嘱望されていたが、家族で買い物に出かけた際、運転ミスで暴走してきたクルマから弟たちを守ろうとして、肩を負傷。水泳競技から遠ざかる。
常に明るく冷静に振る舞い、自分のネガティブな側面は一切見せないタフな性格。担任の荒垣とウマが合う。
友樹菜と幹矢をくっつけようと暗躍する。友樹菜とは正反対で、優れたファンションセンスの持ち主である。

春埜亜藍(はるの・あらん)
市内随一の進学校かつスーパーサイエンスハイスクール指定校でもある県立花薫かくん高等学校(通称:花高はなこう)の一年生男子。
(高校は違うものの)以前から敬愛していた荒垣先生の甘言に乗せられ、暁山高校盆栽部に助っ人入部させられてしまう(花薫高校ではサイエンス部所属。一応兼部)。盆栽愛好家の高校生は数が限られているため、盆栽甲子園では、複数の高校の生徒がチームを組んでも構わないルールなのだ。
一年生の割に態度がデカく、友樹菜たちを小馬鹿にする言動も目立つが、ここぞという場面では友人思いの一面も。
将来は世界的な植物学者を目指しており、知性派の自負として、友樹菜が樹木と念話できるなどとは「絶対に認めない」。

荒垣琴(あらがき・こと)
暁山高校教員(科目は物理)。友樹菜と愛里のいる2年C組の担任である。
自称「根がブラック」。自称「バイキングの血が八分の一流れている」。
美貌の独身女性。博士号持ち。策士。生徒への想いは人一倍熱い(これは自称ではないと信じたい)。
年齢は……30代くらい???
勝手に盆栽部顧問に就任し、友樹菜や幹矢らの成長を面白がりながら見守っている。

吉川檀(きっかわ・まゆみ)
暁山高校の二年生男子。
いまどき存在自体が貴重な「絵に描いたような天然記念物級不良高校生」。
友樹菜Loveな人。空手部主将だが、実は将棋の腕前の方がはるかに達者で、夢は「藤井聡太先生と握手しながらツーショットで写真を撮ってもらうこと!」

熊坂サツキ(くまさか・さつき)
市内で唯一の私立女子高等学校・桃和とうわ学園に通う二年生。
F市を地盤とする国会議員の一人娘。美人で気位が高いのはお約束。
「視察」と称して訪れた暁山高校の文化祭「ヤマドリ祭」で、盆栽の手入れを実演していた幹矢にひと目惚れ。猛烈なアプローチをかける。
盆栽甲子園には自主応援団を率いて遠征し、対埼玉県代表戦で挫けそうになった友樹菜に活を入れ、勝利へと導く。
祖父は全国に名を知られた盆栽蒐集家だが、独自路線を貫く「風間盆栽園」とはそりが合わない。

Oh!BON’S(おー!ぼんず)
盆栽の街・埼玉県S市(旧O市)を拠点に活動する高校生三人組(男性二人、女性一人)。ヒップホップを歌い踊りながら、ビートに合わせて盆栽を手入れするショーでプチブレイク中。
リーダー格の柿崎かきざき竜介りゅうすけは、幹矢とは昔から盆栽を介しての知り合い(=ライバル)。
「勝つためにはまず敵を知ることから」と渋谷での公演を見にきた幹矢と友樹菜に対し、柿崎は「所詮はトーホグの田舎盆栽」と罵倒したうえ、「盆栽甲子園がなぜ香川で開催なのかわからない。ま、どうせ、俺たちが優勝するに決まってるけど」と豪語する。
幹矢から「所詮『ダさいたま』。うどんでも香川に勝てない」と逆ディスりをくらって激昂し、「盆栽甲子園でお前らをコテンパンにしてやる」と宣言した。いわゆる「瞬間湯沸かし器」タイプ。