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スリル・ミー(2014年松下小西ペア)CD版

まえがき


スリル・ミーの木村前田ペアの配信を見て感銘を受けて、スリル・ミーのことを忘れたくない!と慌てて購入したCD版の感想です。
聞こえたことをメモしているだけの記事。
今回は1万8千字あるよ。どうしてこう毎回長くなってしまうんだろうね……

松下小西ペア版を購入した理由は、松下洸平さんの演じる私を知りたかったら。ドラマの俳優や、ミュージシャンとしてのイメージが強かったのでミュージカル作品は新鮮だった。知らなかっただけでたくさん出演していらっしゃるのかも。
小西遼生さんはしっとりとした暗いキャラクターが似合うな……歌も上手だな……と思っていたので、どんな彼になるんだろう?という好奇心があった。

CDを購入すると歌詞カードが付いてくるんだけど、そこに載っている小西彼が信じられないくらいの美しさで仰天した。
これは……絵画?彫刻?芸術品?
こんなの私はメロッメロになるでしょ。どんなにつれなくされてもついていってしまう魅力がある。そしてこの冷たい美貌には冷たい態度がよく似合う。
女の子はメロメロだし、モテるだろうよ。引く手数多で私は気が気じゃないだろうな。

CD版では曲以外のセリフが端折られているというのを知らなくて、聴いて初めてそのことを知りショックを受けた。
次にCDを出す時は「黑世界」みたいにセリフも含めて全部入れてください。

表情や動きが削ぎ落とされているとお互いのことをどう思っているかわからなくて難しかった。
というか、声だけで優しさや執着、愛情を感じ取るのってほぼ不可能。特にスリルミーは歌詞がタイトなので、間のセリフや笑顔、触れ合いの度合いが見えないと受け取れる情報が2割くらいしかない。

だからこの感想を一通り書いた後で2014年当時の人様の感想ブログを読むと今の筆者が感じた印象と真逆のことが書いてあることが多い。
それでも何かメモを残しておくと何かの役に立つことがあるかもと思うので書き残しておく。

筆者はスリル・ミーの木村前田ペアが親なのでところどころで引き合いに出すことがあるかもしれない。ご了承ください。

CDを聴く前に下のコメント動画は見た。

二人とも性格が暗い、似てるって言っていたのが演技にも出ていた気がする。

松下小西ペアは感情のぶつかり合いって感じでは無い。気が動転して感情が揺さぶられることはあるけど、二人とも基本的にわかりやすく感情を露呈させる方じゃない。
基本的なイメージとしては最後の方の線香花火。
優位な彼に弱気で幼い私がえい!えい!と必死に全力で抵抗している……のが入れ替わったり元に戻ったり。
結果としてはお互いを侵食しようとしているというか、飲み込もうとしているというか……
一見幼くて気が弱めに見える私と氷の擬人化のような彼による陰と陰のスリル・ミー。

そしてこのCDを聴いて木村前田ペアがかなり陽と陽だったことを知った。
木村前田ペアは血気盛んな若者同士がバコッ!ドガン!と全力で殴り合っているような感じ。
お互いがタフで傷付きにくいのを知っているから全力をぶつけても壊れないという印象。

あとこの二人の特徴はお坊ちゃんコンビ感かな。二人とも箱入り息子で世間知らず。
特に松下私はセリフの言い方で幼さが際立つ。ひらがな喋りをするよね。本当に19歳?と思うくらい。
でも歌声は堂々としていて太い。ところどころで男性的な加害性が出ている面もある。
とはいえふとした言葉の端に理性的で賢い面を感じるので本来の私はこっちで、彼や家族の前では無意識に幼い面を使っているのかな〜と思った。甘えの一種なのかも。
普段は幼くてあまり物を知らないふりをしておいて、時折知性的な面を見せると彼からのうけがいいのかな。

一方小西彼は世間知らずだけどそのことに気付いていないせいで堂々としているというか、無知の知を全力逆走しているというか……
成績が良くて優秀で美貌を持っていたばかりに、自分こそが優れた人間でありこの世の真実である信じてやまない人という印象を受ける。虚勢はあまり感じられないので素で自分に自信があるんだと思う。
感情に起伏がある方ではなくて冷徹。常に世の中を冷めた目で見ている。彼にとっては自分以外みんなバカで愚かに見えているだろうな。
そんな彼にとって私はどう映ってるんだろう。バカだとは思っていそうだけど、家柄も良いし成績も悪くないのである程度自分と対等な立場で会話することを認めている人間って感じかな。彼が認められる人間はきっと私以外いない。

そしてそんな賢く美しく自信に満ち溢れている人が自分を認めてくれたらそりゃ尻尾をぶんぶん振ってついていっちゃうよね。

・プレリュード(アンダースコア) Prelude/Underscore

木村前田ペアと比べてピアノの音が心なしかしっとりしている?テンポ落とし気味?聴かせるように弾いている気がする。
これに関しては全てうろ覚えで話しているピアノに全く詳しくない素人の感想なのであてにしないでください。

・隠された真実 Why

「何を知りたい?」が声のトーンとしては弱めだけど、少し刺々しさもあるかな。
54歳の私はぽつ、ぽつ、と今にも消え入りそうな声で話す。弱々しげだけど、「消せはしない重い罪を償い続けてきた」から歌で声を張る時はかなり堂々としている。歌が上手い。
「あの日 ふたり見た」からまた弱々しい。「あの日、」に至っては喋り出すような入りだった。過去を思い出して、眩しくて目をすがめている感じ。
「彼とともに生きてゆくため」のところが柔らかい声になる。彼のことを思い出しているから?切なさもある。

・僕はわかってる Everybody Wants Richard

「私:僕にはわかってる!」の言い方もあまり自信なさげだな。動じているのがよくわかる。声は張っている。
彼が離れて行ったことに対する苛立ちと、それを遥かに上回る置いていかれた寂しさ、会えなかった間彼が何をしていたのかという不安感、しかしそれを態度に出さないように頑張っているのが声に滲み出ている。切実さが強い。
まぁあんなに美しい彼だったら自分がいない間どれだけ多くの人からアプローチされていたか気になるよな……

「私:こんなにも君を求めてるのに 君は知らん顔 よそばかり 見ている」のところが「知らん顔っ!(ぷんぷん!)よそばかり……」って感じで、拗ねている子どものような言い方。かわいい。

「私:車で出かける?どこか……」のところ、「どこか」で切らずにその後2字くらい話しているけど、彼の言葉が被さるので聞こえない。
続けて私の「おい……また火をつける気かっ!?」のところ、おい……のところで呆然としている?本当に信じられない……って感じ。
松下私は語尾に「っ」が付いているように聞こえることが多い。それが幼く聴こえる要因かも。

私の「わかった!(折れた)でも僕は前のように見張り役だよ……(声の端が震える)」で、か、可哀想……となった。この私、かなり度胸がないのかも。毎回彼が何かしでかすたびに怖い……って半泣きになりながら着いて行ってない?
キスをしているであろうところは若干リップ音が入っている気がする。

私の歌の続きの「僕だけだ!こんなにも強く深く君を求めているのは」のところの歌声はかなり強めに歌う。彼が視界からいなくなってようやく強く出られたのかも。
彼の前では強く出られなくて、弱々しい自分になっちゃうのかな。

小西彼って言葉に強さや刺々しさがない。私を攻撃するようだったり、馬鹿にしたりするような声のトーンは使わない。声音は柔らかくて、でも始終冷たい。
いやこれは柔らかいというより全てにおいて無関心なのかも。だから冷たさが際立つ。

・やさしい炎 Nothing Like A Fire

「彼:綺麗だ」「私:すごい……こーこーのころをおもいだす!」で笑ってしまった。私の言い方がかわいい。高校じゃなくて、完全に「こーこー」って言ってた。
「彼:あぁ……資料室を燃やした時、」で鼻で笑うような音が入ってる?少し微笑んでいるのかも。
この彼、声で笑みを感じ取るのがかなり難しい。声に感情が全然のらない。そもそもほとんど笑ってない可能性がある。
「私:なんていじわるなんだっ……」でまた声が弱々しく震える。声だけ聴いていると3等身くらいでプルプルしているのをイメージしてしまう。ほんとうに大丈夫?

「私:どれだけ成長したか見せてやるよ……触って?」の言い方がかなり可愛い。
「どれだけ成長したか見せてやるよ」は大人ぶっているというか、ワルっぽい言い方。強がっている。「見せてやるよ」って言葉の強さに引っ張られている感じ。
一転「触って」は「さわって……?」って感じで、急にきゅるんとした。あざとい。
続けて「彼:ちゃんとお願いするんだ」って言われた後の「私:おぉいっ!」も力が抜けたような言い方をする。この文字通り、聴いているこっちが思わず笑ってしまうようなトーン。
改めて言う「私:触って、ください」のところはまじめくさってるな。ほんとにちゃんとお願いするための声。

小西彼の歌声って柔らかいな〜
語尾が静かになっていくような音の消し方をするので儚さもある。
あと三代欲求とかが無さそうで、大丈夫?ご飯とかちゃんと食べてる?寝てる?私の欲についていけている?と心配になる。

松下私と小西彼ってかなり声の質が似ている気がする。
彼が歌い始めた時に一瞬どっちが歌っているのかわからなかった。ちゃんと聴いたらすぐにわかるんだけど。

「私:続きは場所を変えてから、消防車が来るよ!」の言い方にかなりヒヤヒヤしたものを感じる。怯えや慌てが強い。私は基本的にバレることに対する恐怖が強い。まあそれが普通なんだけど……

優しい炎で私が「においが」から彼の歌声に高音でかぶせるところはファルセットを使っているけど、それがこの曲の儚さや彼の可憐さを際立たせていてすごく綺麗。
歌声のイメージとしてはもともとひとつだったったものが彼と私の二つに分かれて、再び融合しようとしているというか……伝わらないかも。
二人とも語尾が消えるように歌う時があって、それが一層切なさを際立たせる。
いやもうずっとハモリが綺麗ね!?楽器のようだ。ハーモニーの美しさに惚れ惚れしてしまう。

・契約書 A Written Contract

「私:少し話してもいい?」「彼:ダメだ!(強めに言う)」「私:しんぱいなんだっ……!」で心配なんだ、の言い方が、相手から強く(といってもそんなに攻撃的なニュアンスは感じられない)ダメだ!と言われて、ひーん……怒られた……となりながらもいっぱいいっぱいで私なりに食いついている感じ。
私は常に語気に怯えや困惑が入っている。セリフの時に声がよく震えているからそう思うのかも。この私はかなり弱いよ。

「彼:あれは最高で完璧な夜 気にすることなんてない」に少し恍惚とした響きがある。あの炎のことを思い出してうっとりしているのかもしれない。
そのあとの彼の「ニーチェが保証してくれる。………間違いない」でニーチェが保証してくれる、のところは自信満々なんだけど、間違いないは少し弱くやわらかい声音になる。私を安心させるために柔らかく言ったのかな。
それとも自分の中にまだ疑惑や不安があるから、間違いないと自分に言い聞かせている?
でも「彼:ニーチェには書いてある〜」からまた自信満々な歌い方になる。自分が間違っているはずがない、というような口ぶりだ。
「高貴な理想を追い求めるんだ」という強い言葉や自分の思想に酔っているのかも。

「私:第何章に書いてある? 火をつけろって!いいかい?こんなバカなこと続けてたら僕たち法律の勉強どころじゃなくなるっ」では、彼に大きな声で強く出たつもりだけど、何を言い返されるかわからなくて、怖くて声が震えている。
彼から強めに「俺のせいだって言いたいのか?」って言われたら案の定私は強く出られず、止められない。彼の機嫌を損ねて見放される方が怖い。
私の「僕たちの関係はそんなんじゃないだろ……」は自分にも彼にも言い聞かせているよう。そうあって欲しいという私の願望のように思える。

「彼:帰れ。残りの夏を楽しく過ごすと良い」の言い方が冷て〜〜〜!激怒って感じの言い方じゃないのが逆に怖い。氷のブリザードだよ。

「私:法律を破るのにいちいち僕の助けなんか無くても!」が必死。もう必死。
もうこんな怖くてハラハラするようなことするの嫌だよ〜!の気持ちが心底滲み出ていて切実。
それに対する彼の「いや、お前がいなきゃダメなんだ」が急に柔らかくて優しい声になる。声のボリュームが下がったことで弱さも出て、私にすがるようなニュアンスも生まれる。
そして対する私の「………えっ」は、君が僕に対してそんなことを言うの?と一瞬唖然とした感じ。
ダメ押しのように言う彼の「お前がいなきゃ、ダメなんだ」はまた柔らかくて優しい。
普段彼は私のことを冷たい声であしらっているからこそ、頼み事をする時はやわらかい声を使ったら思い通りに動いてくれると知っている人の声だな。きっと自分の顔の良さも利用しているでしょ。
「私:初めてだねそんなこと言ったの」は彼がそんなことを言うなんて信じられない、心底意外って感じの声だった。
彼は自分無しでも生きていけてしまうと知っている人のリアクションだった。私は自分に自信がないんだな。そして私にしてはかなり大人びた声。
嬉しさというよりは、彼がそんなことを言うなんて……って困惑も滲んでいる。

小西彼から手強さとか力強さはあまり感じないんだけど、人から意見されることがあんまりないのかなと思う。
契約書の歌声に彼の頑固さを感じたので自分が優秀であるという自覚を持っているが故に自分を疑うことを知らず、頭が固いのかもしれない。
だから私から反対意見を言われると、お前如きが俺に意見するのか?って相手を下に見ているのが滲むよね。若干イラッとする。でもあからさまに私にその攻撃性をぶつける感じではない。
(というかこの点に関しては前田彼が木村私に対する言葉に棘や攻撃性を仕込みまくっていたので感覚がバグっているのかもしれず、読み取り力にあまり自信がない。)

私って彼に意見する時は常に漫画的に顔が青ざめていてプルプル震えており、ぼのぼのみたいな汗をかいていそうなイメージだ。
だからこそ「できる限りで!」とか声を張って歌うときは印象がかなり変わる。しっかりした男性、という感じ。

でも突然「けーやくほーの勉強にやくだつね〜( ^∀^)」って幼く呑気に言い出したりするので力が抜けて笑ってしまう。捉えどころがないな〜……
そりゃ彼に食い気味で「さっさと打て」って言われるよ。

「私:インディアンじゃあるまいし!」がかなり真剣。ナイフで指を切るなんて痛いことをするのが信じられない!って言い方。
「彼:(指を)出せ。出せったら!」の最後の出せったら!の言い方がこの彼にしてはかなり強めだ。私ってもしかして痛いことがかなり嫌いなんじゃないか。
彼も私が痛いの嫌いなことを知っているから、グズグズされるのが嫌で強い言い方をしていそう。彼に強い言い方をされると逆らえないので。

「彼:優しく指を〜刺す」からのところ、優しく、の入りはとびきり柔らかく優しい声で、刺す!の部分は力強さがある声なんだけど、音が静かに無くなっていくのでトータルでは優しそうな言い方に聞こえる。言葉通り優しく刺してくれそう。

切られたところはさっきの怯え方に比べたら「わっ…」くらいのリアクションだったので、本当にあんまり痛くなかったのかもしれない。表面をちょこんとだけ刺された感じ。
木村私の掠れた呻き声の方がよっぽど痛そうだった。木村私は痛みに弱そうな印象がない(むしろ彼から与えられる痛みならある程度は喜んで!って感じ)のに、あの痛そうな呻き方だったのでかなりザックリいかれてたでしょ……

「サインしろ」でまたすぐ彼の声に色がなくなって、冷え冷えとしている。もうお前は用済みだ、というような。

「彼:前にもやったことがある」で若干笑っている?口角を上げているような声。
俺はお前の知らないところで、こんなことも経験しているんだぜ、の笑みかな。

「完全な絆でつながれ 結ばれた」のところのハモリがすっごく綺麗!すごいな、びっくりした。似た声質で柔らかく歌う人同士だとここまでハモリが美しくなるのか。

私の「もう後に戻れない」の歌声に後悔が混ざっている気がする。恐ろしいところまで来てしまったという恐怖心もある。
「誰も知らない契約書には「僕たちの「俺たちの」」の一人称で重なる部分ってあえて綺麗にハモらないようにしているのかな。
尾上廣瀬ペアのダイジェスト動画を見ていた時も思ったけど、ここの歌声が若干バラけている。音程的にはハモリのはず。綺麗にハモれるのを知っているペアだからこそ違和が目立つ。小西彼が若干外しているのかな?
契約書は共に書いたけど二人の感情や思惑、行き先は重なっていないことを表現しているのかも。

・スリル・ミー Thrill me

「彼:やめろ(かなり冷たい声)」「私:今度は僕の番だ(少し嬉しそう?)」ここの私は引かないんだ。
「私:抱きしめてほしい」が独り言みたいだ。少し吐息混じり。相手に聞こえるか聞こえないかギリギリの音量。相手に聞こえていたとしてもギリ無視できる大きさ。
「彼:そうだ、明日は親父のオフィスにしないか?」から笑ってるのかな。チクッとした意地悪な色を込めた皮肉まじりの声。

この私って性欲あるのかな。「スリル・ミー!」の言い方は力強かった。必死さもある。
彼には性欲がなさそう。声が冷たいからそう感じるのかもしれない。
私はフィジカルコンタクトを通じて相手が自分を見てくれること、自分に触れる皮膚の感覚やあたたかさを欲しているという印象を受けるんだけど、表情や触れ合いが見えないので淡白に思えるだけかもしれない。

この時の彼の「このところ何にも感じないんだ」から彼にしては切実な色が滲んでいる。
なんだかつらそう。しんどいのかな。

「私:わかってるだろう?もう逃さない わかってるだろう?いつかのように スリル・ミー」ではかなりねっとり、ねちっこく歌うので意外だった。私ってそんな声出せたんだ……やっぱり淡白じゃないかも。
でもこの後の彼の「やめろ!」が本気。ものすごく本気。彼には珍しく大きく声を荒げて抵抗している。明らかに様子が変というか、「このところ何にも感じないんだ」からよくないスイッチを押してしまって彼はバッドに入っている。

「私:約束だよね!?次は僕から!さあ!壊してくれ!もっと強く もっと お願い スリル・ミー」の歌がかなり乱暴で、男性的な暴力性を感じる。相手に一方的に迫っていて、声が掠れるくらい大きく荒げていて怖かった。
うん、怖いって言葉が一番しっくりくる。
普段の話し方が幼い分明らかに豹変している。気が弱くて強盗に対する恐怖反応が強い分、そのすり減った心を強引に彼で埋めようとしているのかな。強盗に関しては、元々彼が言い出したことだし。となるとこれは性欲なのかも。
しかも私はこういう時に限って押しが強い。今こそ引くべき時なのに、そのタイミングを測れない。自分のことでいっぱいいっぱいになっている。
いつもはあんなに彼の様子や感情、表情を伺っていそうなのに……
彼から言い出した契約書の約束という建前がある以上彼が自分のお願いを断りきれないと踏んでいて、尚且つ性欲で目の前の彼の状態が見えなくなっている?

「私:いいかい?僕がこんな、ッバカなことを続けているのはこの契約書があるからだ。血のサインを見ろ……(少し声が震えている)ここで破り捨ててほしい?」が今までみたいな声の震えもありつつ、でも今までのような弱気さは感じられない。
明確に彼に対する脅迫。切羽詰まっているけど、強引に迫って相手を怖気付かせようとしている。
この私って今もしかしてめちゃくちゃ怒ってる?この声の震えは怒りからくるものかな。

自分が恐ろしい目にあったから、その代償として彼を性行為で蹂躙して鬱憤を晴らそうとしている?
この状態の私に性欲をぶつけられたら彼のことを思いやれる余裕なんかないと思うので、彼にとってはつらい時間なるだろうし、正直しんどいんじゃないかな……

となるとこの後彼が私の要求を飲んだというのは、私のこの態度に屈したという意味合いが強くなるかも。
でも「明日は早いんだ」からは怯えのような感情は感じられない。平静を装っているのかな。
この期に及んでまだ自分の優位性を保つために?だとしたらこれは虚勢?
私に対する諦めも混ざっているのかもしれない。あの時俺がやめろ!と言っても止まってくれなかった私は、もう何を言っても止まってくれないだろうという。

にも関わらず「私:そんないい加減な気持ちなら嫌だッ……!」と絞り出すように言うので勝手なこと言って……思ってしまう。彼、嫌がってたでしょ!いい加減な気持ちにさせたのはあなたですよ!
でも痛いのが苦手そうな私だからこそ「優しくなくて良い!」と言うことろでより相手が欲しい切実さが出る。

何度も書くけど本当にこの私は多面性の人だなぁ……精神が幼くて弱気であるが故に、一線を超えやすくてコントロール不可能の怒りを振り回してしまう。プッツンしやすい不安定さを持っている人なのかな。
それとも彼に自分は優位に立っていると思わせたいから猫をかぶって幼いふりをしているだけで、本来は彼のことを男性的に支配したいタイプで、いざという時には怒りで彼をコントロールするモラハラ気質なのかな……掴みきれない。

・計画 The Plan

結構セリフが飛んで、彼の「殺す相手は 俺の弟」の歌から始まる。
この彼って私に蹂躙されたことで、ただでさえ気に入らなくて自分よりも立場の弱い弟を殺そうと思い立ったんじゃないかな。

「彼:そして親父は……(ここで鼻で笑う音が入る)気が狂うだろう(笑っている声音)」弱くて自分よりも出来の悪い弟に肩入れしている父親のことが嫌いなんだろうか。
「彼:偽装工作 レイプ殺人」のレイプの部分が一番語気が強い。やっぱりさっきの私との性行為ってほとんど性暴力に近いものだったのでは?
弟にも同じ苦しみを味わせようとしている?鬱憤を晴らすための殺しなのかな。

「私:彼も、家族だ……!」の言い方で、私の家族ってとびきり優しいんだろうなと思った。
気が弱くてまだ幼い面もある私をたっぷりと甘やかして支えてくれるような人たちなんだろうな。
彼に思い直して欲しいと思っているからか、若干泣き出しそうな、苦しそうな声。というかスリル・ミーの私とは別人かな?ってくらい豹変している元々の私に戻った。
やっぱりさっきのモラハラ気質説は一旦保留かな……
最終的に九十九年という計画を成し遂げる人なのでモラハラ気質で計算高い要素もある程度持っているのかもしれないけど。

彼が弟や父親に対して殺意を抱くほど疎ましく、憎く思っていたとしても、私にとっては「彼の“家族』」でしかない。
家族には優しくするもの、優しくしてもらうもので、家庭といのは愛に溢れていて、私には家族を殺すなんて発想がはなから存在しない。

私に弟を殺すのはやめようと諭された時の「彼:わかった」があまりにもあっさりすんなり素直でびっくりした。そんなにあっさりわかった、と頷いてしまうほどの殺意だったの?
家族に対してフラストレーションは溜まっていたけど、諭されたらすっと気持ちを切り替えられるレベルではあったのかな。
でも殺意自体は抜けない。なんでだろう。

「彼:別の誰かを……知らない子どもを殺せばいい!」のところがひらめいた!って声に聞こえる。提案の仕方が頭でっかちというか、今度は彼が子どもっぽい。
殺す、と私の前で言ってみた手前引き下がれなくなった、実行してみたくなった、自分には実行できるだけの実力があるはずだから、と信じてやまないような。誰を殺すというところよりも、殺人自体に対する好奇心が強いのかな。自分の頭脳や腕試しという感じなのかも。

「私:……そりゃいいねぇ!その方がよっぽど素晴らしいよ!」はたぶん私なりの冗談というか、彼があまりにも突飛なことを言い出したからひとまず彼の考えを弟殺しから遠ざけたいがための言い方だ。
私には自分でも突飛でめちゃくちゃなことを言っている自覚がある。やけくそで自暴自棄なニュアンスもある。
対する彼の「完璧だ!」があまりにも純粋な少年の言い方なのでびっくりしてしまう。
彼がとんでもないことを言い出したのでやけくそになって、思いついた言葉を考えずに口からポンポン出している私と、それに対して純粋に「いい考えだ!そうしよう!」と思ってしまう言葉の掛け合いによって彼を後戻りできない場所まで連れて行ってしまっているような感じ。
彼はあまりにも楽しくてワクワクすることを見つけたから、さっきまでの鬱屈とした苦しさが吹き飛んでしまったよう。となるとこの彼の殺しって家族というよりはかなり私がきっかけかも……

ここで私が「君には殺しなんて無理だよ……僕にもできないよ……こんなことを考えるのはもうやめよう?」って震える声で言っていたら、彼は信じられないくらい怒るだろうけど、なんとか引き留められたんじゃないかな。
そのくらい彼の殺しの動機には子どもじみたものを感じる。前半とは一転、彼の箱入り息子感や幼さが強く出る。

松下私ってとりわけ高音が綺麗だな……「犠牲の羊」からのハモリも美しい。

・戻れない道 Way Too Far

この時の54歳の私は弱々しさが際立つ。彼といる時とはまた違う弱さ。見ているだけであの人大丈夫かな、と不安になってしまうような。
過去を回想して、自分の言葉がきっかけで彼が殺しに手を出してしまったことをひどく後悔しているのかな。私が彼を酷く傷付けて良くない道へ導いてしまったことに気付いたのかもしれない。
そして、盲目に愛していた彼の幼さにも気付いた。

「彼:塩酸はこれだけか?(確認)かなり小さなヤツにしないと……」(やや困ったように思案している独り言)」このセリフには自分の意に沿った道具を用意できなかった私を責めるような刺々しさは一切ない。

「彼:そしたら俺が頭を叩き割る」で頭を叩き割るなんてできる!?ナイフやフォークよりも重いもの、持ったことある!?って思ってしまった。
声だけだと彼は力が弱そうだよ。普段私と話している声から攻撃性があまり感じられないので殺人は余計難しそう。
たぶん変なところで暴力的かつ衝動的なのは私のほうだと思うからハンマーで頭を叩き割る係なら私の方が向いてたんじゃないかな……でもカッとならないと無理だし、この私って血とか苦手そうだからな……
いや〜もう……殺しに向いていない二人すぎるでしょ……

・スポーツカー Roadster

「彼:今、帰るところかい?」の声が全然違ってびっくりした。一瞬誰かと思ってギョッとした。ふふっと吐息で笑ってみたりもする。
悲鳴をあげたくなってしまった。
この場合の悲鳴はアイドルのライブとかで女性ファンがギャーッと言ってしまう時と同じ類いだと思う。鼻にかかるような甘ったるい声を作っている。

子ども向けにかなり声のトーンを上げている。
とにかく甘い猫撫で声で、どこまでもどこまでも優しい。

あーこれは絶対について行っちゃうな。
彼の声が心地よくて、柔らかくてふわふわしたもので頬をずっと撫でられているような感覚に陥る。
誘拐ですよね?
というかこの声では女の子がたくさんやってきてしまうよ。
声が甘くて、優しくて、吐息が多めで、時折息を漏らすようにくすりと笑う、とびっきり綺麗なお兄さん。
声だけで彼がずっと微笑んでいるのがわかる。
あんなに綺麗なお兄さんの微笑みが自分に向けられ続けたら心のガードなんて一瞬で喪失してしまうよ。

「なまえは?」のあとの「ハッ……(息が漏れる音がする)良い名前だね」のところで甘かった声のトーンが急に地声になって下がる。どうしたんだろう。もしかして弟と同じ名前だった?
「近くにおいで〜」のところ、最後まで声が綺麗。最後は、軽いビブラートをかけながらゆっくりと消える。

・超人たち Superior

「彼:世の中騒ぎ出す!」→彼が縄をバコン!(これ縄の音がかなり重いんだけど本当に縄だけの音?何か破壊してない?)→ア゛ァッ!(私の悲鳴)のところ、私の悲鳴がかなりの太い。
「私:そうだけど〜!震えてる!」は、「そうだけど」の部分は地の低いトーンで、「震えてる!」から1オクターブあがる。
ここ木村私は両方とも1オクターブあげて歌っていたので新鮮だった。松下私が特別なのかな。

彼はよくもまぁこの私を犯罪のパートナーに選んだな……私ってかなり動揺が出やすいタイプだと思うよ。
でもこんなにも大きく動揺していて今にも泣き出しそうに声が震えているけど、声が裏返ったことはない。そこに地の強さみたいなものを感じる。

「彼:部屋に着いたら書く」「私:何を!?」の何を、が怒気混じりというか、かなり混乱している。声をわっと荒げる。でもその後彼に誘導されたら落ち着きを見せている。
彼はずっと落ち着いている。今まで通りの温度感で、特別高揚しているような感じも無い。冷静な様子に聞こえる。

・脅迫状 Ransom Note

「息子の命 預かっている」があまりにも柔らかい声で始まったのでびっくりした。なんでこんなにしっとりした感じなんだ。
ここの私って彼が脅迫状の内容を先導して歌うからか、物騒な内容を復唱していてもあまり動揺が無い。

「彼:ここまでは完璧だ」「私:ああ………………完璧だ」の私の言い方って意外、っていうふうに聞こえる。完璧だ、に自信が無い。
なんでうまくいってるんだろう、と疑問に思っている?

身代金のくだりの「私:うちもきっと出すと思うよ」のところ、ちょっと私は微笑んでる?
自分の愛おしい家族のことを想って、その家族に愛されていることを実感しているのかな。久しぶりにお坊ちゃんの幼い能天気さが出た感じだった。
それは彼にとって一番聞きたくない言葉ですよ。

・僕の眼鏡/おとなしくしろ My Glasses/Jast Lay Low

私の「新聞みたぁ?」「どうしよ……」の言い方が可哀想になる。

彼の「顔が潰れてるからな!」が自信満々な言い方。顔を潰したから完璧だ!とでも言いたいかのような。私の眼鏡如きで俺の完璧な計画は破れない!と信じていそう。

「私:あの子の名前だ……背中のあざでわかったって、なぜ消さなかったんだ!」で大きな声を出している。彼を非難しているというよりは、混乱をそのままぶつけている。
ここの彼の「悪かった!俺のせいだ!……背中まで見なかった」の「悪かった!」はやけくそで謝っている感じ、「背中まで」からは拗ねたような声。こんな時に拗ねてる場合か。

この私ってハラハラの心配のあまり眼鏡を取りに行きそう……
というか自分の意思で眼鏡を落としたのかすら危うい。うっかり落とした可能性も全然ある。
もしくは彼の殺しの話を聞いて、九十九年の計画を思いついて、でも眼鏡を落とすのは実行に移す寸前まで迷いに迷った結果震える手が眼鏡に当たって落ちてしまったので拾うのをやめたタイプかな。
でも落とした後も迷いが大きい拾いに行きたいのかも。

私の「やっぱりうまくは行かない」の後に彼が「は?」と言っている。
自分の計画が破綻しつつあることに気付いていながらも、それを私に指摘されたことでイラッとしたんだ。
ここ、彼には珍しくわかりやすくカチンときている。しかも眼鏡を落として計画を破綻させたのは私なのでどの口が言っているんだ?という怒り。

「彼:そんなことで騒ぐな おとなしくしろ」と安心させるために滑らかに歌う彼の後ろで、私が不安のあまり叫ぶ声が本気の男性の怒鳴り声で怖かった。本当に怖かった。「ア゛ッッ!」(音量100)って感じ。
えっ、めちゃくちゃ怒ってます……?大丈夫?大丈夫ではないな……
彼も不安になるだろ、こんな声聴いたら……
この私は不安に対する耐性が限りなく少ない。
彼の計画は私が眼鏡を落としたせいで破綻しつつあるけど、その私の計画もうまくいくかどうか保証が無いもんね。

松下私って普段はぽやんとして教室の端で大人しくしているタイプなのに、突然我慢の限界が来てデカくての太い声で怒鳴り散らしながら周囲の机や椅子をめちゃくちゃ蹴ったり薙ぎ倒したりして、教室にいる先生も生徒もドン引きさせるようなキレ方をするタイプの男だと思う。

「私:ああ 僕ら取り調べられるだろう……」「彼:僕らじゃない お前だけだ」(冷たくて低くて平坦な声)「……………えっ?」のときのえっの前のためがかなり長い。「お前だけだ」でセリフが切られて次のトラックに移ったのかと思ったくらい長い。
「えっ」も思わず空気が抜けてしまったような、か細い「へっ?」って感じの音だった。
えっ、までの間は彼から言われた言葉を理解するために時間を要しているような、ローディング時間のように感じた。
私にとって彼が自分を切るという選択肢はもしかしてほぼ想定していなかったんじゃないか?本当に予想外という声をしていた。
これ以降私はやっと計画を必ず遂行するしかないと決意したのかも。

そして小西彼、ここまできてもあまり大きくは取り乱さない。最悪私のことを切ればいいと思っていたが故なのかな。大きな声は出すし声は荒げるけど、あくまで自分だけは大丈夫だと信じているのか苛立ちはあまり感じられない。

・あの夜の事 I’m Trying Think

はじめの私は泣き出しているような息を漏らしていて弱々しく話していたのに交互に歌を歌うことではすぐに彼の語気を真似するようになり、声に弱々しさが無くなる。私って意外と器用だな。

彼の言葉を一通り真似した後の「私:できないよこんなこと!」が弱気のレイくんだ。でも彼に「できる!」って言われたからもうやるしかない。
「私:一緒にいてくれたらいいのに……」がぼそっと言うけど湿度があって、縋り付くような声音。

彼の「大丈夫だレイ、きっとうまくいく」があまり突き放すような声には感じられないんだよね。自己保身のためだけの言葉ではないというか。
彼の場合、自己保身だけだったらもっと冷たい響きを伴っていると思うんだけど、そうじゃなくて結構本気で私のことを慰めて、親身に勇気付けているような声音に感じる。

彼と別れた後に一人で取り調べをされる歌のシーンで私は一人になるとやっぱり憔悴や焦りが出る。彼と練習した時と全く一緒とはいかない。
最後の「思い出せない!」の言い方が私の悲痛に満ちていて、心の底から今ここに彼がいてくれたら!と不安で仕方がない声。知らない大人に囲まれる経験があまりないのかも。今にも泣き出してしまいそう。

・戻れない道(リプライズ)Reprise:Way Too Far

なんて切ない声なんだ。か細い。繊細。やっぱりこの曲はイノセントな響きがあるな〜切ないよ。

・俺と組んで Keep Your Deal With Me

怒涛のレイ呼びかけソング!
「彼:なあレイ!まだ遅くない 二人とも助かる道があるはずだ」があまりにも今まで通りの声でびっくりした。こんな状況なのにす〜ごい堂々とされてますね!
でも全体的に歌に吐息が多めで、「助けてくれ」は囁くように言う。「謝るよ 俺を信じて」はわずかに懇願するように。
「俺を捨てる気か? なぁ、」のところだけ吐き捨てるように歌うので、自己保身とレイへの怒りや冷たさがある。
でも「傷つけたのは レイ 行かないでくれ」はまた甘えるように言うのがずるい。

私の「わかったよ なんでもしてあげるね」が力無い。
彼の「検事に司法取引の申請を中止してくれ」は、まだ私のことを伺っているような柔らかい声音が続いている。それに対する私の「いいよぉ」は少し微笑んでいるんだろうけど、声に力が全くない。でもその後の「そしたら一緒に絞首刑だねぇ!」は一転声を張る。もうここまできたらやけくそって感じ。自暴自棄さもあるから彼の「だから強くなるんだ。俺がついてる」もまぁ……わからんことはない。文脈としては正しい。
いやそもそもどの口が言ってるんだ、というのはもちろん大前提としてあるんだけど。
でもこの彼の場合殺人のトリガーになったのは私っぽいし……うーん……

・死にたくない I’m Afraid

彼の「恐いんだ」は彼の声のトーンが怯えの感情によって変わった。
最初の恐いんだ、は震えながら絞り出すような、ぽろっと口から出てきてしまったような歌い方ですごく小声。
この歌の最中ずっと声が震えている、ところどころ裏返るように荒ぶっている。

「弁護士がいたところで なんになる」が少し強い口調なのでその後の「何にもない!」はより強くくるかな、と思いきや、「何もない」という言葉を自分で口に出してその言葉に自分で恐怖しているような弱々しい言い方だった。

「ここからなぜ 逃げられない」も弱々しくて、心底不安で恐ろしい。
今まで自信に満ちていて自分にできないことはないと思っていたが、いざ留置所に来てみたら無力さを思い知ったのかも。

そこから徐々に怯えがヒートアップしていくんだけど、特に「死刑が解決できるのか 全てを!」に怒りや混乱、荒ぶりが全て出ている。この言葉に彼の全ての気持ちが詰まっている感じ。俺を殺して何になる!?って憤っている。どうして殺されようとしているのか心で理解しきれていないのかも。

「絶望の夜が続く」からピアノの音がピタッと止まって少し間が空く。
そこからの「眠れない」の前でグズグズと鼻を啜るような音が聞こえて、ボロボロと大きく取り乱して泣きだしている。声の質が明らかに涙声に変わった。
ひく、と喉の奥でしゃくりあげながらもガラガラとした声を出す。常にスマートそうな彼からは想像ができない取り乱し方。
恐怖で叫ばずにはいられない!というように周囲を気にせず大きな声で歌い続ける。死刑のイメージがリアルに想像されて、それがとにかく恐ろしくて仕方がない。

この曲では冷たくて淡々としているように見えた彼にもこういう感情があったんだ!?という衝撃がある。すごい荒ぶり方だ。
いざ留置所に来て、明日判決がでるという過程でようやく自分が死ぬかもしれないと気付き、今まで考えてこなかった分の恐怖が一気に押し寄せてきた感じ。想像力が欠如していたのかな。
自信の塊だったが故に、自分が失敗する道が一切見えなかったといった方が正しいかも。どちらにせよ愚かさが際立つ。

この間私は隣の牢でどんな表情で、どんな格好で彼の慟哭を聴いていたんだろう。

・九十九年 Life Plus Ninety-Nine Years

九十九年は私の表情が声から全く想像できない。
つらくて悲しくてたまらないようにも、口に笑みを浮かべながら薄ら笑いで歌っているようにも聞こえる。
ただ明確なのは、歌いながら時折声が震えている。

私の「勝ったのは僕だ」が全く嬉しそうじゃない。「僕のものだ」をぽつりと呟くように言うのであまりにも寂しそうに聞こえる。
僕のものだ、は彼へのパフォーマンスのためだけの言葉選びで、実際に僕のものだなんてこれっぽっちも思ってなさそう。
もしくはいざ彼と共に終身刑と九十九年の判決が出て、彼が僕のものになっても手の中に残ったのはどうしようもない虚しさだったのかな。
この選択だけは選びたくなかった、選ぶはずじゃなかったという後悔。どうしてこうなっちゃったんだろうという苦しみ。

「彼:待ってくれ!警察と取り引きするつもりだったじゃないか。俺があの時説得してなかったら!」は目の前で起こってることが信じられない。対する私の「わかってたよ!」はいつもの幼いひらがな喋り。続ける「あれも計算だ」はがっかりしているように聞こえる。
彼はそんなことにすら気付いていなかったのか、というような。

「彼:死刑になってたら!」で彼の声が大きく裏返る。ここまでわかりやすく裏返ったのは今までなかった。大きな動揺が見える。
対する私の「一緒に死ねるなら、それも悪くない!」はたぶん本心だ。「それも悪くない!」の部分に私の頑なだけど幼い響きが残っている。子どもが僕には君しかいない!と思い込んでいるような。
それにしてもこのネタばらしのタイミングでも私は幼い喋り方をするんだな。彼を出し抜いたのに。
ということはやっぱり私の本性ってこっちなんだろうな。今ここにいる私は彼と対等に話しているからこそ、素の喋り方をしている。

「彼:イカれてる」は低く地を這うような声だった。この上なく冷たい。信じられないものを見ている声。それに対する私の「俺のこと見直したか。」はかなり強がりっぽいトーンだったんだけど、間を開けて続く「怖くなったか……?」は囁くように。
大人が子どもをいたずらに怯えさせる時の声を使っている。俺と言い慣れていないのもバレバレだ。だからこそ怖い人を演じているように聞こえてわざとらしい。私の虚勢に聞こえる。

「彼:君を認めよう 全て思うがまま」の歌い方がかなり降参めいていた。ここまで追い込まれてしまったならそれを素直に受け入れるしかない。
だかこそその後の「だがこれから君は 孤独だ ひとり」の部分はそんな彼の最後の反発かな。「お前」呼びじゃない。私と距離を保とうとしているし、最後に呪いをかけてやろうという意志を感じる。俺を牢屋にぶち込んで、こんなことをして何になる!?とあらがいたい気持ち。
でもそれに被せるように言う私の「いや。離れられない」は今まで聞いたことがないくらいの冷たさを含んでいてゾッとする。
ここから私の歌声が彼を刺すように尖る。グンと硬度が強くなる。
でもハモリは相変わらずこの上なく美しい。
彼の声には震えや怯えや動揺があからさまに出だす。ここまできてようやく彼は怯えた態度を私に出すことができる。
最後の「九十九年」「永遠に」は静かに、ゆっくり、遠のいていくように歌う。
二人の間にある死ぬまでの永遠のような、あまりにも膨大な時間を、二人で呆然と見つめるように。

・スリル・ミー(フィナーレ) Thrill Me (Finale)

釈放された54歳の私は声が疲れてやつれている。「彼の、写真……」って少し疑問系かな。語尾が上がる。
「待ってたよ」で19歳の頃に一気に若返る。彼を受け入れるように、少し微笑んでいるような声。鳥肌が立つ。
彼の「レイ」の言い方はいつも自分を呼びつける時のように続けるような言い方をする。「レイ、」の後に彼が何かを言って、会話が続く気がしてしまう。そんなことはなくて、それが切なくて虚しい。
最後の「スリル・ミー」ではやっぱり少し私の寂しさを感じるけど、かなり声は平坦で考えていることや感情を感じさせない。どんな表情をしてるんだろう。

あとがき

書き出してから書き終わるまでに10日以上かかってしまった。
書き終わってみたら、このペアのスリル・ミーは虚しさや悲しさが強いと思った。九十九年で私に嬉しそうな様子が全くないからかな。
その点木村私は事前インタビュー

で木村達成さんが「僕はハッピーエンドにしますよ!」と宣言していた通り、彼を九十九年に閉じ込めてとびっきり嬉しそうだったのでわかりやすかったよね。ハッピーエンドかは定かではないが、彼に手を伸ばしたら案外簡単に届いてしまった!彼が腕の中におさまってくれて嬉しい!というのが全身から滲み出ていた。
木村達成さんはくしゃっとした笑顔が魅力的でチャーミングだと思うんだけど、その笑顔が不気味で怖くてたまらないという彼の気持ちを追体験させてもらえた。今笑うの?って箇所で、顔をくしゃっとさせた笑顔になるというのは理解の範疇を超えていて恐怖だ。

冒頭にも書いた通り、表情や動きが見えないからその分は想像で補うしかなくて、何度も聞き直したけど結局わからないところも多くあった。
私が彼を九十九年に閉じ込めた理由とか、私と彼がどのくらい思いやって触れ合っていたかとか、彼が家族に抱く感情とか。
あと何度も書くけどセリフが削られていたのが本当に惜しい。せめてセリフも全て入っていたらもう少しこの私と彼への理解が深まったはずなのに……
2023年の公演はDVDもしくはBlu-rayが発売されて欲しいし、10000歩譲ってセリフを網羅したCDの発売をお願いします。

とはいうものの今年でた再生回数2000もいってない販促動画

のクオリティがこんな感じだったのでご無理はなさらず……という気持ちもある。
見るたびに、この出演者でこんなにチープな動画になることある!?と笑ってしまうくらいなので……

また柿澤尾上ペアと田代伊礼ペアのCDも買って感想を書きたいな。
それまでは動画を見て心を満たそうと思います。

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