「ぼくは何をやっているんだ」という焦燥感

 成人してからもう半年以上経った。甲子園球児はみんなぼくより年下で、近頃世に出る人たちはだいたいぼくと同世代だ。現在活躍しているいろんな分野の有名人も、多くは20歳前後でデビューして、そこから着実に経験を重ねて今に至る。

 ぼくはというと、まだ何も成果は出せていないし、その準備すらしていない。同世代の輝く彼、彼女らを見ていると、本当にもどかしく、惨めな気持ちになる。

 ぼくはずっと、文章を書いて生計を立てていきたいと考えていた。小学校高学年の頃からいろいろな本を読んできて、中学生のとき初めて西尾維新の小説を読んだ。クビシメロマンチストを読み終えて、感動に打ち震えながら、ぼくもこんな小説を書けるような作家を目指そうと決意した。彼は20歳の頃にメフィスト賞を受賞し、作家としてデビューしたということがわかったので、ぼくもそれくらいの年齢をめどにメフィスト賞をとれるようなミステリー小説を書こうと考えていた。なんなら高校生の間に受賞して、世間をあっと言わせてやろうと画策していた。けれどぼくが書いたものは目も当てられないような駄作で、しかもそのほとんどが完成すらしなかった。自分が読んでも全く面白いと思えないような作品はきっと誰の目から見たってつまらないものだろうと思い、どの新人賞へも送らなかった。

 そうやってもたついているうちに高校を卒業し、成人を迎えた。まだなんにもなんにもなんにも成し遂げてないのに。手をつけてすらいないのに。
 
 こうやって自省はしてみるものの、結局まだ現状を打開するための行動を何も起こしていない。このまま何もしないで、自意識だけが歪に肥大したみじめな中年になるのか。散々馬鹿にしてきて、見下していた批評家気取りの何も生み出さない無能は実はぼく自身のことだったのか。ぼくは何をやっているんだ。

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