眼鏡相談室~その9~

40代 男性から
Q:実際メガネでどのくらいの視力を出せばいいのか?視力強すぎるとかえって裸眼時の視力がどんどん悪くなるイメージがあるのですが…。

A:は~い、良いご質問ですね。眼鏡掛けると目が悪くなる。これは昔から良く聞きます。このお話には議論の余地が多いにあります。つまり結論には至らないという前提で回答致します。私見に過ぎないお話だとご理解ください。だって誰も近視進行のメカニズムを解き明かしていないからです。

そも人には一生涯のバイオリズムというものが存在し、統計データとしても存在します。だから一生涯の変動傾向を頭に入れて、それを踏まえた上で議論をしないと眼鏡を掛けたから近視が進んだ=視力が低下したのか、それとも放っておいても近視が進行したのか類別不可なのです。

本当はその方のクローンを作って、同じ暮らしをさせて同じものを食べて、そして同じ物を見ている環境を作った上で議論すべき事柄です。例えば一卵性双生児でも食の好みが違ったり、外で鬼ごっこをしていたお兄さんと家でテレビゲームばかりしていた弟さんが同じ目になるでしょうか?

僕は同一の目にはならないと予想します。人の目は先天的遺伝性要素と後天的生活習慣的要素が相まって今の自分の目を構築すると予想するからです。ですから普段皆様が何を見ているのか、そしてどんな姿勢で見ているのか、それらが近視進行/視力低下と密接に関わっていると予想します。

ですから強い近視矯正眼鏡を掛けてどこを見ているの?という観点が大切です。強い眼鏡は焦点距離が無限遠に合っています。その眼鏡で鬼ごっこをしていれば、無理なく遠くから近づく友達を見つけられる事でしょう。でも携帯型ゲームをその強い眼鏡でしていたらどうなるのでしょう?

その時に人の目には生理的に何が生じるのでしょう?その時に人は①ピントを調節し、②手元に合わせてより目になり、③モニターの輝度に合わせて光量を調整すべく虹彩をコントロールしています。つまり①~③の運動をさせています。この三つの運動が近視進行の原因なのでしょうか?

そうなのかもしれません。ですが現状ではそれを言い切れません。僕ではそのメカニズムを説明出来ないからです。また先ほど述べたように同じ遺伝子を持ち、全く同じ生活習慣で比較し検証した事など僕には経験がないからです。その上で、うちのお店に来るお子様に対策を思案します。

ここで人の一生涯の度数の変動傾向を一覧にしたグラフがあるのでご紹介します。 赤線が近視系のお方の変動傾向を示し、青線が遠視系のお方の傾向を示しています。 近視と遠視と分けて考えるべきだと僕は示唆しています。近視の度数進行期は原則0歳~20歳までだと言われています。

この生まれてから20歳までをどうやって乗り越えるかがすんごく大事だよと僕は言いたいのです。ではどうやって裸眼視力の低下をミニマムに、近視進行スピード最低限に鈍化させるのでしょう? ここで先ほどの述べた①~③に対してアプローチする事が大切だと僕は考えています。

その対策が①に対して近視の弱矯正眼鏡、若しくは遠近両用レンズ、更に遠用と近用眼鏡の使い分け、そして過度な寄り目が必要以上にピントの調節をさせてしまう可能性もあるので、②に対してはベースインプリズムを入れて眼鏡を作成します。③に対してはカラーレンズが有効です。

一方カラーレンズを許さない現場の環境もあり、校則がそれを許さないという状況が散見されるのです。その場合にはコートによるブルーライトカットが眩しさ対策としては有効ですが、一方近視の進行期にはブルーライトはカットせずに敢えて照射した方が良いという説もあります。

強い眼鏡で外で遊んでいるのなら、別に度を強めた眼鏡でもいいじゃないと思うケースもあれば、コロナ過もあり、家の中でゲームばかりしているお子様に1.5の眼鏡に調整してもすぐに度が進んで半年に一回度を変えて近視進行に歯止めが掛からないケースも容易に想像がつきます。

ですからお子様がどこを見ているのか?まずはご両親がそれにフォーカスし、目を細めてみていないか?必要以上にゲーム機を近づけてみていないか?それをチェックし、目を細めているなら、度を強め、必要以上に近づけているのなら、離しても見えるなら離しなさいとしつけするのです。

お子様に離したら見えないと言われたら、それもまた眼鏡で矯正する必要があるのです。ですから単純に度の強弱だけを問題視するのではなく、見たい距離を無理なく見ているか?それが大事なのです。中には、黒板は見えてもノートが見えないなんて事例もありますが、それはまた別枠で。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?