見出し画像

絵画の中にある住まい

  とても辛い経験をした私が、栃木県日光市に引っ越してきた。

 現在の日光市は(旧 日光市・今市市・足尾町・栗山村・藤原町)5市町村が合併して全国の市町村面積ランキングでも第三位

1位 岐阜県 高山市(2177.61㎢)

2位 静岡県 浜松市(1558.06㎢)

3位 栃木県 日光市(1449.83㎢)の広さを誇っている。

 私は子供時代、栃木県の県庁所在地宇都宮で育った。小学校の体育館には日光連山が描かれた大きな絵画が飾られていて、絵の下には校歌の歌詞が立派な額縁に入り、無意識に大きな絵画を眺めながら全員で大合唱、宇都宮市立泉が丘小学校校歌を歌った。

 小学校の遠足の時、バスガイドさんはバス会社名と自己紹介が終わると
必ず校歌を歌ってほしいと言ってくる。子供たちは待ってましたとばかりに、テンポの良かった明るい校歌を大きな声で歌い、バスガイドさんが美人でも、そうでなくても、遠足の車内で最初に盛り上がる楽しい瞬間だった。

 辛い経験をした私が、日光では環境に恵まれた住まいで暮らすことができた。しかし傷ついた心はどうなるのだろうと不安や悲しみが付きまとっている。うつ病で景色に色が無い。

 何気なく車を運転していた私はある日、同じ人が不定期にゴミ拾いをしている事に気が付いた。「ゴミ拾いなんて何でしているのだろう?」動機が想像できなかった。間もなく私も、家の周りのゴミを拾ってみることにした。

 ゴミを拾いながら、薄気味悪い、古ぼけた公衆トイレがあることに気がついた。トイレの前に煙草の吸殻が山になっている、私は通るたび少しづつ吸殻を拾った。全部拾い終えても誰かがまた同じ場所に捨てる、捨てられた吸殻を私がまた拾う、別に嫌ではなかった、感情が無かった。

トイレ前が少しづつ綺麗になったので、恐る恐るトイレの入り口を開け中を覗いてみて驚いた、外観からは想像できないキレイさ!!!端におかれた記録帳にチェックが付いている。担当の清掃員が毎日丁寧に掃除をしている事が一目で分かる。

 それから私はゴミを拾いながらトイレに花を飾るようになった。道端に咲いている雑草や紫陽花はお金もかからず長持ちした。私の心にも良い影響があった、何もしないより前向きになれる気がして少し元気が出た。

 愛着がわいてきた公衆トイレが、とり壊されることを知った。
寂しい気持ちもあるけれど、私の家のすぐ前に「道の駅日光」ができるのだ、作曲家の船村徹記念館が隣接している。

道路を挟んだ前には交番、となりには老舗の造り酒屋、左に曲がり100mほど歩けば、世界一の日光杉並木街道を見学することもできる。近くのショッピングセンターの屋上には空色の観覧車があり、微妙にも1台だけスケルトン、観覧車は夜になれば七色にライトアップするのが可愛い。観覧車に乗ると(大人500円)1周6分 空中から日光連山の眺めと日光の大パノラマを楽しむことができる。そして私が花を飾った古ぼけた不気味なトイレは生まれ変わり道の駅日光の中にある。

 日光に来たら雄大な日光連山をじっくりと眺めて欲しい。
日光連山は全国でも珍しい一家族の山とか日光ファミリー五山と言われている。連山全体が山の一家なのである。男体山と女峰山との間に大真名子山・小真名子山があり、やや北にそれて太郎山がある。男体山はお父さん(2484m)女峰山はお母さん (2464m)太郎山は長男(2363m)で 大真名子山 次男(2375m)小真名子山は三男(2323m)なのだ。私の生活圏からも、小学校の体育館にあった絵画の風景がすぐ側にある。

日光連山を眺めながら、私は絵画の中に住んでいることを実感する。

 絵画の中に住んでいる人は私だけではなく大勢いる。
地球には絵画に描かれてる魅力的な風景が沢山ある、その土地で暮らしていれば絵画の中に住んでいるのと同じなのだ。絵画の中で暮らしていることに気が付くと今まで以上に目に映るその景色が特別であり幸福感に包まれる。

 絵画の中に住んでいる私の目には日光連山の四季の移ろい、雲の流れ、観覧車の可愛らしいライトアップも彩り豊かに感じることができるようになった。観覧車の中から私の家が見えた!

この恵まれた景色の中で、私の心は少し少し本当に少しづつ穏やかになり
変われたことが嬉しく  笑顔になれた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?