⑪ 不払い養育費での強制執行に必須。債権差押命令申立の書類一式準備について⑧ 取立がやっと始まりまっせ編
これがねえ、なかなか現金化できないんだわ
こんにちは、海苔子です。
2023年10月某日、東京地方裁判所から債権差押命令とその仲間たちが当事者に届きました。そこから何が起こるのか、簡単に養育費が振り込まれると思っていたら大間違い。音声では簡単に説明していますが、文字解説では詳細にディープな取立事情をお伝えします。
不払い養育費にお困りの方の参考になりますと幸甚に存じます。
債務者が最後に手にする債権差押命令
元夫が債権差押命令を受け取ったらしい日から約1週間後。私の手元に送達通知書が届き、「当事者全員がこの日に確かに受け取ったよ!」と知らされました。
債権差押命令が送達される順番は、第三債務者と海苔子が先です。
俸給(給料)の差押えなので、第三債務者に先に「不払い養育費で俸給の1/2を差し押さえるから、通常のように債務者に全額を払っちゃダメですよ」と、債権差押命令でお知らせするわけです。また、第三債務者は同封されていた陳述書に債務者の月給額やボーナス額などを記入して、東京地裁に送ることになっています。なお、私あての陳述書は第三者から直接届きました。省庁は大所帯なので、強制執行の書類を扱い慣れてると判断されたのでしょうか。民間企業の場合は、陳述書は裁判所から届くと考えていた方がよいと思います。
第三者への送達確認後、債権者の自宅へと債権差押命令が送達されます。4月に調停調書の正本が届き、いつ強制執行が始まるのかといろいろ活動していた元夫。まさかの引越日に送達され、観念してすんなりと受け取ったようです。ギリギリセーフ。
地裁に電話で問合せしちゃダメだよ
債権差押命令が下り、送達通知が届くまでの期間は、約2週間が想定されています。一刻も早く、相手が受け取ったのかどうか知りたいですよね。でも、債権差押命令に同封されていた「差押債権者の方へ」という書類には、
「くれぐれも電話でスケジュール感を問い合わせないで」
というニュアンスの注意書きがありました。
地裁にせっついたところで相手が受け取っていなければ、情報が上がってこないのですから、ここはじっと我慢です。早く強制執行したい、早く養育費を受け取りたい気持ち、わかります。しかし、焦りは禁物、果報は寝て待て。赤裸々な陳述書を眺めながら、これからの余裕ある生活を思い描いてニヤニヤしましょう。
債務者への送達は最後にして、逃げを断つ
債務者へ差押命令が最後に送られる理由は、財産隠しをしないため。
海苔子は給与の差押えを選択しましたが、銀行口座や保険、土地、自動車など、差押えの対象は多種多様です。特に銀行口座は資金移動が簡単なので、債務者が差押命令が出る前に口座からお金を引き出すことも。差押えの空振りを避けるために、債務者には最後に伝える流れになっています。
といっても債権名義の正本が相手に届いてるから、不意打ちなんてできないんですけどね。
債権取立てはだいたい8〜10日後の平日からスタート
さて、差し押えた債権を取り立てましょう。
送達通知で債務者への送達日を確認します。送達日の翌日(起算日と呼びます)から7日が経過した平日から取立が可能になります。もし土日、祝日にかかっていたら、週明け月曜日や祝日の翌日になります。その日が待ち遠しいですね。
債務者からの連絡に動揺しない
先行して強制執行を行った友人は、この間に債務者や関係者から着信があったそうですが、どうせ「ちゃんと毎月払うから給料の差押えは勘弁してくれ」といった泣き落としです。
今までもそうすればよかったし、今さら信用できません。
取り下げてほしいのならば、全額を一括で振り込んでからのお話でしょう。
友人は地裁の債権受付係担当者に相談していましたが、「電話もメールも取り合わなくていいですよ」とアドバイスされたそうです。そりゃそうです。よくあることみたいです。
「職場に知られたくない」と泣き言を言っても、すでに職場は事態を把握しています。
民間企業の場合なら取立は難しくありません
債権者が民間企業勤務の場合は、陳述書に記載されている担当者に連絡します。取立可能日から給料は差押えできるので、すぐ次の給料日から債権者に振り込むようによう依頼しましょう。大企業なら差押え対応に慣れていると思われるので、振込先を伝えればよいと思います。振込手数料は債権者負担ですので、料金の確認を忘れずに。後に紹介する取立書の作成にもこのデータは必要です。
強制執行初体験の企業は要注意
ただし。
給料の差押えが初めてという企業の場合は、双方で確認しながら進めてください。お互いにわからないことが多いと思うので、企業側の顧問弁護士に相談してみては、と投げかけるのもよいかと思います。非協力的な企業もあるとの声も聞きます。以下の点を押さえながら、お互いに確実にことを進めましょう。
大切な養育費ですから、扱いは慎重に
債権差押命令に記載されているのですが、勝手な解釈をする企業もあるようなので、よく確認しましょう。
・裁判所命令なので、第三債務者である企業は取立を拒否できません。
・第三債務者が正当な理由もなく支払わない場合は、「取立訴訟」を起こせます。
・取立額は最大で手取額の1/2です。手取額は残業代などで毎月変動するので、到来分が多額の場合は毎月きっちり1/2を計算して振り込んでもらいましょう。給料の手取額が66万円を超える場合は、33万円を超える全額を差押えできます。
・ボーナスや勤勉手当も給料と同じ条件です。
・弁済が終わらないうちに退職する場合は、退職金も差し押さえできます。所得税及び住民税を控除した残額の最大1/2まです。
・振込手数料は債権者負担です。料金を確認しましょう。
・経理の方には感謝の気持ちを忘れずにね。
・双方で毎回、差押えた金額と、到来分の残額、将来分の期間を確認しましょう。受け取った養育費=到来分の一部+今月分の養育費
到来分が満額になるまでは、手取りの1/2を差押えできます。到来分を全額受け取ったら、養育費の終了期間まで毎月の養育費を差し押さえることになります。
そして、取立が始まると、東京地方裁判所民事21部 換価・取下係に毎月、「取立書」を郵送します。裁判所は原紙主義なので、FAXではできないのが面倒です。
なお、裁判所とのやりとりには、申立時と同じ印鑑を使います。
https://www.courts.go.jp/tokyo/vc-files/tokyo/file/20231031_8-1shoshiki52_toritatekanryotodoke.pdf
↑ インフォメーション21 換価・取下係に格納されています。
取り立てできなかった場合
上記のページから「支払を受けていない旨の届出」をダウンロードして、郵送で提出します。
民間企業はいいよね(遠い目)
取立書の提出がめんどくさい? はあ? ちょっと待て、海苔子が毎月やってる事務手続を読んだら、どれだけ恵まれているか驚くはずです。
次回は、好奇心旺盛な海苔子も毎月手こずる供託という名の罰ゲームを紹介します。裁判所から届く書類の指示通りに記入しては返送したりするだけですが、一般的な人生を送るのであれば、まったく覚える必要のない無駄な手続です。しかし、おかげさまで2、3カ月遅れで養育費を受け取れています。
マニアックな内容ですが、債務者が公務員の場合は地獄を見ることになりますので、ぜひ参考にしてください!
不払い養育費に悩んでいる方への社会貢献として、私の実体験を包み隠さず重箱の隅をつつきながらお伝えしています。記事は無料で提供しておりますが、サポートしていただけますと幸甚に存じます。