ニュービーよ、批評をせよ

批評しよう!

 批評というものは他の創作サイトにはあまりない、SCP財団の特色と言っていい制度である。下書き段階の記事をより優れた作品へと導いていく、SCP財団というサイトにとってなくてはならないものだ。ただこの批評というボランティア、慢性的に人手不足に悩まされている。コンテスト時期ならともかく、平時なら一週間も批評が付かない事もザラだ。サイトに加入して執筆する者が増える一方で、批評者の数は増えにくい。他人の記事にアドバイスするような行為だからだろう、やはり批評をするニュービーは少ない。知識不足もよく理由にあげられる。私なんかじゃお役に立てない──そういって尻込むニュービーを何度も見てきた。

 しかし考えてみて欲しい。財団においてニュービーもベテランも記事1つに対してできるVoteは1つだ。同じ1Voteを持つ者としてその意見はきっと役に立つはずだ。

 それに人の下書きを見て何が良いか悪いか考えることは、自身の執筆についても非常に参考になる。書きあがった自分の下書きを調整するためには客観的な視点で見ることが必要だが、最初はなかなか難しい。だが人の下書きなら客観的に見ることができるためこの練習になる。また、記事の改善案を出そうと頭を捻ることはアイデア出しの訓練になるだろう。これらはニュービーが下書きを批評する、大きなメリットとして挙げられる。

 そうはいってもいきなり抜き身で批評に挑むのも心細いであろうから、このnoteでは批評にあたって心がけてほしいこととあまり好ましくないことを記した。あくまで私論なので他に気になる点があるベテランもいるだろうが、まあとりあえずの杖の一つということで。


批評をする際に心がけたい2つのこと

 批評に対して不安に思っているそこのニュービー。私が思うに以下の2点を守っていれば、そこまでひどい批評とはなりにくいだろう。

・相手を尊重して礼儀よくしよう

 基本的には、丁寧な言葉使いで相手を強く否定しないようにすれば問題ない。「~しないとダメ」といった強い表現は避けて、「~するといいかもしれません」「~してはいかがでしょうか」のようにふんわりとした口調にしてはいかがでしょうか。

 そもサイトルールに「大人な振る舞い」が求められているので当然ではあるのだが、改めて礼儀良くするというのは意識しておいて損はない。たまにいきなりタメ口で批評してくる人がいるがとても好ましくない。記事を過剰に貶したり記事を超えて相手の人格批判までしたりするのはもってのほかだ。

 「記事はひとえに挑戦なのだ」とはどこかのガイドに書いてあった言葉だが、執筆者が少なくない時間を費やし脳をこねくり回して挑戦した記事は良い悪いはあれど執筆者のラブが込められているはず。他の人にとってはもし駄作に見えたとしても、執筆者にとってのラブであることを意識しなくてはならない。自身のラブを否定してくる人の話なんて聞きたくもないだろうから、礼儀をもって批評に挑もう。それもラブ、これもラブ‥‥みんなでラブをクラフトしていこう。

・根拠を示そう

 誤った語の使い方があったら辞書のリンクを貼る、既視感のあるネタなら前例を提示する、キャラクターや組織がらしくない言動をしていたらそれと矛盾する記事を示す、など。多くの人から指示を受けているエッセイのリンクを出すのも有効だ。

 特にニュービーにおいては、是非この根拠を示すということを心がけてほしいと私は願っている。理由は、誤った批評を防ぐためだ。

 人間である以上どうしても思い込みや勘違いがあるもの。あるいは自分の知らない表現が使われていることもある。批評で間違った指摘をして赤っ恥をかいてしまわないよう、あらかじめ自分で調べその指摘が正しいか確認すると良い。調べることで自身の経験値になるし、きちんとした根拠が示されていることで被批評側も改稿の参考に出来る。

 また財団創作では「カノンは存在しない」という建前があるため、マイナーなカノンの許容範囲が広い。つまり、必ずしも間違いではないのにそれを誤りだと指摘することがしばしばある。記憶処理取り扱いガイドにあるからといって、クラスA記憶処理がエアロゲルじゃないといけないなんてことはない。例外がほとんどない支配的なカノンから外れてるなら指摘するべきではあるが、あまり記事を読めていないニュービーだとこのカノンはどれくらいメジャーなのかは判別つかないだろう。そういったときには持ってくる根拠としてガイドやエッセイを探してみると参考となる記載があるかもしれない。

 総じて「よくわからないけど面白かったです。」──このような根拠がない小学生並みの感想は正直言ってあまり記事作成の役には立たない。面白いならもっと具体的にどの箇所が面白かったのか、そして何がわからなかったのかを示してあげないと改稿の方向性も掴むことができない。批評をしてくれることは大変ありがたいが、「面白い」だけでは不安の芽は取り除きづらいので根拠がやはり欲しくなってしまうもの。



 これを読んで、よし批評をしてみるかと考えるニュービーがいたらとても嬉しい。サンドボックスⅢかDiscord鯖に凸してガンガン批評してくれ。

 だが上で述べた2点を踏まえたうえで──記事の内容について「改稿案の提案」を批評で行うことには少し慎重になってもらえるとさらに有難い。なぜなら貴方の提案が記事の下書きの行く末を左右する可能性があるからだ。

 改稿案は必ずしも批評に必要なものではない。誤字脱字衍字の指摘や表現の修正、良かった点微妙に思った点を述べるだけでも役立つ立派な批評で、ニュービーであってもしっかりと記事作成に貢献できるだろう。しかし「改稿案の提示」については少々困難さが伴うと私は思っている。数少ないとはいえ存在するニュービーの批評をこれまで見てきて、この改稿案ではむしろ下書きを悪い方向に誘導してしまうのではないか、と思うことがしばしばあるのだ。

 (サイトルールに反していなければ) 批評者はどんな提案をしても一向に問題ない。受けた批評をそのまま反映する必要はなく最終的に批評を採用するも不採用にする被批評者の自由だからだ。だから新人であっても気にせずどんどん批評をしていい。だがもし被批評者も記事を書くのに慣れておらず右も左もわからないニュービーであった場合、初めてもらった批評コメントを突っぱねられず改稿案をそのまま受け入れてしまうかもしれない。その結果記事が迷走してしまうこともあるだろう。

 ニュービーが提示する改稿案があまり効果的でない指摘になってしまうことはしょうがないことではある。ニュービーはまだどのようなものが面白いかが掴めてない場合が多いからだ。目的地が分からないのにその方向を指さすのは難しい。良かれと思って出した改稿案が実はマズイもので、目的地から遠ざけてしまうのは望まない‥‥ですよね?

もしかすると下書きを泥沼に沈めることになるかもしれない改稿案のリスト

 じゃあ具体的にどんな改稿案がマズイのかというのを以下にいくつか述べてみた。なお、これらは必ずしも悪いものではなく、場合によっては適切な改稿案である下書きも存在するだろう。しかし「とりあえず」「なんとなく」で提案するには少々荷が重いものであることは分かっていただけると嬉しい.。

・実験記録を付け足した方が良い

 実は、面白い実験記録を書くのは難しい。なぜなら読み物としてはその結果だけわかれば良いからだ。うっかりすると地の説明文に既に書かれている内容の再放送 (しかも実験条件とかついててまどろっこしい) になってしまう。
 加えて記録である以上、きちんとした条件設定や手順で実験を実施し、そこから得られる考察の妥当性も描写として必要となってくる。理科の時間に習った対照実験を思い出そう。条件に抜けがあるのに異常性の発現条件を断言するような結論を出してしまうのは記事のマイナス評価につながるだろう。
 あとこれは人によって許容幅が異なってくるだろうが、実験記録の分析で博士が口語で喋る奴。あそこはメモ用紙じゃないのでチラシの裏レベルの感想を書かれると私は大分冷める。

・インタビューを付け足した方が良い

 前項に同じ。実験記録に比べると新しい情報の開示やキャラ付け、ストーリー展開などがしやすく、まだ付け足しても悪いことにはならないことも多い。ただしクリニカルトーンの中に会話文が入ってくるわけだから、そこの空気感を掴めず読者の心証を悪くしてしまうことがニュービーには多いので注意だ。情報も何も得られず文脈的にも必要ないお喋りは報告書に載せなくてよい。

・Taleで補完記事を出した方が良い

 記事を2つに分けるということは、単体でプラス評価を貰える記事を2つ作らなければならないということだ。要素を2つに分けて出し惜しみする余裕はあるのだろうか?1つの記事に全力を注いだ方が好ましいと思う。

・SCP記事ではなくTaleで書いたほうが良い

 この指摘は確かに有効であることも多い。SCP記事という縛られた枠組みよりは、様々な視点で自由に書けるTaleの方が適切なこともあるだろう。しかし、つまらないSCP記事がTaleになったからといって面白く化けるかというとそんなことは滅多にない。
 また、SCP記事を書きたいからSCP財団に来ている、というニュービーもけっこういるのではないだろうか?Taleに変えろという指摘はもしかするとそういったニュービーのモチベーションを削ぐ恐れがある。形式をコロっと変えるより前にSCP記事の枠内でまだ出来ることがないか、それをもう少し考えてからでも遅くはない。

・ジョーク記事に変えた方が良い

ジョークSCPはメインシリーズのSCPよりたいてい書くのが難しいものだし、新参の作者が書くには(人間型SCPやKeter級オブジェクト同様)難しいものトップ3の一つだ。

ジョーク-JP

 記事がコメディ調だからと言って、なんでもジョーク記事にすればいいというものではない。お堅い報告書で緊張した雰囲気の中に放り込まれるネタによる落差で笑いが生じることもある。不意打ちも効果的だ。しかしジョーク記事は最初からお笑いですよおかしい記事ですよと宣言する。そのハードルを乗り越えるのはなかなか大変なのだ。

・クロステストの記録を付け足した方が良い

 安易なクロステストが好ましくないことはいくつものエッセイで書かれているので理由は割愛する。でもこれを提案するニュービーはいるのだ。確かに。

・収容違反を起こした方が良い

 物語には起伏やイベントが必要である。だからといって安易に収容違反を起こすのは頂けない。財団はプロフェッショナル集団だ。不十分な管理体制やうっかりのチョンボで収容違反を起こすような無能な財団は今となってはあまり良い印象を受けない。


 色々挙げてみたが要するに言いたいのはこうだ。

  • 全ての下書きに使える改善案は無い

  • プラス要素よりマイナス要素が生まれやすい改善案は避けた方が良い

 これらを意識しつつ下書きを尊重したうえでなら、改善案を提案することに何も文句はない。ただ批評する際改善案を出すのが難しいと思ったなら、無理して書くことはないのだ。

 批評へのモチベーションを損なわないよう何度も予防線を貼るが、内容の出来不出来問わず批評をしてくれるだけで本当にありがたい。本サイトに投稿すれば何十もの読者から評価されてしまうのだから、批評数が増えて少しでも多様な意見を得られるようになるのはとても好ましい。

また、本サイトには批評に関するエッセイもいくつか存在する。それらも併せて読んでおくとよいだろう。『下書き批評のTipsまとめ』なんかは批評テンプレもあってオススメだ。

 この記事を投稿した6/9現在、新星コンの投稿ラストスパートに入っている。自分の下書きに批評が来ないかと手をこまねいている人もいるだろう。なら、自分から他の下書きに批評しに行くのはどうだろうか?作品を批評に出したらみんなが他の記事に批評をするようになれば、きっと批評が来なくて悩む下書きはなくなるだろう。

さあ、批評しよう!


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