ジロ・デ・イタリア2024 総合成績予想

ポイント賞は長くなりそうだったので別記事へ


総合表彰台予想

総合優勝:タデイ・ポガチャル Tadej Pogačar (UAE)

 正直この男を高い可能性で止められるのはヴィンゲゴー以外に想像がつかない。
 シーズン初戦のストラーデ・ビアンケで80km以上、モニュメントの一つでもあるリエージュ~バストーニュ~リエージュでも30km以上を独走し勝利。さらにボルタ・ア・カタルーニャでは7ステージ中4ステージ勝利に加えて特別賞ジャージを総ナメと、まさに異次元、大人と子ども、別の銀河なパフォーマンス。もちろん総合優勝。
 ミラノ~サンレモでは惜しくも3位(十分すぎる成績だが……)となるも、相手がツールのポイント賞ジャージを着たヤスパー・フィリプセンとマイケル・マシューズだったことを考えると、むしろマッズ・ピーダズンに競り勝って表彰台に登ったことを称賛すべきとも言える。いやなんで勝てるんだ。
 チームのアシスト陣も強力で、基本的に隙はない。
 落車の少なさを考えても、とても今年から参加賞(新人賞)を失ったとは思えない安定感で、マリア・ローザ候補の筆頭であることに反論の余地はない。

総合2位:ゲラント・トーマス Geraint Thomas (イネオス)

 年齢的には大ベテランではあるが、グランツールでの実力・安定感ともに抜群。
 昨年のブエルタでは大雨+日暮れという悪夢のような初日チームTTに始まり、お祓いを受けたほうがいいんじゃないかと思わせるほどトラブル続きの前半戦で沈んでいった通称G。2022年にはツール・ド・スイスで総合優勝した後、ツールでもヴィンゲゴーvsポガチャルという妖怪大戦争に隠れてひっそりと総合3位に入り、昨年もジロではログリッチとわずか14秒差の総合2位など、実力は衰え知らず。そのジロも最終決戦はログリッチにかなり有利な激坂の個人TTであったことを考えると、やはり今でも現役トップクラスの総合系ライダーであると言える。
 前哨戦のカタルーニャやツアー・オブ・ジ・アルプスでは総合2ケタで終えているものの、2位に輝いた昨年にも全く同じ状態から見事にベストコンディションを合わせてきているため、むしろ今年も期待できるのではないかと思わせてくれる。
 自身も総合を狙えるアレンスマンのほか、個人TTアルカンシェルの経歴もあるフィリッポ・ガンナ、トビアス・フォスなど、豪華なチームメイトをアシストに従えて、チーム力はUAEをも上回る。

総合3位:ベン・オコナー Ben O'Connor (デカトロンAG2R)

  20年にジロで、21年にはツールでステージ1勝と、着実に実力を上げてきているクライマー系GCライダー。特に21年ツールでは総合も4位とポテンシャルは十分。そろそろグランツールの表彰台が欲しくなっているはず。
 今年のステージレースでの総合成績はUAEツアーでステージ1勝を含む2位、ティレーノで5位、ツアー・オブ・ジ・アルプスでは落車の憂き目に遭いながらも2位と安定感は良好。(ちなみにTotA総合優勝はフアン・ロペスくん。個人的に好きなので大変よろこばしい)
 

対抗

アントニオ・ティベリ Antonio Tiberi (バーレーン)

 バーレーンの若き総合系ライダー。個人的には好きにはなれないが状態が良さそうに見えるのは事実。
 カタルーニャ、TotA両レースで積極的な走りを見せ、TotAでは総合表彰台にも乗っているので対抗馬としての存在感は十分。
 ジロ総合2位の実績もあるチームメイトのカルーゾがアシストとしてどこまで導けるかが表彰台のカギになるか。

ダニエル・マルティネス Daniel Felipe Martínez (Bora)

 今年イネオスからBoraに移籍したコロンビアンクライマー。
 シーズン序盤のアルガルヴェではレムコ・エヴェネプールに2度競り勝ってのステージ勝利に加え、総合でも彼に続いて2位に入った。
 グランツールでは21年、ベルナルのアシストとしての熱い走りを記憶に残しつつ自身も総合5位と、ポテンシャルは十分。自身がエースとして走る今回、どこまで順位を上げてくるか期待が高まる。

フアン・ロペス Juan Pedro López (リドル・トレック)
 みんな大好きフアンペくん。22年の新人賞ジャージ獲得者。
 直前のツアー・オブ・ジ・アルプスでプロ初勝利+総合優勝し、調子は良好。表彰台を勝ち取れるかは怪しいところだが、なにか爪痕を残しそうな予感はある。がんばってほしい。

その他の有力選手

前段階でのパフォーマンスはあまり良好に見えないが、ポテンシャル的には十分に総合成績が期待できる選手として

  • エディ・ダンバー Eddie Dunbar (ジェイコ)

  • ナイロ・キンタナ Nairo Quintana (モビスター)

  • キアン・アイデブルックス Cian Uijtdebroeks (ヴィスマ) 

が出走する。
 また、直前の状態は良さそうだがロマン・バルデ Romain Bardet (DSM)は総合を狙う可能性は低いと思われる。のびのび走ってほしい。


山岳賞(マリア・アッズーラ)予想

 正直事前予想が難しい。というのも山岳賞は逃げ屋が獲得することが多く、また序盤に大きく遅れてしまった総合勢がせめて山岳賞だけでも持ち帰ろうとすることもあるので、正直1週間くらい経たないと何も見えてこない。ツールならジロと比べると総合優勝者が同時に獲得することも多いが、それでも五分五分と言っていいのか怪しい程度だ。
 もっと言うとベスト逃げ屋が獲得するわけでもないので、事前にあまり根拠のある予想はできないなというのが本音。

有力候補1:ロマン・バルデ Romain Bardet (DSM)
 ツール総合2位の実績もあるスーパークライマー。リエージュでは集団から抜け出し人間部門優勝 2位と調子は上々。ただし総合のために走る気はなさそうなので、昨年のティボ・ピノよろしく山岳賞の最有力候補か。

有力候補2:ダヴィデ・バイス Davide Bais (ポルティ・コメタ)
 
昨年ジロの山岳賞4位に入った逃げ屋。1~3位は今年出走せず、かつ彼自身はいつも積極的に逃げに乗るタイプなのでとりあえず挙げておく。自国開催のイタリア人でもあるので気合も入っていることでしょう(適当)

有力候補3:アッティラ・ヴァルテル  Attila Valter
       キアン・アイデブルックス Cian Uijtdebroeks (ヴィスマ)
 本来の予定ではジロに出走するはずだったワウト・ファン・アールトが春のクラシックで大落車、重傷を負ってジロのスキップを余儀なくされた。チームとしても一つでも多くのリザルトを持って帰りたいはずだが、正直今のアイデブルックスは総合にはやや心許ない。展開によっては山岳賞を持って帰ろうとする可能性は割と高いんじゃないかと思われる。

有力候補4:タデイ・ポガチャル
 
総合優勝者はなんだかんだ上位に入りはする。今年のステージレースは逃げ集団へのタイム差を2~3分、多くても5分程度でコントロールする傾向が強い印象があり、しかも今回はポガチャル一強、もといワン強状態。普通に走るだけで個人TT状態になるので山頂フィニッシュのポイントがほぼ分散しないだろうと考えれば、割と現実的な候補ではある。




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