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Manoahの帰還? 

①はじめに

 ご覧頂きありがとうございます。トロント・ブルージェイズ(以下TOR)ファンのとりすきです。
 5月も後半を迎え、夏の到来を感じる日も多くなってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
 MLBでは、殆どの球団で消化試合数が50を越えました。もう少しでシーズンの1/3が終わってしまうことを考えると、時の流れが速く感じてしまいますね。
 
 ところで、5月のTORでは先発陣に大きな動きがありました。それはAlek ManoahのMLB復帰です。
 2022年に31登板196.2イニング消化して防御率2.24と素晴らしい成績を残し、ALサイヤング賞投票では3位に輝いた彼ですが、2023年はダウンイヤーとなり、19登板87.1イニングで防御率も5.87と大きく悪化、マイナー落ちも経験しました。
 今回は、そんな彼が今年5月メジャーに復帰した経緯と、今季の投球について書いていきます。

https://twitter.com/BlueJays/status/1666163292945936385?t=Z-aR1kHo7GEeLydKZzNOqQ&s=19


https://x.com/BlueJays/status/1690053282905890834?t=6DXEZodBz6jaP2BwkeZPXA&s=19



②2024年シーズン開幕後のManoah

 
 2024年のManoahですが、現地3/28日に右肩の炎症でIL入り。開幕をマイナーで迎えることになります。

 4月中はマイナーで調整登板することとなったManoahですが、Aで1登板1.2イニング、AAAで4登板18イニングを投げます。AはともかくとしてAAAでの成績を見ると、防御率6.50 被本塁打4 WHIP1.67と目も当てられないものでした。
 マイナーでも悲惨な成績だったManoah。再びメジャーのマウンドを踏むのはまだまだ先だと思われていた矢先、4月末にTORローテーションに異常事態が発生。なんと先発ローテの一角を担っていた(担えてたか?)Yariel Rodriguezやロングリリーフに追いやられていたBowden FrancisがIL入り。また長いイニングを投げられる(かもしれない)私の推しMitch Whiteはとっくの昔にDFAされ、現AAAに在籍しているPaolo EspinoはMLBどころかマイナーでも不振、またRicky Tiedemannらプロスペクトも怪我や実力不足で上げられない危機的状況でした。
 
 そして現地時間5/5、直前の調整登板で6回1失点12奪三振の好投を披露したことも影響したのか、遂にMLBの舞台へと戻ってくることになったのです。


③今季の成績について


5/25時点での成績 


 
 Manoahの投球内容について触れる前に、まずは日本時間5/25時点での成績について確認します。


①現地5/5 WSH戦
4イニング 被安打6 与四球4 ヒダン2 失点7(自責6)    6奪三振

https://baseballsavant.mlb.com/gamefeed?date=2024-05-05&chartType=pitch&legendType=pitchName&playerType=pitcher&inning=&count=&pitchHand=&batSide=&descFilter=&ptFilter=&resultFilter=&hf=playerBreakdown&sportId=1#744861

②現地5/12 MIN戦
7イニング 被安打4 与四球1 ヒダン1 失点3(自責0)
6奪三振

https://baseballsavant.mlb.com/gamefeed?date=2024-05-12&chartType=pitch&legendType=pitchName&playerType=pitcher&inning=&count=&pitchHand=&batSide=&descFilter=&ptFilter=&resultFilter=&hf=playerBreakdown&sportId=1#744941

③現地5/19 TB戦
7イニング 被安打1 与四球1 無失点 7奪三振

https://baseballsavant.mlb.com/gamefeed?date=2024-05-19&chartType=pitch&legendType=pitchName&playerType=pitcher&inning=&count=&pitchHand=&batSide=&descFilter=&ptFilter=&resultFilter=&hf=playerBreakdown&sportId=1#744937

④現地5/24 DIT戦
4.2イニング 被安打5 与四球2 6失点(自責4)
4奪三振

https://baseballsavant.mlb.com/gamefeed?date=2024-05-24&chartType=pitch&legendType=pitchName&playerType=pitcher&inning=&count=&pitchHand=&batSide=&descFilter=&ptFilter=&resultFilter=&hf=playerBreakdown&sportId=1#746475

 ①~③までは中6日、③~④は中4日での登板となります。
 中4日空けて行われた④回目の登板では、殆どの球種で球速が1マイル以上落ちている点を考えると、彼にはまだまだ中5以上の間隔を空けた方が良いのかもしれません。


④投球内容について


 
 ここからは投球内容について、キャリアハイの2022年と比較しつつ見ていきます。
(2023年の数値は余りにも悪すぎるので、それから多少改善された点を挙げた所でどうにもならないため、比較対象からは除外しました。)
 

総合的な指標の比較



 まずは総合的な指標を比較します。

baseballsavant

  FBの平均球速は殆ど変わりません。ただ、2022年は中4~中6まで様々な間隔で投げていましたが、今年は4登板のうち3登板で中6日での投球だったため、今後より短い登板間隔を設けた場合、平均球速は2022年の水準を下回る可能性があります。
 
 平均被打球速度と被ハードヒット率は2022年と比べて悪化しています。前者は約2マイル、後者は約5%程悪くなっており、打者から強いコンタクトをされているようです。またBarrel率も5.4%→11.3%とかなり悪くなっています。

 昨年最大の懸念点であった与四球率ですが、
2022から順に6.5→14.2→8.2というように推移しています。今年はある程度改善されたものの、それでもMLB平均レベルの域を出ないため、未だ不安定な投球であることは否めません。
 ただ、初球ストライク率は62.9%で、この数字は一昨年の61.8%を上回る数字。どうやらカウントを稼ぐことは出来ているようです。
 
 Whiff%やK%は今年の方が良いと言えます。ただ、Manoahはそもそも三振を量産するようなタイプではなく、実際に2022・2024の双方でMLB平均かそれ以下の値に落ち着いています。
 Chace%については球種別で触れます。

 今季彼の最も大きな課題となるであろう被本塁打について見ると、被本塁打率5.1%は2022年どころか2023年の水準よりも悪く、これは日本時間5/26日時点で最も被本塁打数の多い先発投手、Logan Allen(4.5%)・Aaron Civale(4.5%)・Michael King(4.6%)・Bryce Miller(4.8%)の数値すら上回っています。

https://scout.texasleaguers.com/players/666201

 昨年のひどい制球難からは脱却できたManoahですが、与四球率はMLB平均レベルで打球はハードヒットになりやすく、また被本塁打も多いという現状は、正直2022年の姿とはかけ離れています。彼の完全復活は前途多難と言ってよいでしょう。


投球割合について


 
 球種別の内容を見る前に、Manoahの投球割合について2022年と2024年のデータを挙げます。

baseballsavant

 2022年は4シームの割合が35%と最も多く、次いでスライダー、シンカー、チェンジアップと続いていきます。
 一方2024年はスライダーが30%、シンカーと4シームがそれぞれ28%、そしてチェンジアップが14%となっています。
 2022年は6割以上を占めていたFBですが、2024年は55%程度まで減少し、代わってスライダーとチェンジアップが割合を増やしています。
 
 次に、2024年において、対戦する打者の左右による投球割合及び成績の変化について触れます。

https://scout.texasleaguers.com/players/666201

対右 SL 43.8% SI 39.2% FF 13.7% CH 3.2%
対左 FF 37.3% SL 24% CH 22.1% SI 16.6%
(少数第二位を四捨五入しています。)

 対右はスライダーとシンカーが80%以上を占めており、たまに4シームを投げるといった配分。
 対左はFFが一番多いものの、4球種を満遍なく使用している印象です。また、チェンジアップはほぼ左打者専用となっています。

 そして左右別の成績は下のようになっています。

baseballsavant

 被本塁打は全て左打者から打たれたものになっています。これはひどい…
また、5本の被本塁打のうち3本はチェンジアップが打たれたものです。これに関しては、チェンジアップの項で触れます。
  

球種別の比較



 つづいて、Manoahの持ち球4球種について、2022年やMLB平均と比較しながらそれぞれ触れていきます。

スライダー


 
 現在Manoahが最も多く投げているスライダーですが、こちらはマイナーで調整していた時から既に往年の水準まで戻っているように感じました。
ヒートマップは以下の通り。

2022←→2024
baseballsavant

 投球数が少ないこともあってか、2022年よりばらついているようにも見えますが、右打者のアウトコース下、左打者のインコース下をよく攻めることが出来ているのではないでしょうか?

 その他のデータも見ていきましょう。先ずは平均球速と変化量から。

2022年 縦 41.0インチ 横 14.5インチ 81.5マイル
2024年 縦 43.6インチ 横 13.5インチ 81.1マイル
 
 Manoahのスライダーは、球速が出る訳ではないものの、縦横共に大きく変化することが特徴です。今季は横の変化量が落ちた代わりに縦により深く沈むようになりました。
 
 しかし、変化量が大きいからといって空振りが奪えるかというとそうではなく、Whiff%は27.3%と微妙な成績。2022年の31.8%と比較すると物足りなく感じます。
 さらに被打率こそ.214ですが、打たれた時のダメージが大きい。既に2本のHRを浴びており、またハードヒット率も40.9%とあまりよくありません。被LAが2022の22°→16°になりましたが、そちらもsweet-spotであることには変わりありません。
 結果savantのRun Valueも-3と低くなってしまっています。
 現状彼のスライダーとその運用が大きく変わることはないと思われ、今後Run Valueがどうなるかは他の球の成績に左右されるのではないでしょうか。

4シーム

 2022年にRun Value19(←!?!?)を記録したManoahの4シームですが、実は今季も中々良い結果を残しています。
 ヒートマップは以下の通り。

2022←→2024
baseballsavant

 まだ102球しか投じていないため、はっきりとは分かりませんが、高めやコーナーに集めることが出来ているように感じます。
 ただ、しばしば右打者のインコース高め、左打者のアウトコース高めに球が大きく外れることがあり、FBに関してはコマンドが未だ不安定なのかもしれません。
 
 その他のデータも見ていきましょう。先ずは平均球速と変化量、そして回転数から。

2022年 
縦横トータルの変化量 17.3インチ
平均93.9マイル 2347回転

2024年 
縦横トータルの変化量 16.4インチ
平均93.4マイル 2397回転

 Manoahの4シームは、2200~2500回転という高スピンレートが特徴となっており、今季も一昨年と同等以上の回転数を維持しています。
 一方で2022年と比較して横方向の変化が落ち、総合的な変化量も小さくなりました。また、今後変動する可能性は高いですが、0.5マイルほど平均球速が低下しています。

 少し質が変わった4シームですが、Run Valueは+1とそこそこ良い評価を受けています。
 wOBAこそ.327ですが、被打率.143 被長打率は190を記録。またWhiff%は33.3%となっており、Manoahの持ち球の中で最も価値のある球種となっています。


シンカー

 2024年はスライダーと共に対左の要となっているシンカーですが、空振りこそ奪えないもののそこそこ有用な球となっています。
 ヒートマップは以下の通り。

2022←→2024
baseballsavant

https://twitter.com/PitchingNinja/status/1787210061036622029?t=7Ii2jXNCg8ZGv5eEe4LQ3Q&s=19

 こちらも103球しか投げていませんが、ヒートマップは2022年と似たようなものになっています。また、バックドアやフロントドアを活用している印象があり、コーナーを突ける程度にはコントロール出来ているようです。

 その他のデータも見ていきましょう。先ずは平均球速と変化量から。

2022年 縦 21.2インチ 横 14.7インチ 93.3マイル
2024年 縦 20.6インチ 横 13.2インチ 93.6マイル

 2024年のシンカーですが、球速は一昨年以上の水準ではあるものの、縦方向が0.6インチ、横方向は1.5インチほど変化量が小さくなっています。
 
 Whiff%は18.2%で、前述の通り空振りを奪うことには使えませんが、被打率と長打率は共に.143と現時点で長打を1本も打たれておらず、またwOBAは.238を記録。ハードヒット率も23.1%と痛打を抑える点ではそこそこの結果を残しています。
 一つ気になるのは被LA。2022年は2°で絶対にBarrelを許さない球でしたが、今年は15°とよろしくない角度になってしまっています。今後揺り戻しが来るかもしれません。
 ちなみにsavantのRun Valueはプラマイ0。良くも悪くもないという評価です。


チェンジアップ

 対左打者専用に使われるチェンジアップですが、2022年と比較して投球全体に占める割合が3%ほど増加しています。しかしそれはあまり良くない判断なのかもしれません。理由は後述。

 先ずはヒートマップを見てみましょう。

2022←→2024
baseballsavant

  2022年はゾーンの端やボールゾーンにある程度集められていましたが、今年はいかにも打たれそうな所に濃い赤色が…
 それもあってか今季5本の被本塁打のうち3本はチェンジアップから打たれたものになっています。

https://x.com/tigers/status/1794144294544031838?t=d03jhdbHqYTtctVcDUzORQ&s=19


 つづいて、球速や変化量について触れます。

2022年 縦 27.3インチ 横 14.5インチ 86.5マイル
2024年 縦 23.9インチ 横 11.8インチ 87.4マイル

 平均球速こそ約1マイル向上しましたが、変化量が縦横共に大きく減少してしまっています。
 …これただの遅くて甘いゾーンにいくシンカーでは?

↑2022
↓2024
baseballsavant

 回転軸等にも目を当てると、2022年と比較して実際の回転軸(Spin Base)と変化の方向(Observe)が近くなってしまっています。縦横の変化量が大幅に小さくなってしまったこともそうですが、上記の点が2022年にRun Value+6と好成績だったはずのチェンジアップを悪化させた原因になっている可能性が考えられます。

(※参考に、同じく対左専用でチェンジアップを使っており、且つヒダンが多いMikeal Kingの表を載せておきます。因みにRun Valueは+6です、すごい。)

baseballsavant

 チェンジアップの細かい成績も見ていくと、被打率.286はともかくとして、被長打率.929というとんでもない数字が目を引きます。(Judgeかな?)
被wOBAは.493と思ったよりは高くないですが、被ハードヒット率60%はなかなかにひどい。またWhiff%も26.5%と高い訳ではありません。
ただ、2024年のRun Valueは-2となっており、これはスライダーよりはマシな値です。(投げる頻度が少ないからでしょうか?)
 
 コンタクトされ、それがインプレイになると大抵長打になってしまうということなので、はっきり言ってこの球は投げない方がマシのように思います。今後投球割合をどう調整していくのかに要注目です。


:終わりに

 ここまでManoahの復帰までの経緯や4登板終了時点での投球内容について書きましたが、如何でしたでしょうか。
 現在防御率こそ3点台を維持していますが、指標を調べると今後炎上する気配しか感じません。しかし、彼は腐っても2022年ALサイヤング投票3位の実力者。きっと課題を修正し、素晴らしいピッチャーとして復活してくれるでしょう。
  私はManoahを信じています。

 最後までご覧いただきありがとうございました。



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