興味深い視聴率分析の記事:流入と流出の分析

視聴率分析のニュース記事で興味深いものがありましたので、共有します。

紅白で視聴者を魅了したのは・・・1位米津、2位サザン、3位サブちゃん、別格チコちゃん~」(2019/1/7)

記事にあるとおり、視聴率は流入と流出との差で決まります。このうち流入の方は、専念視聴予定者+偶然の流入で、コンテンツ自体よりも前宣伝や裏番組のふがいなさなどで決まりますが、流出の方はコンテンツの吸引力に依存します。つまり、流入は、その時間にその番組を「みよう」と思っていた人が入ってくる分と、適当にチャンネルを合わせたらその番組にあたった人の分の合計ですが、流出は意識的で、そのコンテンツをもう見なくていいと思った人が流出しています。(もちろん、出掛けなきゃいけないとか、いつまでもテレビばかり見てるんじゃない!とおかんに怒られたことも含み、そのチャンネルを見続けるという行動よりも、そのほかの行動の優先順位が高くなったので、離脱します。)

さて、この分析はそのうちの流出に焦点を当てていて、各時間帯でどのコンテンツが放送されていた時間帯に最も流出率が低かったかを調べいています。流出率が低いと言うことは、その時間に放送されているコンテンツの吸引力、つまり、視聴者を掴んで離さない力が強いことを現していて、それを計算して並べてみようという分析です。話題の米津玄師さんは流出率が非常に小さく、サザンや北島三郎さん、チコちゃんのコーナーなどがそれに続いたという結果は、吸引力が強い感じとうまく合います。また、記事には触れられていませんが、グラフを見ると DA PUMPやAKB48の時間も非常に低い流出率を記録しているように見えます。

一方で、全体傾向として7時台は比較的流出率が率が低く、20時台、21時台は高めだったことは、コンテンツの吸引力だけではなく、見ている人の規模や質に寄るところもある気がしました。接触率(≒視聴率)が7時台では低め、20時台から徐々に上がり、21時から高止まりしますが、視聴率が低いうちはコアファンが多く、高くなってくるとライト層がどんどん流入してくると考えれば(あくまでも仮説ですが)、コンテンツそのものに興味関心が比較的低い層が割合として大きくなってくるような気がします。(但し、そんな時間帯にもかかわらず非常に低い流出率をたたき出したDA PUMPさんや米津玄師さんは、やはり2018年を象徴するアーティストだったとみてよいと思います。)また、米津さんの直後のMISIAさんのところで離脱率が高くなっているのも、規模の側面があります。その直前の米津さんが大量にライト傾向の高い視聴者を集めたので、他の時間帯と比べて流出率的には不利でした。記事にも「彼だけが目当てだった視聴者」という言い方がされています。

ところで、この考え方は、マーケティング的にもいろいろ横展開できますね。例えば ID-POSデータの分析では、流出率はリピート購買におけるブランド離脱などの文脈で研究されることが多いですし、ツイッターデータの分析などでは、フォロワーの離脱率などを使ってコンテンツ=当該ユーザーの吸引力を測ったりすることもできそうです。ツイッターのフォローも、フォローするかどうかは確率的(と言えなくもない)ですが、フォロー解除は非常に意識的に行われますので、それを計測すると何か見えてくるように思います。もちろん、視聴率と同様に、規模感に依存する部分をうまく分離することがもう一つのポイントになるでしょう。1000人規模のユーザーと、100万人規模のユーザーでは、フォロワーとユーザーとの関係性の質が異なります。

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