見出し画像

【じんたろホカホカ壁新聞】大衆の熱狂が生み出す「偽りの夜明け」にしないために

警察官に膝で首を押さえつけられ黒人男性が死亡した事件を発端に、抗議デモが広がっている。
熱狂の中で人々はまともな判断力を失う。
容疑者である白人警察官が第二級殺人で訴追されたことに対する抗議デモも起きたそうだ。一方、殺された黒人側の支持者は全米いや海外にも広がり、アメリカのいくつかの地方では暴徒化し、死亡者も出ている。
また、著名人たちが黒一面のInstagramで抗議デモの意思表示をする運動が広がっているとか。ひとりの黒人の殺人事件は、もはや違う次元の事件になっている。

その前に、いったいどんな事件だったのか、殺された側の立場、殺した側の立場になって一度振り返ってみるべきではないのか?

どんな事件だったのか?

殺されたのは、ジョージ・フロイドさんは、テキサス州ヒューストン出身。46歳だった。
ヒューストンではジャック・イェーツ高校に通い、アメリカンフットボールやバスケットボール選手として活躍したという。
ヒューストンでは「Big Floyd(ビッグ・フロイド)」の名義でラッパーとして音楽活動もしており、DJ Screwの楽曲にも参加していたと報じられている。

画像3

BCによると、フロイドさんは数年前にミネソタ州ミネアポリスに引っ越し、警備員として働いていた。事件当時は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で職を失っていたという。
フロイドさんを路上に押さえつけて殺人罪で起訴されたデレク・ショーヴィン元警官は、同じナイトクラブで勤務していたとの報道もある。しかし、ナイトクラブのオーナーは、「2人の間に面識があったかはわからない」と話している。


殺されたフロイドさんはどうして偽造紙幣を使おうとしたのか?

5月25日、フロイドさんは、偽造した20ドル札を使った容疑で警察に拘束された。
現場となった食料雑貨店のCup Foodsはフロイドさんの行きつけの店だったという。NBCの取材に応じた店主は、フロイドさんが過去にトラブルを起こしたことは一度もないと話している。
店主によると、フロイドさんは男性1人、女性1人と来店。同行していた男性が会計時に20ドル札を使おうとしたが、店員は偽札を疑い、受け取るのを拒んだという。3人は店を立ち去ったが、およそ10分後に再度フロイドさんが来店。20ドルを使おうとした。偽札を疑った従業員が警察に通報した。
どうしてフロイドさんが2度もこの店を訪問して偽造の20ドル札を使おうとしたのかはわからない。フロイドさんは、この店の常連でこれまでトラブルもなかったらしい。

どうして、フロイドさんが二度も偽造20ドル札を使おうとしたのかはわからない。

○亡くなったジョージ・フロイドさんはどんな人だったのか《黒人男性死亡事件》
ハフポスト6/2(火) 14:54配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/f520d9e1451cfaf86596c030d9e7c49349b431d7?page=1

逮捕の方法は適切だったのか

フロイドさんが死亡した経緯について、フロイドさんが偽造20ドル札を使った疑いがあると見て、警官たちがパトカーに乗せて職務質問しようとしたところ、フロイドさんが地面に伏せて自分は閉所恐怖症だと主張したと、ミネアポリス市警は説明している。

○米ミネアポリス市警の元警官、黒人男性の殺人罪で起訴 
BBC2020年05月30日

フロイドさんは警官に手錠をかけられたていた。それにもかかわらず、首を膝で5分以上押さえつけられていた。
フロイドさんは首を押さえつけられた状態で「膝が首に。息ができない…ママ、ママ」と懇願していた。通行人が撮影した映像には、フロイドさんの声が徐々に小さくなり、警官らが「起きろ、車に乗れ」と言っても反応しなくなった様子が収められていた。
フロイドさんは病院に搬送されたが、死亡が確認された。

画像1

ミネアポリスのジェイコブ・フレイ(Jacob Frey)市長は「すべての点で間違っている」「黒人であることが、死刑宣告になってはならない」と非難。関与した警官4人を免職にしたと発表した。

○「息ができない…ママ」 警官に首押さえつけられ黒人男性死亡 米
AFP2020年5月27日 17:04 

警察は当初の声明で、偽札の使用の通報を受けて捜査していた警官らが車に乗ったフロイドさんを発見し、車から出るよう命じたところフロイドさんが「物理的に抵抗した」と説明していた。
ところが近くのレストランの防犯カメラが記録した警官とフロイドさんのやり取りには、フロイドさんが逮捕に抵抗する様子は映っていなかった。両者が画面に映らない時間が数分あったものの、映像からは警察側の主張が裏付けられなかった形だ。
映像では、警官2人が車に乗ったフロイドさんを含む3人に歩み寄る。車はレストランの外に止まっており、道を挟んだ向こう側には詐欺事件が起きたと通報のあったコンビニエンスストアがある。警官らはフロイドさんに手錠をかけたように見えるが、両者の動きは一部が車の陰に入って見ることができない。

○警官に首押さえつけられ死亡の米黒人男性、防犯カメラには「抵抗」の映像無し
CNN2020.05.29

検死結果は何を意味するか。

遺族の依頼で行われた検視の結果が1日、発表され、死因は警察官の行為による窒息だったとされた。郡の検視局もその後まもなく検視結果を発表し、フロイドさんの死は「頸部(けいぶ)圧迫」による殺人だったと述べた。
遺族の代理人を務める弁護士は「独立検視官は5月31日にフロイドさんの検視を行い、死因は圧迫の持続による窒息であると断定した」と発表した。
ヘネピン(Hennepin)郡検視局も検視結果を発表し、フロイドさんの死を「頸部圧迫」による殺人と呼ぶ一方、フロイドさんが薬物中毒で、心臓の持病があったことにも言及した。

薬物中毒?
この点は気になる。
しかし、目立った抵抗もしていないし、やはり逮捕の態様には大きな問題があったのだろう。

○米黒人男性、死因は「窒息」 検視結果
AFP2020年6月2日 9:04

殺した警察官は第二級殺人でのより重い刑へでの訴追に変更

事件に関与した警察官4人のうち、フロイドさんの首を膝で押さえつけたデレク・ショービン(Derek Chauvin)容疑者は先週、過失致死に近い罪である第3級殺人で訴追されていた。しかし、第2級殺人に切り替えられ、さらに同僚だった元警官3人も第2級殺人の幇助罪で訴追された。

○米黒人死亡、警官4人を訴追 容疑は第2級殺人に
2020年6月4日 17:32

黒人に対する偏見はいまさら言及する必要はないのかもしれない。同じ事件が繰り返される背景には、白人警察官が黒人を不当に扱っている警察行政の現場の問題がある。それは、たんに差別なのか、薬物使用による凶暴化を怖れてか、正当防衛的に過剰に反応しているのかよくわからない。

しかし、CNN、AFP、BBCなどの報道を見る限り、今回の逮捕の仕方は常軌を逸しており、第二級殺人(第一級は計画的殺人)での訴追は当然だろう。少なくとも検察官は第三級殺人という警察の判断を覆して、第二級殺人での訴追という理性的判断をしたと言えるだろう。

大衆の熱狂が生み出す「偽りの夜明け」にしないために(オルテガの言葉)

あとは何をすべきなのか? 抗議デモを広げるのか。著名人は黒いインスタで抗議運動を広げるべきか。

窒息死させた警察官の判決はまだである。あとの3人は第二級殺人の幇助罪で訴追された。

少なくともここまでは、アメリカの検察に理性は残っているのだ。わたしは元警察官による元黒人ラッパーの不当な逮捕と殺人に抗議する。

それとともにアメリカの検察の理性を讃える。これからもその理性を維持するために。

暴力的な抗議は必要ない。それだけは言える。偽りの夜明けは決して来ない。

画像2


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?