【生徒指導】アメフト部大麻所持疑惑 日大の対応と教育現場の問題点

 アメフト部の3年生が警視庁に覚醒剤取締法違反と大麻取締法違反の疑いでが逮捕された事件に関する日本大学の会見が8日に行われ、林理事長、酒井学長、沢田副学長(元検事)が出席した。報道番組や情報番組では、隠蔽やガバナンスの欠如を非難する意見が噴出しているが、私が会見を聞いてのは、「(日大の)ほかの教育現場でもありがちな対応だな」というもの。教育現場に身を置くもの(中高教員)として、会見を聞いての自分なりのコメントをしたい。

1 自己申告に対する対応について

「自己申告があったときもっときちんと調べていれば…」、「なぜ薬物捜査を担当する部署の警察でなく、日大OBの警察に相談したのか」「厳重注意は甘すぎる」などの批判を聞くと、大麻所持への対応としてはその通りだが、学校で現実的にそのような対応をとるのでは容易ではない。学校は教育機関であり、教員はどんな生徒であってもその生徒を守りたいと思う。もちろん犯罪行為や迷惑行為があってはならないことと考えているし、厳しい指導も行うこともあるが、学校には多様な生徒がいて、それぞれの個性に合わせて成長を支援していくというのが教員の基本的なスタンスである。自己申告で自己の悪行を申し出た生徒に対しては、その生徒の成長を願って諭し反省を促すものの、その生徒を必要以上に不利な状況に追い込むことはしないだろう。これがおおごとにしないように対応することにつながる。日大OBやの警察への相談や厳重注意は、社会正義への配慮と該当生徒を保護のバランスをとった対応であろう。

2 空白の12日間について

 学校は捜査機関ではなく、また生徒との信頼関係を壊したくない(信頼関係が壊れるとその後の指導が困難になる)、保護者からのクレームを受けたくない(プライバシー侵害など)などの理由から、持ち物の検査も強制的に行うことはしない。あくまで本人の了解を得て、本人立ち合いのもとで見せてもらうだけである。学生側に「見せたくない」と拒否されてしまえば終わりである(通常拒否されることは少ないが)。したがって明らかに問題があるとわかるものでなければ、怪しいというレベルのものであれば、すぐに厳しい対応をとれるわけではない。学校は事情聴取と指導を行うことができるのであって、強制的な捜索や尋問を行うことはできないのである。「自首させたかった」という副学長の言葉も指導の延長線上の考えととらえれば理解しやすい。
 

3 ではどうすればよいのか。

 以上教育関係の立場から日大の対応について感じたことを述べてきた。情報番組では日大の対応の甘さについて厳しい言葉が並ぶが、現在の学校にはあるときには個に寄り添った温かい対応が求められ、あるときには全体のことを考えたクールな対応が求められ、それがご都合主義的に押し付けられるので、教員はみんなどうしていいか五里霧中なのである。
 ではどうしたらよいか。結果から判断すれば、日大の対応は甘かったと言わざるを得ない。今回の対応がいいというつもりもない。しかし、現場の判断に任せていては現状を考えることは不可能である。現場の教員は、どんな生徒であっても愛情をもって育てようとするし、いけないことはいけないと指導しつつも追い詰めすぎないよう守ろうとする。どこかで公共の利益、全体の最適解を考えて、現場が生徒を守りすぎる(外部からは隠蔽ととらえられる)のを止め、外部機関にゆだねる、公表するようにしなければならない。それができるのは、上司のみである。理事長、学長や副学長(中高では校長や教頭)が現場の対応を信じて任せるという気持ちもわかるが、それでは今回のような拙い対応を止めることはできない。再発防止には、トップのリーダーシップ、ガバナンスが不可欠なのである。
 


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