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インターネットセックスにまつわるツイートまとめ

インターネットで「なみ」として知り合った男性と、セックスの可能性を最大限に考慮に入れたうえで、オフラインで会うことになった。これは対面を待つ少し前の胸の高鳴りと、胃の不快感。

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「名古屋はこちらに比べてまだ過ごしやすいみたいだから、前に写真を送ったジャケットを着ていくよ」と言っていたのに、ぜんぜん違うやつを着てきた。「話が違うじゃん」と泣きそうになる。

たしかに男前で、そのふるまいも「オス」そのものなんだけど、無自覚でフェミニン。歌舞伎の女形のようなモードが無意識的にON/OFFされる。

私はスタンダードで清潔感があって、ノイズの少ないファッションが好きなんだけど、彼は全方位的に「ノイズ」だった。六本木の黒人って怖いよね、と言い合って笑ったことがあったけど、この日の彼は、きちんと「シティ文化の若者」といういでたちだった。スーツの制約下でフェロモンを噴霧/抑制する男たちが往来するオフィスでは見つけられないような男だった。

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駅前でブランチ。対面して即YES/NO枕をつきつけ、「セックスします」という言質も取っていたので、ホテルに向かう。前々から決めておいたところ。

1回目の記憶はほとんどない。彼がずっと、私の名前を耳元で叫んでいたことくらいしか覚えていない。「うるさい」と思ったけど、「そのまま右耳の鼓膜を破ってもいいよ」、とも思った。

ルームサービスは2回頼んだ。彼が持ち込んだスパークリングワイン(日本のやつだからシャンパンじゃないね、ごめんなさい)と一緒にしゃらくさいアラカルトを頼んだのが1回、暗くなってから「小腹が減った」とカルボナーラとかを頼んだのがもう1回。彼はぶよぶよの麺を噛みながら「うん、これが正しいんだよ、こういうところのメシとしては」と自分に言い聞かせていたり、初めてのチーズタッカルビを食べて「甘辛い鶏肉にチーズをかけたやつだな、分かった」と新しい知見を蓄積したりしていた(私もチーズタッカルビは初めて食べた)。

彼は2回目のセックスに至るあれこれを評して「おれの人権が半分なかった」と述懐していた。

彼が仮眠に入る。日が落ちて、部屋の中が黒と橙になる。思いがけないスピードで大気の輪郭が死に近づく。「しなくていいから、さわっててもいい?」と聞くと諾、とのことだったので、性器をいつくしむ。今日はたくさん愛してくれてありがとう、と思う。

ホテルを出る。タクシーがなかなか捕まらない。

寸暇を縫って彼が電話をよこすときは、結構な割合でハザードがカチカチ言ってる。「いつもここから電話をくれるの」と聞くと「そうだよ」と言うので、胸の奥がツンとする。降車した場所は、その前の週末にインターン生を引率して訪問したクライアントが入居するオフィスビルの前だった。お互いの生活に無意識に少しだけ片足を踏み入れたところに後ろからだれかに呼ばれて、それぞれ引き返していくような感覚だった。

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二度と会えないかもしれないけど、どうしようもないくらい好きな人とセックスできたので、二度と会えなかったとして、この記憶をきちんと整頓しておこうと思った。ありふれたインターネットセックスの話。

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