春が来る度に

いつもの帰り道。
最近は自転車が壊れたせいで歩いて帰るいつもの帰り道。

いつもの自販機。
コインを入れてボタンを押すとココアを吐き出すいつもの自販機。

いつもの帰り道のいつもの自販機、なんのことはない日常。


今日は少し違う帰り道。
いつもの帰り道いつもの自販機。

自販機からココアが消えていた。

なんのことはない。
ただそれだけのことだけど、僕にはそれが何かとても大事な事のように思えた。

「もうそんな季節か」

取り出した120円をサイフに戻しカバンに入れなおす。
期待していた温かさを誤魔化すように、両手を制服のポケットにしまい込み歩きだす。

風はまだ冷たい。

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