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短編:借り物の返し方

こんばんわ神明です。

皆様は映画やムフフビデオ等、レンタルビデオ店を利用してますでしょうか。

さらにコミックやCDも、レンタル店で借りた事はありますでしょうか。


以前、書籍のシェア大幅減少について触れたことがありますが、レンタルビデオ店についても同様の事が言えるわけです。

レンタルビデオ店のピーク時代は1990年末から2000年初頭で、日本全国では約14,000店舗が営業しておりました。

フランチャイズ、自営含めてのお話です。

2022年の昨今、現在の日本では約3,000店舗が営業しております。

ピーク時のやや1/5に減少、といっても差し支えないでしょう。

原因の多くはネットフリックス、アマゾンプライム等の動画配信が主流となり、エンタメを視聴する形態が大きく変化した事によると言えますな。


そんな2000年代の初頭に闇の無限層をループしながら、たまにレンタルビデオ店を利用していた神明ですが、映画コーナーの奥にあるピンクの暖簾をくぐり抜けてめくるめく世界に身を置いていたある日のお話。

18禁コーナーには余を含めた数人がいて、パッケージを眺めて作品を選んでいると、棚の隙間から見える向かい側の男と目が合いました。

これはこれで何だか気まずく、一旦その棚から離れて別の棚に移動して作品を選んでいたところ、さっき目が合った男が隣で作品を選んでいました。

「や、これはかたじけない…」と思い、また別のコーナーで作品を選んでいると、棚の向かい側でさっきの男が作品を選んでいるのが隙間から見えます。

闇のセブンセンシズが働いて「今日は何だか選びにくいな…あきらめよう」と18禁コーナーを後にして、洋画コーナーで作品を選んでおりましたところ…

同じコーナーの棚のちょっと離れたところに、例の男がいるじゃありませんか。


これは…さすがに何かおかしいかもしれん…


そう考えて、闇の技「セブンセンシズ」を発動したままお店を出ました。

お店は電気店の2階にあったので、階段を降りていると明らかにちょっと後ろに足音がついてきます。


もう見るまでもなく、さっきの男だと理解しました。

立場上、様々な人間の好奇の目に触れる事は慣れてはいるが、このケースは初めてだな…

外に出て、近くの地下道に入る事に決めた余は、後ろに聞こえる足音との距離を保ちながら地下道の階段を下ります。


地下道に降りる階段に響く、足音が2人分…


通路に降りてすぐ曲がり角があるのは知っていたので、そこで迎え撃とうと心を決めて角を曲がり、ラッキーストライクを咥えて火を付けて待つ。

ハードボイルド小説の読みすぎには注意しましょう。


足音が近づいてきて、角で余と出くわした男の顔と、力いっぱいの「睨み」を効かせた余の眼力センシズ。


ギョッとして強張った顔をした男は、一度立ち止まり余の顔を少し見てそのまま通り過ぎていきます。


そのまま去っていく男の後ろ姿を見ながら、次の一手を考える。

男は地下通路内の角を曲がって、まだ歩いている音がする。

余はそのままここを動かない事にした。


余の聴力は3,8prhの倍の距離まで聞くことができるので、途中で男が立ち止まった事は聞き逃さない。


さぁ、ここからが勝負だぜ。

来るかい!


立ち止まった男の足音は、地下通路の角の向こうで歩きから駆け足に変わってこちらに向かって来ます。


余は右拳を握りしめ、背徳の堕落拳の構えを取る。

こちらに駆けてくる男を目視して、タイミングを合わせるように腰を落として右拳の先にライトニングを込めた。


さぁ…来な!


駆けて来た男は余の目の前で立ち止まり…余がライトニングを込めた背徳の堕落拳を放とうとした刹那。


「今、何時ですか?」


と、聞いて来た。


え…


混乱するわし…いや余。


まず、ライトニングを引っ込めよう…

あ、タバコの煙が目に入って痛い…もう煙草はやめよう…


つか、アダルトビデオコーナーでそれ聞きたかったん?

時計なんて店内にあったやん…

など、思考がまとまらない。


この間、時間にして2秒くらい。余は忘れていた…力いっぱいの眼力センシズを込めた「睨み」を発動したままであったことを。


男は「すいません…」と言い残して、その場をまた去っていった。


警戒レベルは下げないまま足音を聞いていると、地下通路の階段を登っていく音が聞こえる。


しばらくそこから動かずに第3波に備えるが、セブンセンシズは「もう終わった…」と告げていた。


その後、後ろからは誰にも尾けられていなことを理解しながらも、地下通路を出て、だいーぶ遠回りして闇のアジトについたわしであった。


この教訓から学べる事は、

不用意にアダルトコーナーに入ると痛い目を見る。

という事だった。


その後、いっさいその店の18禁コーナーはおろか、その店にも近づかないようにしたのは言うまでもない。


こうして、客足1人分を失いながら、レンタルビデオ店のシェアは減っていったのだと思われます。


だけども余は一応は人間どもを楽しませるのを生業としている身。


次の一手をまた思考する必要があるな。


皆様が良き夢を見られるようにな。


ふふ。


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