究明する会ニュース210号要約

<お花見ウォーク コロナ禍、曇天の中でも無事挙行> 鳥居靖
 参加者は20名の予定だったが、連絡のミスなどが重なり、26名の参加。今後気をつけたい。大久保駅から若松河田駅まで、陸軍技術研究所から軍医学校、陸軍砲工学校までというハードなコース。砲工学校跡は、現在総務省第二庁舎別館とない、内部に産業遺産情報センターを有す。問題あり。
・アンケート結果報告 省略
・メールによる感想 
紫金草物語講演関係者の方、祖父が残留孤児で今は復旦大学に留学している方、納骨施設のプレートの誤り(訂正済)を指摘してくださった方など
<陸軍科学研究所が「満洲」で人体実験① ―浮かび上がった安達部隊の存在> 川村一之
・四平街
陸軍科学研究所第二部が、「満洲」に創設した試験場で人体実験を繰り返していたことが判明した。
『憲兵正史』(全国憲友会連合会本部,1980)や『中帰連』(通号7、1998.12)によると、四平街に731部隊があったという。証言によると四平郊外西方約1キロの元中学校の校舎に「日本陸軍科学試験所満洲派遣部隊」があり、人体実験が行われていた。
・交通中体内試験場
 731部隊罪証陳列館の譚天研究員から送って頂いた資料で、日本陸軍省科学実験所満洲派遣隊旧跡は、元々東北第一交通中学校舎と確認。遠藤三郎日記には「安達大佐、立花中佐と共に交通中隊内試験場に行き試験の実情を視察す。」とある。証言にも「安達という試験場長」とある。陸軍科学研究所の「安達大佐」を調べた。
・安達十九(あだちじゅうく)
安達十九は1886年生。石井四郎の6年先輩である。陸軍士官学校を卒業後、陸軍砲工学校、東京帝大理学部応用化学学科に進み、1930年に陸軍科学研究所員に任命され、毒ガス開発の牽引役になる。安達は1921年から3年間欧州へ出張し、その間に陸軍科学研究所は板橋から百人町戸山ヶ原庁舎に移転。帰朝後化学兵器従業者に欧州の見聞を講義した。
・陸軍科学研究所第二部
陸軍科学研究所は、物理研究の第一課、化学(火薬)研究の第二課を置いてスタート。1924年2月に化学兵器を専門とする第3部を設け、3部制とした。同年5月には化学兵器を制式化、陸軍技術本部で研究した。
「満州事変」後の1932年8月、第二部を廃止し、第3部を第2部に再編した。第二部の部長は久村種樹少将、安達十九工兵大佐は第二部の所員待遇だった。上記の証言等にある1933年~35年、安達は陸軍技術本部員を兼ね、35年8月には陸軍科学研究所第二部の部長に就任している。
・「満洲国出張」
 遠藤三郎日記では、1933年11月、「安達大佐、立花中佐と共に交通中隊内試験場に行き試験の実情を視察」し、毒液や電流通過実験を目撃する。
 陸軍技術本部作成の「満密第一三七五 陸軍技術本部 雇員満洲国出張ニ関スル件」(アジア歴史資料センター レファランスコードC01002933000)には、陸軍技術本部・陸軍科学研究所から安達、立花を含めた24名が、満洲国に出張していたことが、陸軍科学研究所長・久村種樹によって記載されていた。
(次号に続く)
<人骨発見32周年集会「登戸研究所と731部隊―帝銀事件からの検証―」その3>山田朗さん講演録最終回
・平沢貞通の逮捕
 8月、松井名刺を追っていたグループが、北海道で画家の平沢を逮捕。平沢は被害者の面通しでも断定した人はいない。毒物の専門知識もない。真犯人説は怪しまれたが、一か月に渡る訊問で、拘禁症状になり、自白してしまう。
・捜査方針の転換
 平沢逮捕の後、捜査の流れが変わる。伴繁雄さんも4月には青酸ニトリール説だったが、9月の捜査会議で一般人でも入手可能な青酸カリ説に転換する。使用毒物が青酸カリと断定され、自白と相まって平沢犯行説、有罪、死刑という路線が作られる。
・帝銀事件と占領政策の転換
 帝銀事件があった1948年、GHQ内で力関係が変化し、民生局から日本を反共の防波堤にしようという参謀2課の力が強まる。参謀2部のウィロビー、GHQにすり寄った有末精二、服部卓四郎が権力を握る。
731部隊関係者の免責
 731部隊関係者は45年にサンダースレポート46年のトンプソンレポートと米軍の調査があったが人体実験の事実は秘匿。1946年にソ連が石井四郎の身柄引き渡しを要求。47年のフェルレポート、ヒルレポートで、アメリカは731部隊の実態を把握、情報を金銭で入手する代わりに部隊員の戦犯免責を決めた。
 帝銀事件の捜査は、1948年4月から9月の間にGHQの介入があり、青酸ニトリール説から青酸カリ説に変わる。登戸研究所の関係者もこの時期アメリカに協力する代わりに免責を受ける。
・おわりに
 戦後、戦犯追及が為されていた時期に、米軍は731部隊、登戸研究所などの関係者を免責し取り込みを図るというダブルスタンダードがあった。その結果、731部隊等の実態は、1980年代の常石敬一さんらの研究が進むまで、闇に封じ込められていた。
(了)
<春のフィールドワーク祭り コロナ禍の向こう側が見えたか?> 鳥居靖
 5月8日(日)、民主青年同盟新宿支部主催。大久保駅から若松河田駅のコース。参加者6名
 5月15日(日)、レイバーネットフィールドワーク部主催。高田馬場駅から若松河田駅コース。参加者20名。
 6月5日(日)、私学9条の会・東京主催。早稲田駅から高田馬場駅コース。参加者15名。
<人骨発見33周年(佐倉鑑定公表30年・厚生労働省納骨20年)集会 「スペイン風邪」と陸軍軍医学校」>
日時 7月17日(日)開場13時30分 開始14時
講演 川村一之(人骨の会代表)
資料代 500円
会場 戸山サンライズ大研修室
要予約
パネル「人骨は訴える」展示
連絡先 080-6602-2913(鳥居) メールアドレス jinkotsu731@yahoo.co.jp
共催 731ネットワーク zoom配信有り 申し込みは nobu.goi@gmail.com
<新聞記事>
沖縄タイムズ 2022年6月27日(月)
「たった数時間で見つかるとは」驚く僧侶 沖縄戦の激戦地で遺骨を収集 土砂を採取しないよう求める

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