人骨ニュース216号要約

<追悼 常石敬一さん> 川村一之(2023.6.10)
常石敬一さんが4月24日に亡くなられたことを知ったのは一月半後。生物化学兵器の専門家として、人骨問題の発足当初から代表を長く務められ、新宿区内で開いていた例会にも住まいの神奈川から休まず出席されていた。30周年を前に代表を引き受けてほしいと連絡を受け、闘病生活をされていたことは知っていたので、メンバーとも相談し、常石さんの意向に沿うことにした。
常石さんは病と闘いながら『731部隊全史』(高文研 2022.2)を上梓。私も『七三一部隊1931-1940』(不二出版 2022.12)をまとめ、常石さんに推薦文を書いていただいたのが2022年の夏。
人骨が発見された翌年(1990年)の1月27日、「人骨問題を究明する住民の集い」で、講演をしていただいたことが知り合うきっかけ。当時の講演内容を『日本医学アカデミズムと七三一部隊』(1990.7)として発行したが、この基調講演が人骨の会のコンセプトになっている。
奥様の美代子さんからの訃報の知らせには
 「長い間、人骨問題を究明する会でご一緒に活動させていただき、大変お世話になりました。有難うございました。12年前にガンを発症しましてからは積極的な活動が出来なくなり、残念だったと思います。しかし皆様の国に対する粘り強い働きかけは必ず世論を動かし、真相究明がなされること心から願っております。」(2023.5.31付)
 とあった。
 人骨問題の究明に力をお貸しくださった常石敬一さんの努力に感謝申し上げる。
 常石さん、安心して安からにお眠りください。
<加藤厚生労働大臣、「人骨は引き続き国の責任で管理」、「身元確認努力を継続」と明言 感染研法人案の衆院厚労委質疑で答弁> 川村一之(2023.5.20)
 国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合して特殊法人化する法案が国会提出、衆議院厚生労働委員会で審議、戸山人骨の扱いに関しても5月17日に取り上げられた。
立憲民主党の野間たけし委員の質問に対し、加藤勝信厚生労働大臣は、国の責任で人骨の管理を行い、身元確認調査を継続すると明言した。また、市民団体が求める情報公開についても、浅沼一成医務技術総括審議官は、現在確認中で、適切に対応したいと答えた。
<お花見ウォーク続報 お花見ウォークに参加した中国人留学生の感想文>
 731部隊の博物館で関係者の音源の日本語に直す作業を経験。風雨の中、案内した大先輩に感銘。(J・R)
 犠牲者に献花。世界平和を願う。(G・R)
 日本に731部隊を研究している団体があることに胸が高鳴った。生物兵器の開発・使用を防ぐために国際協力が必要。(R・J)
<2023年5月9日(火)朝日新聞北海道版)
先祖の遺骨「返還に感謝」 アイヌ民族 豪から4体帰国
<「スペイン風邪」と陸軍軍医学校(四)~シベリア出兵と流行~> 川村一之
・シベリア出兵
 シベリア出兵に反対の姿勢を堅持していたのは尾崎行雄であった。シベリア出兵は表向き独墺軍のけん制であり「チェコ」軍への援助だったが、隠された目的は「北満」とシベリアに日本の利権を確立することであった。
 日本はドイツに宣戦布告して山東省を占領した直後に「対支二十一箇条要求」を提出した。そしてシベリア出兵で侵略的野望を国際社会にひけらかし、アジア民衆に日本への憎悪を植え付けた。
 シベリア出兵のキーマン山縣有朋は、始めるのはやさしいが事を収めるのは難しい、と最初は出兵に反対であった。しかし同じ長州出身で孫のような田中義一に説得され、情に流され出兵を認めた。その山縣も1919年2月、「スペイン風邪」に罹患した。
・流行性感冒
 陸軍士官学校の『戦史教程』〈1934.9〉にシベリア出兵の起因が記されている。陸軍は、当時、伝染病予防規則に基づき、伝染病をコレラ、赤痢など10種類定めていた。しかし欧州大戦に参戦した1914年以降14種類に増加、その中に流行性感冒も加えられた。
 森林太郎の『衛生学教科書』(1897.12)や、陸軍省の『軍隊衛生学』(1929.6)にも取り上げられている。
・『西比利亜出兵衛生史』
 参謀本部の『西比利亜出兵衛生史 第5巻 戦病』には、日清戦争からシベリア出兵までの日本軍に発生した戦争病別の患者数が記述されている。全体的に戦争病は少なくなってきているが、流行性感冒だけはシベリア出征軍で突出して増加している。
・出征兵士
 シベリア出兵の悲惨さは、松尾勝造の『シベリア出征日記』(風媒社1978.5)や『シベリア出兵』(朝日新聞社 1978.5)に詳しい。兵士も軍馬も、凍症でばたばた倒れる。輜重隊では流行性感冒で数十人の死者が出た。『西伯利出兵衛生史』によると、第十二師団野戦重砲兵第四聯隊同輜重隊・輜重兵第十二大隊併せて流行性感冒患者は百余名、死者は二十余名だった。
日記では「流行性感冒に罹って死んだ者が十数名」いると聞いた。また、予防接種も行われ、熱や痛みなどの副反応があったことも記されている。(次号に続く)
<笹の葉墓標展示館巡回展感想文(二)> 島村英子
 お位牌を見て、徴用工の人数の多さに驚いた。写真を見て、ワークショップに参加された皆さんの数にも驚いた。団体用の宿泊施設が整っているわけでもないなかで、泥だらけになって地面を掘る。
 よく考えると、本来は国が(日韓連帯で)行うべきこと。日本では自国の歴史を教えない。歴史修正主義というが、改ざんであり、歴史否定主義である。
 小学校に上がる前、父親に言われて道端の傷痍軍人にお金をあげたことがある。大人になって大島渚監督のドキュメンタリーをみて、その意味を初めて知った。日本の軍人には軍人恩給が支給されている。戦前は日本人として戦争に駆り出し、戦後は外国人として何の手当もなくほっぽり出される。強制連行も慰安婦も同根の問題がある。
 今、分かっている強制労働の被害者の遺骨を掘り起こし、返還することに誠意を込めて進められるように、個人の力は小さいが、協力していこうと思う。 (了)
<人骨発見34周年集会>
731部隊の4つの細菌戦 講師 奈須重雄(NPO法人細菌戦資料センター共同代表)、コメント 川村一之(人骨の会代表) 7月16日、戸山サンライズ 資料代500円

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