究明する会ニュース212号要約

<連載1「スペイン風邪」と陸軍軍医学校~新型コロナ感染症を考える~>
2022年10月13日 川村一之
・東京大神宮のクラスター
 新型コロナ感染症出現から3年目の22年の正月、若い女性に人気の東京大神宮で参拝が中止になった。前年の年末にクラスターが発生したためだ。これは第6波の序章で、東京では2月には2万人を超える感染者があった。第7波は7月に入って再拡大し、感染者4万人を超えた。9月には累計感染者300万人を超え、スペイン風邪の患者数200万人を超えた。全国でもスペイン風邪の総患者数に迫っており、今後第8波があればそれすら超えるだろう。(追記:12月に超えた。)
・COVID-19
 第1波(2020年4月)は、武漢由来とヨーロッパのものが相互補完的に流行。第2波(20年8月)は、世界各地の変異株が流入した。第3波(21年1月)は、英国由来のアルファ株が他を制覇して広がった。第4波(21年5月)は、アルファ株が増減を繰り返したが、インド由来のデルタ株に置き換わった。第5波(21年8月)は、東京五輪開催中にアルファ株からデルタ株、そしてオミクロン株へと置き換わった。第6波(22年1月)のオミクロン株は、症状が、嗅覚・味覚障害から呼吸器系の症状へと変わり、潜伏期間は短く、感染力も強くなった。第7波(22年7月)は、オミクロン株の変異種が主流になる。
・「スペイン風邪」との比較
 「スペイン風邪」の3回の流行も変異種によるものと考えられる。今日ではA型インフルエンザ・ウィルスと特定されている。
 「スペイン風邪」の第1回流行(1918年8月~19年7月)の東京における感染者は約140万人、死者は約1万4千人、新型コロナの場合、α株が優勢だった第1波~第4波を第1期(2020年1月~21年6月)と考えると、感染者は約17万人、死者は約2千2百人。死亡率は、「スペイン風邪」0.97%に対し新型コロナ1.29%。「スペイン風邪」の第2回流行(1919年9月~20年7月)は約43万人の感染者に対して死者約1万2千人。新型コロナの第5波を第2期(2021年7月~11月)とすると、感染者約20万人、死者9百人。死亡率は「スペイン風邪」が2.86%に対して新型コロナが0.44%。新型コロナの第6波は「スペイン風邪」の第1回流行と同様の感染力を示し、第7波はそれを上回った。
・政府の初期対応
 「スペイン風邪」が流行した1918年の前年にロシア革命があった。欧州戦争で革命政権とドイツの間で停戦が実現。ドイツと英仏米聯合国の戦闘は激烈を極め、聯合国は反革命勢力を支援するためにシベリア出兵を行った。日本では8月のシベリア出兵をきっかけに米価が高騰し、富山県で米騒動が発生、全国に波及する。9月には原敬内閣が発足。原自身や田中義一陸軍大臣らも「スペイン風邪」に感染する。政府の対策は、情報提供と地方に予防措置を取るよう求めただけ。
 歌人の与謝野晶子は、米騒動では5人以上集合することを禁じたのに、伝染性の風邪にはなぜ防止策を取らないのか、と批判している。1919年1月、衛生局は、半年後にようやく、集まりを避ける、マスクとうがいの奨励、患者の隔離などの指示を出した。
・危機感のない日本政府
 中国政府が新型肺炎の流行を公表したのは2019年12月31日。日本の厚労省の第一報は翌1月6日。日本初の新型コロナ感染者が確認された1月16日になっても、24日に2例目の感染者が確認された後も、「過剰に心配しないように」と呼び掛けていた。30日になってようやくヒトからヒトへの感染を認めた。ここでも「現時点では広く流行が認められる状況では」ないとした。
・迅速な台湾政府
 12月31日、台湾の衛生福利部は中国の発表と同時に注意喚起を行い、入国検疫強化を指示。翌1月2日には専門家の対策会議、16日には「ヒトからヒトへの伝染がありうる」として「法定伝染病」に指定、対策した。2003年のサーズ(SARS)の経験が役立った。
・中国からの観光客
 日本の対策が遅れたのは、中国の観光客によるインバウンドに期待があったから。検査体制が整わなかったので実際の数は分からないが、日本の4月までの累計感染者数は1万4421人。
 慶応大学病院がコロナ患者以外の入院患者に実施したPCR検査のでは、患者の6%から陽性反応が出た。また東京都内のクリニックが202人の抗体検査を実施したところ、陽性率は5.9%とほぼ一致。これは市中感染の状況を反映しているのではないか。単純計算では、東京にはすでに78万人の感染者がいたことになる。
(続く)
<戸山「人骨」と陸軍軍医学校(その2)> 2022年7月2日 川村一之
 早稲田大学小川輝光講師の特別授業の報告 内容省略
<不二出版から関連書籍、続々刊行!>
 「十五年戦争極秘資料集 陸軍軍医学校防疫研究報告 第9冊・補遺(全1冊・別冊)」常石敬一解説
 「七三一部隊 1931-1940 「細菌戦」への道程」川村一之著
<フィールドワークチーム、再始動>
 人骨の会フィールドワークチーム 第一回研究定例会
  2023年1月22日(日) 14時~16時
  ウィズ新宿3階会議室
  テーマ「陸軍軍医学校」(報告者;鳥居靖)
 お花見ウォーク
  2023年3月26日(日) 12時50分集合 13時出発
  JR市ヶ谷駅改札口集合
  市谷・戸山コース ~尾張藩上屋敷・中屋敷・下屋敷跡を歩く~
  案内 長谷川順一 
 参加費 500円+都営バス運賃(防衛省前~東京女子医大病院前)
<備忘録>
 12月1日(木)
 早稲田大学文化構想学部社会構築論系(金敬黙教授)ゼミのフィールドワーク。参加者約15名。案内鳥居靖。
 12月9日(金)
 早稲田大学教育学部社会科教育法(小川輝光講師)の授業で特別授業。講師川村一之

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