「静かなアツい闘い」-デフサッカーを観戦して-

こんにちは。
先月までザンビアでサッカーをしていた森下仁道は現在タンザニアにいます。

何をしているかというと1ヶ月間のオフシーズンを利用してNational Sports Council of Tanzaniaというタンザニア最大のスポーツ評議会にインターン生として、南部ムトゥワラで開催されているユース国体(UMISSETA)の運営に携わっています。

タンザニア全土28州から代表選手・チームが集い、

1.サッカー男女
2.バスケットボール男女
3.バレーボール男女
4.ハンドボール男女
5.ネットボール女
6.卓球
7.陸上(短長距離、投擲、跳躍)
8.ンゴマ(伝統舞踊)

を競い合います。
なお、本大会で優秀な成績を収めた選手は8月にタンザニア北部アルーシャ州で開催される2019 East African Secondary School Games(東アフリカ大会)に出場する資格を得ます。

2日前にsecondary school部門の閉会式があり、昨日からprimary school部門が始まっているのですが、後者には「特別支援を要する生徒(障害のある生徒)」専用の部門も併設されています。

知的障害、聴覚障害がある生徒の他にも、先日ツイートした「アルビノ」の生徒たちもこの部門で今まで積み上げてきたものを競い合います。

(開会式でも各州に一人手話通訳士が帯同。「なんで登壇者に背を向けてる人がいるんだ?」という疑問が解決しました)

そんな中、今日僕が運営を担当しているピッチで生まれて初めてデフサッカーを観戦しました。

端的に言うと、感動しました。

これまで目が見えない人が行う「ブラインドサッカー」は観戦・体験したことがあったのですが、耳が聞こえない人が行う「デフサッカー」の試合は初めてのことでした。

また筑波大学蹴球部の先輩に仲井健人選手、後輩には野寺風吹選手がデフサッカー日本代表選手として選出されていたのですが、彼らは健常者に混じって対等にプレーしていました。

そのためか、「デフサッカー」という言葉自体は身近に感じてはいたものの、実際に観戦に行く、という段階までには至ってませんでした。

サッカーに限らずどんなスポーツでも「」は非常に重要な要素であり(言うまでもなく日常生活内でもですが)、それは

コミュニケーションを図るための「指示」、
審判のジャッジを認識するための「ホイッスル」、
相手を察知するための「足音」、
モチベーションを高めるための「声援」、

などとあらゆるシーンで必要になります。

サッカーというとりわけ連続性が高く、フィジカルコンタクトの多い種目は尚更のことでしょう。

その「音」から入る情報が一切遮断、もしくは大幅に制限された状態でのサッカー。

それはなんとも「静かなアツい闘い」でした。

聞こえてくるのは外部から観戦しにきたおっさんどもの嘲笑のみ。

普通のサッカーの審判に主審1名が加わるだけで(主審はそれぞれフラッグを2本ずつ持ち笛は無し)、「普通のサッカー」とほとんど変わらないものを楽しめる。[注1]


なんて素晴らしいスポーツなんだろう。

心からそう思いました。

「アフリカだから」と差別化するのは個人的に嫌いですが、
日本と比べてもアフリカではまだまだ障害者やマイノリティに対する配慮や理解が浸透していないのが事実です。

それでも、アフリカの子どもたちも一生懸命生きてる。

強く逞しく生きてる。

そして何よりも楽しそうにサッカーをしている。

ゴールを決めれば応援団全員が手のひらを頭上に上げ、喜び合う。[注2]

ゴールキーパーがミスをしたらチームメイト全員が側まで駆け寄り、励まし合う。

審判はジャッジが聞こえない選手のために視界に入るよう一生懸命走り、

選手がジャッジに気づいていなければ味方だろうが相手だろうが肩を叩いて伝え合う。

サッカーって相手も味方も関係なく、関わる全ての人で作り上げていく劇場なんだ。

あぁ、僕はなんて素晴らしいスポーツと出会ったのだろう。

強く、そう思いました。

先日、仲井選手はブログでこう綴っています。

“誰かができないのであれば、別の誰かがサポートする。お互いに褒め合う、高め合う、協力し合う。そこには障害の有無も関係ありません。障害があってできないことがあれば、みんなで別の方法で工夫してその人のポテンシャルを最大限引き出せるようにする。”

まさにこれこそがスポーツの持つ価値であり、
この意識と行動の連続がより良い世界を作り上げていくための大きなヒントであるような気がしてなりません。

皆さんはどう思いますか?



[注1]デフサッカーの国際大会では、通常のサッカーと同じように主審1人、副審2人、そして主審は笛を吹くと同時にフラッグを振りながら審判をします。また、コート周りにいるボールボーイがフラッグを持ち、笛が吹かれた時にフラッグを振って選手に伝えます。

[注2]手のひらを頭上にあげてひらひらするのは、拍手の手話だそうです。

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上記で登場した筑波大学蹴球部の仲間たちがデフサッカー日本代表だけでなく、なんとデフフットサル代表にも選出されました!そのデフフットサル日本代表が「W杯渡航費プロジェクト」としてクラウドファンディングを実施しております。

⬇プロジェクトページURL
https://camp-fire.jp/projects/152388/activities/85110#main

(写真右から仲井選手、筑波育ちのパーリーピーポーギヤマ、野寺選手。今年2月にタイで開催され、準優勝に輝いたデフフットサルアジア大会にて)

何卒ご支援のほど宜しくお願い致します。
森下仁道

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