欧文の半角スペースは2種類ある!?

どうも、『人文×社会』の中の人です。

今回は、欧文で使われる半角スペースに2種類のものがあることについてご紹介していきたいと思います。

「えっ、半角スペースって全部同じじゃないの!?」と思われるかもしれませんが、実は欧文では2種類の半角スペースが使い分けられています。これを知らないと組版でも困ることが出てきます。

2種類の半角スペース!?

まずは次のフランス語の文章を見てください。

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A:夏の間に彼と会ったかい? 君と話したがっていたと思うけど。
B:そりゃ明らかに無理だよ。だってここ2年間、彼は「家の中に」いるんだもん。

まあ、内容はさておき、上の文章で2種類の半角スペースが使われていたことに気づかれたでしょうか?

試しに2種類の半角スペースを赤と青で色分けして囲ってみましょう。

アートボード 1@300x

あれ? なんだこりゃ? こんなの語学の授業で習ったことがないぞ……。

いやいや、でもこれってフランス語に特有のアレでしょ、と思われたあなた!(アレって何ですかね) 以下を見てください!

アートボード 1@300x

あれー、なんですかね、これ。

いや、だって半角スペースは半角スペースじゃないですか。なんで2種類もあるんですか!

謎の半角スペースの正体とは!?

ご紹介した2種類の半角スペースは、大きさが全く同じものです。なので、上の文章をじーっと見つめていても全く違いが分からないはずです。(もし違いが見つかったら、ディスプレイか視覚に異常が発生しています)

では、いったい何が違うのでしょうか?

まず、2種類の半角スペースのUnicodeを調べてみましょう。(以下、半角スペースを囲った赤色・青色の線は、先ほどの例と対応させた便宜的なものです)

アートボード 1@300x

ほえー。Unicodeが違うのかー。(U+0020とかU+00A0がUnicodeの値です)

赤色の線で囲った「スペース」は、みなさんが普段スペースキーで入力している「半角スペース」です。

青色の線で囲った「ノーブレークスペース」は、日本語で「非分割スペース」とも呼ばれるもので、改行を禁止する半角スペースです。つまり、「半角スペースは入れるけれども、ここで改行しないでね」という時に使う半角スペースです。

「ノーブレークスペース」は、英語でno-break spaceと書くのですが、その頭文字をとって、NBSPと略されたりします。

HTMLコードを知っている方ならば、この略称でピンと来たかもしれません。 というよく見かけるコードが表す文字こそ、ノーブレークスペースです。(私は長らくこれが略称だと知らず、ずっと「ぬぶすぷ」と呼んでいました……)

ちなみに、フランス語ではespace insécable(分割不可のスペース)と呼びます。no-break spaceと全然見た目が違う単語になってしまいますが、意味するところは同じです。

NBSPの使いどころ

では、「ノーブレークスペース」はいったいどういう場合に使うのでしょうか。

英語の場合、使われる場面はけっこう限定されます。主に以下のような数字と単位の間や日付の間のスペースの場合です。

50 km
2:15 pm
20.00 €
July 5

他方、フランス語の場合、ノーブレークスペースは上記の場合に加えて、さらに大きく分けて二つの場面で使われます。

1. 「;」「?」「!」の前のスペース
 例:C'est incroyable !
2. 「:」「»」の前のスペース、「«」の後のスペース
 例:Elle a dit « il y a 50 ans ».

なぜこの二つに分けたかというと、実は厳密に言えば、フランス語の場合、ノーブレークスペースにも2種類あって、1の場合は「狭いノーブレークスペース」(narrow no-break space, espace fine insécable)、2の場合は通常の「ノーブレークスペース」(no-break space, espace insécable)を使うのが正式だからです。

いちおうUnicodeの値を示しておくと、次のようになります。

狭いノーブレークスペース  U+202F
通常のノーブレークスペース U+00A0

ですが、これはあくまで正式な用法で、実際には使い分けていないケースがけっこう見られます。

この記事でも煩雑さを避けるため、すべてU+00A0の方のノーブレークスペースだと考えて、話を進めていきたいと思います。

NBSPを使わないとどうなる?

ノーブレークスペースは改行を禁止するスペースです。そのため、ノーブレークスペースを使わないとそこで改行されてしまうことがあります。

最初に挙げた例で確認しましょう。

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試しにテキストフレームの幅を狭めてみると、どうなるでしょうか。

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ちゃんとギュメ(« »)が分離されずに改行されています。

ところが、ギュメの先頭のノーブレークスペースを、通常の半角スペースにすると、こうなってしまいます。

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先頭のギュメだけ離れてしまいました。これはダメなやつです。

さらに、Aの発言の部分だけ取り出して、さらにテキストフレームの幅を狭めてみます。

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「?」の前の半角スペースがノーブレークスペースになっているので、「?」の前で改行されません。

ところが、「?」の前を通常の半角スペースにすると、こうなってしまいます。

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「?」の前で改行されてしまいました。これもダメなやつです。

このように、改行との関係で問題が生じてしまう場合があるので、通常の半角スペースとノーブレークスペースを使い分ける必要があります。

NBSPを入力するには

では、こうしたノーブレークスペースはどうすれば入力できるのでしょうか。

一つは、文字コード表から入力する方法です。(以下はWindowsの文字コード表です。MacOSでは「文字パレット」という名称です)

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「Unicodeで指定」という欄に、Unicodeの値を入力すれば、それに対応した文字を入力することができます。

もう一つの方法は、ショートカットキーを使うというものです。

Windowsの場合、U+00A0で表される通常のノーブレークスペースは、「ALT + 0160」というショートカットキーで入力することができます。

MacOSの場合、「Opt + Space」で入力できるはずです。

入稿時の注意点

Word原稿で入力されたノーブレークスペースは、InDesignで読み込む際にもそのまま情報が引き継がれます。

そのため、Word原稿を作成する段階で、通常の半角スペースとノーブレークスペースをきちんと使い分けていれば、InDesignで作成する校正刷でもきちんと反映されます。

しかし、現実には使い分けていない原稿が入稿される場合がけっこうありますので、組版の段階において改行すべきでない箇所で改行されているのを見かけた場合には、その部分の半角スペースをノーブレークスペースに変換したりしています。

あるいは、場合によっては、校正刷確認の段階で、「U+00A0ではなく、U+202Fの方のノーブレークスペースにした方がいいのではないでしょうか?」と、こちらからご提案させていただくこともあるかもしれません。

結び

ノーブレークスペースに関しては、組版作業でもチェックしていますが、校正刷を出す際にチェックが漏れていることもありえます。

「組版刷確認の段階で気づいた!」という場合でも、簡単に修正可能ですので、「ここで改行しないで!」とお気軽にご連絡いただければ幸いです。

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