小さな勇者のRPG ウタカゼシナリオ「はるの花は風に揺れ」

シナリオ作成:さいとう(@jinbe_s)
推奨PC人数:3〜4
シナリオレベル:3
予定セッション時間:1時間〜1時間30分
GMレス:不可
使用ルールブック:小さな勇者のRPGウタカゼのみ。他のルールブックの適応はGM・プレイヤーが相談して決定してください。

■ プロローグ
これは、草木が目覚める季節のお話。

想いがかたちをなす大地に暖かい風が吹き、木々が眠りから目覚める頃。
草木が眠りから目覚め、大地に命の息吹が踊りだす頃。

ウタカゼたちが暮らす歌風の龍樹では、全員がどこかそわそわと落ち着かない様子です。
物見やぐらに行って何かを探しているかと思えば、調理場の様子を伺い。
じっとしていられずにまた物見やぐらに。

そんなことも、楽しい日々の思い出のひとつ。
……その、はずなのですが。

■ オープニングクエスト
想いがかたちをなす大地に、まだ冷たい風が吹いている頃。
木々や大地が凍えて過ごす中で、歌風の龍樹に暮らすウタカゼたちは何やらパタパタと忙しない雰囲気です。

そわそわとどこに行くでもなく歩き回り、物見やぐらに着いて何かを探したかと思ったら少しため息。
気を取り直したかと思えば調理場に向かって様子を伺ってにんまり。
みんなそんな具合で、みんなどことなく浮ついています。

その理由は、数日前にコビット族のウタカゼ「ルーク」が王都エムルンの近くで間もなく咲きそうな「はるの花」を見つけたという報告を伝えたからです。

「はるの花」とは、長い茎の上にコップのようなの花を咲かせる植物のことです。
ウタカゼたちが使っているどんぐりのコップを大きくしたような花の見た目から「コップ花」、赤・白・黄色と様々な色を咲かせることから「いろ花」とも呼ばれることもあります。
「はるの花」がその花を咲かせると暖かくて優しい風が吹き、想いがかたちをなす大地に暖かな季節が訪れることが知られています。

毎年、歌風の龍樹では物見やぐらから「はるの花」が見えると「小さなはるのお祭り」が開かれます。
「はるの花」が見つかったという報告が入ってからと言うもの、ウタカゼたちはお祭りの準備を進めながら「はるの花」が見えることを今か今かと待ち続けています。

PCたちも自分の得意分野でお祭りの準備を進めているかもしれません。
GMはプレイヤーと相談し、どのような準備を行っているかを話し合って決定してください。
ウタカゼを初めて遊ぶプレイヤーがいる場合、ここで一度任意の判定をしても良いでしょう。

それぞれがどのような準備をしているのか描写を行ったら、GMは以下の文章を読み上げてください。

祭りの準備が進み、ウタカゼたちが浮かれ気分になっていると少し重い表情のフィノ師が近付いてきます。
そして、PCだけに聞こえるように小声で話しかけてきます。
「祭りの準備の中すまない。実は、少し困った事になっていてな」
そう言うと、フィノ師はPCたちを人のいない場所に連れ出します。
「ここなら他の人に気付かれないだろう。祭りの楽しい気持ちに水を差すことはしなくても良いだろうからな。
……声をかけたのは「はるの花」についてのことだ」

その後、GMはフィノを通じて以下の情報をPCに伝えてください。

・例年であれば「はるの花」が咲く時期に王都エムルンから「はるの花観覧会」の招待状が届く
・先ほどエムルンからのツタエバチが届いたが、そこには「観覧会中止のお知らせ」と書いてあった
・ルークの報告から推測するなら、咲く前の「はるの花」に何かがあったのかもしれない
・エムルンからの正式な依頼は無いが、「はるの花」について調査しに行って欲しい

伝え終わった後、PCたちに「はるの花の調査」の任務を与えます。
PCが任務を受けたところでオープニングクエストを終了します。ストーリー1へ移動してください。

■ ターニングクエスト
PCたちはねずみ族が住む王都エムルンの近くに到着しました。
例年のこの時期なら、エムルンの周辺は「はるの花」が咲き乱れ、暖かい風が通り抜けている頃です。
しかし、今年はまだ冷たい季節がどんよりと座り込んでおり、「はるの花」の姿も見えません。
PCが村に入ると、ねずみ族の村人たちはトボトボと歩くばかりで活気や力強さがありません。
村人に声をかけると、ねずみ族とは思えないほどにゆったりとした喋り方で「ああ、ウタカゼだぁ……ッチ」というような反応をします。GMは下記の文章を読み上げてください。

王都の北東に『はるの花』が咲く丘があるッチ。
毎年この時期になると、『はるの花』が咲いて暖かい風を連れてきてくれるッチ。
10日くらい前、見回りの村人が目覚めそうな『はるの花』を見つけたッチ。これで暖かい季節が来るかと全員喜んだッチが……

そこまで口にすると、村人は寒そうにブルブルと震えその場にうずくまってしまいます。
あまりにも寒いせいか、とても話すことができるような状態ではなくなってしまったようです。
難易度3で【知恵】の協力判定を行ってください。この判定には成功するまで何回でも挑戦できます。
成功すると村人の身体を温める方法を思いつきます。村人を温めてあげることができれば、続きの話を聞くことができます。
GMは下の文章を読み上げてください。

こほん、ありがとうッチ。恩に着るッチ。さて、「はるの花」のことッチな。
10日ほど前には目覚めそうな『はるの花』が見つかったという報告が上がってきているッチ。だけど……3日前、状況が変わったッチ。

その後、以下の情報を伝えてください。

・3日前に「はるの花」の状況を確認しに村の外れの丘に行ったところ、目覚める直前の「はるの花」が押しつぶされるように倒れていた
・そこで、「はるの花」を順に起こしていった時、後ろから急に何かがぶつかってきた。気がついた時には丘の下まで転がり落ちていた
・何が起きたかわからず、もう一度行ってみたところ起こした「はるの花」が再び押しつぶされていた
・何者かが意図的に「はるの花」を押しつぶしているのだろう
・このような状況でははるの花展覧会を行うことができない

以上のことを伝えると、改めて村人からPCに対して「丘の上の何か」の調査依頼をします。
PCが依頼を受けたところでターニングクエストを終了します。
ストーリーボードに進んでください。

■ クライマックスクエスト
PCは村人に聞いた通り、「はるの花」が目覚めるはずの丘の上にたどり着きました。
丘の上に登ると、そこには押しつぶされて倒れている「はるの花」がたくさん見えます。

「はるの花」が暖かい風を吹くには、太陽の陽射しを浴びる必要があります。
PCが力を合わせて協力し、「はるの花」を起こすことができれば太陽の陽射しを浴びさせることができるでしょう。
PCは難易度3で【勇気】の協力判定を行ってください。この判定には成功するまで何回でも挑戦できます。
判定に成功すると、倒れている「はるの花」を起こすことができます。

PCが「はるの花」を起こすことに成功すると、起こした「はるの花」から徐々に暖かな風が吹いてきます。
倒れている「はるの花」を順に起こしていけば、冷たい空気を吹き飛ばしてくれることでしょう。

PCが力を合わせて次の「はるの花」を起こそうとした時、草むらから荒い鼻息のような音が聞こえます。
音がする方向を見ると、鼻息に合わせて上下に揺れる茶色の小山のようなものが草むらのてっぺんから見え隠れしています。
鼻息の持ち主は徐々に草むらから姿を現すと、PCに向かって鋭い牙を向けながら前脚で地面をひっかくように威嚇しています。
その目は赤く染まっており、今にもPCに対して突進しようと構えていることがわかります。

悪意の精霊に取り憑かれた敵の「イノシシ」との戦闘となります。
イノシシのデータはウタカゼルールブックのp131を参照してください。

■ エンディング
悪意が0になったイノシシは気を失い、その場に倒れ込みます。イノシシに希望を分け与え、【愛情】+〈心話〉に成功することで「冬に備えて貯めていた食料をねずみ族の村人に奪われ、ひもじい思いをしていた」ということを聞き出すことができるでしょう。

正気を取り戻したイノシシは反省し、PCが「はるの花」を起こすことに協力してくれます。
PCがイノシシと力を合わせながら倒れている「はるの花」を起こしていくことで、想いがかたちをなす大地に暖かな風が吹き始めます。

全ての「はるの花」を起こした後、丘からふもとを覗くと一面に「はるの花」が咲いている様子が見えます。
「はるの花」から生まれた暖かい風が優しい季節を呼び、木々が元気に色づき始めているようにも見えるでしょう。

咲き誇る「はるの花」と、暖かな季節を迎えた大地を見ながらPCがどのような行動を取るのかはプレイヤーとGMが話し合いながら決定してください。

■ ストーリーボード
ストーリー1: クエスト[調査交渉 No.1]
ストーリー2: クエスト[冒険 No.5]
ストーリー3: クエスト[冒険 No.2]
ストーリー4: クエスト[戦闘 No.2]
ストーリー5: クエスト[冒険 No.20]
ストーリー6: クエスト[回復 No.9]
ストーリー7: クエスト[調査交渉 No.4]
ストーリー8: クエスト[冒険 No.3]
ストーリー9: クエスト[冒険 No.6]
ストーリー10: クエスト[戦闘 No.12]
ストーリー11: クエスト[戦闘 No.15]
ストーリー12: クエスト[回復 No.11]

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