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ドラマ「Shrink ~精神科医ヨワイ~」第2話

『グランドジャンプ』(集英社)で連載中の漫画「Shrink ~精神科医ヨワイ~」の原作を担当している七海仁です(漫画は月子さん)。

本日はドラマ「Shrink ~精神科医ヨワイ~」第2話の放送日でした。
ご覧いただけましたでしょうか。

第2話のゲスト俳優は松浦慎一郎さんです。
俳優、そしてボクシングトレーナーとしてもご活躍されている松浦さん。
(ご出演&ボクシング指導をされた映画「春に散る」、名作です。おすすめ)

松浦さんと初めてお会いしたのは、2度目の撮影見学の時でした。

今回はひだまりクリニックではなく、生活訓練施設「リベラ」のシーンの撮影現場でした。我々が到着したことに気づくとすぐ走ってきてくださって、「はじめまして! よろしくお願いします!」と深々とお辞儀してくださいました。お話ししてすぐ、その実直で誠実そうなお人柄が、原作の「玄」と重なって見えました。

パン以外も食べる男、弱井

プロのキャスティングってすごいんですね。ドラマ「Shrink」ではどの役柄の俳優さんも「この人しかいないんじゃないか」と思うことばかりです。

松浦さんは、とても親しみやすくお話しやすい方で、ご出身の五島列島についてのお話など聞かせてくださいました(お魚やうどんが美味しいそうで…いつか行ってみたい)。また、ご友人がコロナ禍に心の調子を崩されてから『Shrink』を読んでくださっていたとのことで、それをきっかけに漫画を知ってくださっていたそうです。

(実は松浦さんだけでなく、打ち合わせや見学を含め、ドラマの制作過程ではさまざまな関係者の方たちから「実は知人が…」「家族が…」というお話をたくさん、本当にたくさん、伺いました。あらためて精神医療は本当はとても身近なテーマなんだと思わされましたし、関わってくださった方々が「自分にとって大切な人のためにもこのドラマを作りたい」と強く思ってくださっていることが伝わってきて嬉しく思いました)

この日は生活訓練施設に通う玄のシーンの撮影でしたので、中村倫也さんや土屋太鳳さんはいらっしゃいませんでしたが、「岩国真紀」役の酒井若菜さんともお会いすることが出来ました。

精神保健福祉士・岩国真紀

ご挨拶してすぐ、「心の機微を描いていて、学びもある。素晴らしい漫画ですね」と伝えてくださいました(嬉し過ぎるあまりすぐ台本にメモしました)。その清々しい笑顔と思いやり溢れる優しいお話しぶりがまさに「岩国」という感じがして、素敵な方だなぁと思いました。

エキストラの皆さんも大勢いらっしゃったのですが、その方達に細やかに演技指導する中江監督の姿も興味深かったです。玄がエクササイズするすぐ隣は誰が良いか、ワークショップに参加している方達がどんな表情が良いのか、随所でとても丁寧にお話をされていました。

キャストやエキストラ、そしてスタッフの方も含めて、これだけ沢山の方たちの力を結集してドラマは作られていくことにあらためて感動を覚えた1日でした。

第2話のテーマは「双極症(双極性障害)」。

この疾患の症状、特に「躁転」の際の演技はとても難しかったのではないかと想像するのですが、完成映像を観てどのシーンも体当たりで演じ切っていらっしゃる松浦さんが印象的でした。妹を傷つけてしまった苦しみ、バス停での葛藤、ラーメン屋に戻りたくて仕方ない焦れた様子、どれも素晴らしくて、強く心に残りました。終盤、楓と二人夜道を歩きながら話した後に玄が流した涙に、私も泣きました(素敵なシーンでしたね…)。

また、松浦さんが柔道をやっていたのは小学校の頃までと伺って、ドラマでの試合での動きを観て本当にたくさん練習を重ねてくださったのだと驚きました。スタッフさんからも、柔道の監修をされた先生が松浦さんが真剣に柔道シーンに取り組んでいる姿を絶賛されていたと伺いました。

松浦さんに「玄」を演じていただいて良かったと心から思います。

そして、玄が入院することになるシーンでは、小林薫さんの存在感に唸りましたし、中村さんが玄の体を優しくポンポンとする姿に心を打たれました。

第1話の時も、中村さんが全身を使って弱井という人間を表現してくださっていることに感動を覚えましたが、第2話でも、時に「演技している」ことを忘れそうになるくらい、患者さんに対して絶妙な距離感でそこに存在していらっしゃることがあまりに自然で、凄いと思いました。

クランクアップした後にまたお会いする機会があり、その際中村さんが原作について色々ご質問してくださったり、精神医療についてご自身が思っていらっしゃることを伝えてくださいました。その内容に私は、「ここまで勉強なさって、さらにご自分で深く考えた上でのご意見をおっしゃってるのはすごいことだな…」とひそかに驚いていました。その後、弱井を演じるにあたって専門書を10冊以上お読みになられたことを知りました。だからこそあの「弱井先生」が存在するのだと思います。日々お忙しい中村さんがその時間を捻出されたことを思うたび、尊敬の念が募ります。

現在発売中の「グランドジャンプ」最新号では、中村さんがドラマ「Shrink」にどのような思いで臨んだか存分に語ってくださったインタビューが掲載されています(取材・文:SYOさん)。
是非ご一読ください。

そして、第2話で取り上げた「双極症(双極性障害)」については、8月26日(月)に放送されたドラマ関連番組「がんばりすぎないで。~ドラマ『Shrink』精神科医ヨワイの現場から~」でも詳しく紹介されています。

中村倫也さん、土屋太鳳さんとともに、専門医の加藤忠史先生、さらに、当事者のお立場から松浦秀俊さん(双極はたらくラボ)、千葉真希さん(パパゲーノ)がご出演されています(あと、可愛いカメさん[ココリコ田中さん]も)。

まだまだあまり知られていないこの疾患の症状やサインについて、(原作・ドラマでは双極症I型が描かれていますが)I型とII型があり同じ疾患の中でもさまざまなタイプがあることや、治療しながら社会で活躍されている方がたくさんいることなども、知っていただけたらと思います。
NHKオンデマンドでも観ることが出来ますので、見逃した方は是非。

ドラマでも描かれていたように、双極症は当事者の方おひとりで向き合うにはなかなか大変な疾患です。特に、復職に関しては、生活訓練施設や就労支援施設のような「ワンクッション」があることで、生活のリズムを作ったり自分自身を見つめ直したりすることが出来て、その後の仕事の定着率も上がると言われています。そういった社会とのつながりに関しては、「岩国」のような精神保健福祉士さん、そして地域の保健師さんたちが助けてくれることがあります。

たとえ調子を崩して一度立ち止まってしまっても、支えてくれるさまざまな人たちがいるかもしれないということを、覚えておいていただけたら嬉しいです。

来週はいよいよ最終話「パーソナリティ症(パーソナリティ障害)」編です。原作の中でも特に反響が大きかった章のひとつです。
「風花」を演じてくださるのは、白石聖さんです。

9月14日(土)
よる10時~10時49分 [総合]
午前9時25分~10時14分 [BSプレミアム4K]

どうぞお楽しみに。

そして明日8日(日)からは、Amazon Prime Videoにて第1話の配信がスタートします! いつでも、何度でも、観放題。是非そちらでもご覧くださいね。よろしくお願いいたします。

では、また来週!

七海

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