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【技術サマリー】核融合について

2022年12月13日に、米国エネルギー省が、
米国カリフォルニア州 ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)にて、
核融合に関する画期的な進歩があったと発表しました。

この報道を聞いて、核融合について興味を持たれた方も多くいると思います。核融合について専門とする方は少ない(自身も専門ではない)と思いますので、核融合に関する技術的サマリーをメモしていきます。

【核融合反応とは】
核融合反応には、水素の一種である重水素と三重水素を用いることが一般的であり、それらを約1億℃以上に加熱する必要がある。また、超高温・高密度の状態を長時間保つために、高い技術力と専用施設が求められる。
髙い出力エネルギー、少ない放射性廃棄物、環境負荷の少なさなどから、長年注目されている技術だが、実現は早くても2050年頃と見られている。
「地上に太陽を作るようなもの」と表現され、理論上は実現可能とされているが、安定的に稼働しつづけることが難しい。

【核融合反応の種類とそれぞれの利点・課題】
超高温の不安定状態(プラズマ)を維持する方式として、「磁場閉じ込め式」と「慣性式」の2種類が存在する。
欧州や日本も参加しているITERは、「磁場閉じ込め式」を採用しているが、
今回報道されたローレンス・リバモア研究所は、「慣性式」を用いている。

「磁場閉じ込め式」は、旧ソ連時代から研究されており、多くの技術的知見が蓄積されているが、自己点火(外部からエネルギーを入力しなくても、重水素と三重水素が核融合反応する状態)を実現できていない。
つまり、燃料となる重水素などを注入するだけで反応を継続できる定常状態に、まだ達したことがない。

「慣性式」は、磁場や真空設備が不要となるため専用設備をつくりやすいが、照射するレーザー自体のエネルギー効率改善や、連続的なレーザー照射と燃料供給が必要となる。

【今回報道されたローレンス・リバモア研究所が抱える課題】
ローレンス・リバモア研究所においては、レーザー発生装置の熱損失が大きく、装置の冷却が必要なため連続でレーザーを照射できない問題がある。 具体的には、1日に数回程度しか現在は照射できないが、実用化の際は1秒間に10-20回は照射が必要。さらなる高効率化が必要。

【核融合施設・技術の転用について】
核融合施設について、他の発電プラントと同じように広大な敷地面積が必要となるが、核融合に使用される耐高温設備について、次世代原発と称されている小型原子炉モジュール(SMR)でも用いる高温ガス炉が、核融合施設に転用できるのではないかと言われている。
そのため、次世代原発から核融合施設への将来的な移行も可能ではないかと言われている。

また、核融合の副産物として発生する水素を、別の発電燃料等に使用するなど有効活用することで、総合的にネットゼロ実現に近づけられるのではないかといった見方もある。

【まとめ】
今回報道された成果について、人類史上初であることに変わりはないものの、まだ実現までは程遠く、ITERなど他の研究機関が採用している「磁場閉じ込め式」が効率・安定性の観点で、ローレンス・リバモア研究所の成果を更新する可能性もある。
近年トレンドだったブロックチェーン・量子技術に続いて、核融合関係の技術についても、今後注目されていく可能性がある。

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