連合赤軍事件研究NO. 6
森との会合を終え、永田と坂口は榛名ベースに戻った。
すると、協力者のつもりであった山本がいて、永田は困惑した。彼との連絡を任せていた尾崎や小嶋に確認すると、永田の指示を勘違いして彼を入山入軍させてしまったのだという。永田は仕方ないので、彼の入山を認めた。
永田から森との会合についての報告をしたあと、メンバー全員でベース建設の最後の仕上げをした。永田と小嶋は一緒に作業していて、小嶋は
と決意を語った。
永田は小嶋以外の女性たちからの相談にもよく乗っていたようだ。杉崎が寺岡に頼りすぎだと批判された話には杉崎を励まし、金子の出産にも心配していた。この世話好きな性格は永田がリーダーに選ばれた理由のひとつであったが、事件が進むにつれてこの性格も変わっていってしまう。
赤軍派から連絡があり、都内でアジトを確保できなかったので、次の会合は榛名山ベースで行うこととなった。事件への運命は動き出していた。
柴野追悼集会への意見対立
12月16日、尾崎が十二・十八日本赤色救援会復権・柴野虐殺追悼一周年集会のことで、Kとの会合のため東京へ出発した。
翌日尾崎は戻って来たが、気になる報告をした。
私たち部外者から見れば、K(合法部)の言い分は真っ当に聞こえるが、永田ら指導部としてはなんの相談もなく勝手に進めたことに憤りを募らせたのであろう。
さらに永田の怒りを煽ったのは獄中メンバーのアピールであった。書いたのは川島豪と渡辺(大槻の内縁の夫)であった。川島のアピールは赤色救援会(赤軍派と革命左派が結成した救援組織)の結成を祝うという簡単な内容で、自分の奪還のために起こされた十二・一八闘争など武装闘争について全く語っていなかった。そもそも武装闘争を強引に進めてきたのは川島であり、永田は彼に対する不信感を増幅させることとなった。
一方、渡辺のアピールはニ・一七闘争(銃砲店襲撃事件)以後の闘争を行っていないことへの痛烈な批判に満ちており、永田は怒りを爆発させた。
永田は坂口や寺岡など幹部にこのことを共有し、Kが最近冷淡なのは獄中メンバーと繋がっているからだと結論付けた。その夜、メンバー全員を集め、
なかでも積極的に賛成した前澤と伊藤の二人を上京させ、集会に乱入して軍として発言してくるように命じた。前澤らは大張り切りで十八日早朝、ベースを出発した。この問題が山岳ベース事件につながるのだが、永田ら当事者はそんなつもりは全くなかった。
森の小嶋への批判
12月20日、榛名ベースに森と坂東が到着した。永田は森に柴野追悼集会の件を確認したが、森は「知らなかった」と反応した。また永田らが帰った後の新倉ベースについて、「遠山らは総括した」と報告した。実際は、遠山・行方・進藤は植垣らの監視のもとで総括要求され続けていたのである。
森らを歓迎する夕食会が開かれた。革命左派メンバーはおのおの歓迎の気持ちや自らの決意を語った。そのなかで小嶋は、
と発言した。そのときは何も言わなかった森だが、その後開かれた指導部会議ではこの小嶋の発言を、
と批判した。永田は小嶋を庇う発言をしたが、森は永田の発言を無視し、他の革命左派メンバーの評価を継続した。なかでも、尾崎の発言を「軍人らしくない」と激しく批判した。永田はこの森の態度を、
と記しているが、批判を拒否することはなかった。このときは小嶋は永田の部下であり、森は彼女を直接批判することはなかったが、彼女への総括要求の基本となっていく。
新党結成同意
革命左派メンバーへの評価を述べたあと、森は、「今後は女性の問題にも関心をもつことにした」と言い出した。これは共同軍事訓練で、永田から批判されたことへの回答であろう。しかし、その『関心』とは「女はなんでブラジャーやガードルをするんや」と言った矮小なものであった。永田はメチャクチャな発言と思いつつ、森が女性問題に関心を持ったことはいいことだと考え、森の矮小な質問に律儀に返答するのであった。この森のズレた女性観は遠山だけでなく、革命左派メンバーの大槻と金子にも適用されていくこととなる。
その後も森は中国の革命戦争とプロレタリア文化大革命についてしゃべり続けた。
中国革命の歴史に熟知していると自負していた坂口は公式解釈から外れている森の説明にいい気はしなかったと記しているが、永田は森への論理的指導者としての信頼を深めていった。
また共産主義化の位置づけを確認する中で、森は
と発言した。この森の発言を受け、永田は
と言った。森も永田の意見を肯定したため、赤軍派と革命左派による新党結成が成立したのである。
坂口はこのときの永田の様子について、
と記している。
こうして共闘だった赤軍派と革命左派はこうして新党を結成した。いわゆる「連合赤軍」の誕生である。
赤軍派と革命左派という別々な党であったそれまでは、森は革命左派メンバーを直接追求することはなかった。新党結成によってその制限はなくなったのである。
永田は、森の論理的指導力に心酔し、自分の部下たちへの追求をもとめていくこととなる。とはいえ、リーダーとしてのプライドがなくなったわけでなないので、事件を複雑化させていくこととなる。
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