【寄席レポ】『おかえり馬雀さん』

どぉ~も。家刑ジゴロです。
2023年10月20日(金)、浅草東洋館にて18時30分開演で吉原馬雀さんの落語復帰寄席と記念すべく銘打った『おかえり馬雀さん』という寄席に行ってまいりました!

ご案内のフライヤーです。

ええ、前回レポ(市川猿之助の公判に関しての話)を出した後です。

今回の寄席は、上記のとおり、元師匠から「破門だ!帰れ!!」と言われたがために落語の世界で大ピンチになった井上雄策さんが
「いくら噺家の世界が伝統芸能の世界でも、今までのようなことがまかり通る世界じゃなくなったわ!!」と声を上げた吉原朝馬(よしわら・ちょうば)師匠のもとに再入門、名跡も新たに「吉原馬雀(よしわら・ばじゃく)」さんとして本格的に復帰したことを祝っての寄席
で、聞くところによると、この晴れの寄席のために朝馬師匠が大奔走しての会であったという話。

馬雀さんは今もまだ元師匠との確執に決着がついていないのですが、それはそれ、これはこれ。
ていうかその裁判を傍聴して「これは行かにゃあんめえ!!」と慌てて予約をした次第であります。ちゃんと朝馬師匠の手拭い、GETしてきましたぜ( *˙ω˙*)و グッ!

GETの嬉しさの勢いでパチリ

先に言っておきますが、オイラ、実は生の寄席を見たことがなく、「初」の寄席なんですよ・・・。YouTubeでいくつか落語は聴きましたけどね。

というわけで、浅草演芸ホール・鈴本演芸場、上野広小路亭などの大手落語ホールも入ったことがなく(をい)、本当に初めてナマの落語を聞いたのもこの日なんですよ。

入るまでちょっと不安材料がありました。

お座敷席しかないのかな、と。

というのも、まずオイラは足に問題があり、正座が出来ず、日ごろ座ってることが多く、しかも姿勢が最悪なので腰も悪いんですよね・・・。

入って椅子席だったことにホッとしました。

そして、これは前日に分かったのですが、朝馬師匠がNHK第1放送の朝の番組「ふんわり」にご出演されており、そこでこの寄席の告知がされ、「合言葉」を言うと朝馬師匠の手ぬぐい、そしてこの日のパーソナリティでもあり、朝馬師匠がご活躍されていらっしゃる、全国で相次ぐ特殊詐欺の被害を食い止めるため、 杉良太郎氏の呼び掛けで集まった著名人で結成されたプロジェクトチーム「SOS47」のメンバーでいらしゃる伍代夏子さんのサイン色紙も「先着順で」とは言うものの、とにかく戴けるんだから、朝馬師匠のお人柄、弟子への愛にあふれた寄席をやるとわかったらこりゃあ早く並ぶしかあんめぇ!!とすんげえ鼻息荒くして会場まで向かったことは内緒にしてください(苦笑)。

下記リンク(最後に馬雀さんご本人からのご来場御礼のエントリ)を見ればすべてなんですけども、それは「演者本人の声」なので、こちらは、「見に来た方からの」レポとなります。

先にセトリから行きますか。

一、真田小僧 金原亭駒介
一、そば清 古今亭駒子
一、源平盛衰記 吉原朝馬

仲入り

一、マジックショー Mr.クマリック
一、居場所 吉原馬雀
一、トーク 馬雀・駒子・朝馬

『おかえり馬雀さん』プログラム

トップバッターは前座の金原亭駒介さんが古典落語の「真田小僧」。
小賢しく金遣いが荒い頭の良いがお金の使い方を知らない息子と、その息子にとかく巧みにことごとく小遣いを上げる羽目になってしまう間抜けな両親の問答。
駒介さんの声の明るさが、なおそんなドタバタ親子の会話のリアリティをより引き立ててました。まだ前座さんだそうなので、これから彼がどうなっていくのか、そういうところで見どころはあると思います。

続きましては、古今亭駒子さんが同じく古典落語「そば清」を。
女流の噺家さんです。
この話は大食いの蕎麦食い、清兵衛こと「そば清」ととある蕎麦屋に通う蕎麦食いのコチラもドタバタな攻防。
まず聞き惚れてしまったのは、噺家ならまず覚えねばならない「蕎麦を啜る仕草とその音」。蕎麦を啜るその音が、本当においしい蕎麦をうまいうまいと訴えながら立てるものですから、晩御飯はこのまま蕎麦でも食べるか・・・と思いましたが、ホールを出たころには店じまいだったので叶わず、サイゼで軽く済ませて帰宅したことも内緒にしてください(この記事書いたらマジで蕎麦食って帰ろう)。

前半の最後は朝馬師匠の「源平盛衰記」。
かなり現代の描写が多いので古典落語といいきれるか・・・。
でも、マクラ聞いた時点で思ったことは、
「この人めちゃくちゃ頭いい人だわ・・・」
長年の修業や芸歴などといった経験だけで出せない、知的な笑いのフレーズも多く、ほんに噺家として知性も品も良い。何処ぞの大型名跡を継いだとかいう噺家は是非とも朝馬師匠の爪を煎じて飲んで頂きたく思うほど。「馬雀さんはいいお師匠さんのところにつけて幸せだな」と思ったものです。

中入りが入って、マジック。
Mr.クマリックさんによる楽しい楽しいマジックショーでした。
舞台から離れたお客様にもよくわかるように手品道具も工夫されている、ていうかそもそも道具はみんな自作!!凄い、え?こういうのってどうやって作るん?ともう目がまんまる。
BGMもよく、後半は武田鉄矢の「母に捧げるバラード」を歌いながらどんどんマジックを広げる。あれ?この歌の歌詞、替え歌になってね?と笑いながら見てました。
〆のアナウンスは面白すぎて椅子から落ちそうになりましたけどね(爆)。オーラスまで落としにかかるんか!!と。

そして待ってました!トリは今回の主役、吉原馬雀さん。
演ずるのは新作落語「居場所」。
登場するや否や大きな拍手と歓声。
私も思わず声をあげましたが、初めて彼の落語を聴くのに、何故か目が潤んできました。
裁判の件があるから自分の話がモチーフなのかと思いきや・・・
ある交響楽団の演奏会中の夜の居酒屋での話。
プロとしては初舞台だが、どうに自己承認欲求が止まらないフルーティストと、お笑い芸人からコンダクターにコンバートという異色の経歴だが、昔の癖が消えず、指揮台に立っても常に楽団員を笑わせたい欲求が止まらないコンダクターが酒を酌み交わし、今までの演奏会や楽団を振り返りながら、酒の力で自分の本音をぶちまけ合い、行きついた結果は・・・という噺です。

正直、オイラ自身、若いときに吹奏楽団にいたものなので、中の事情が分かってしまってて、笑う前にうなずきまくってるという「一番OUTな落語鑑賞」をやらかしてしまいました(スンマセン!!)
でも、「シンバル協会」「トライアングル連合」・・・んな団体あるか!!とこれだけは爆笑してしまいましたし、「あるわけネェだろ!」とツッコ見そうになりかけたのはまがいもない事実です。

この噺はまだ噺で登場する交響楽団同様「初演」ですので、ここから演ずるたびにどのような笑いの交響曲となっていくのか、注目度はあると思います。

最後は駒子さん、朝馬師匠、馬雀さんの御三方によるトークショーでした。
テーマはずばり、「噺家の未来」。落語業界におけるセクハラ・パワハラの現状と、それを今後どうすべきかについて熱く語られておりました。

 落語も日本の伝統芸能の一つではあります。
 が、その後進育成も今まで通りでいいのか?
 いや、それは違う。
 馬雀さんは私と同じロスジェネ世代でありますが、元師匠から受けた仕打ちはあまりにもひどい、おかしすぎるなんて話じゃ済まされないということで、裁判を提起されています。
 ロスジェネ世代の我々でさえこう思うのですから、これからのZ世代の若い子たちには無理に近いほど厳しい環境と言わざるを得ません。

 半面、師匠の皆様は、ずっと「これが普通、いつものこと」なのですから、何気なく前座さんや二ツ目の若いお弟子さんなどに「いつも通りの話しかけ」をしてもその一言が彼らを傷つける言葉、早い話が今の世間ではアウトだってことを指摘されても「え?じゃ何も言えないじゃん」となり、これはこれで困った話になる。

 このまま何ら手を打たない限り、落語という芸能と、その演者である噺家が絶滅危惧種になってしまう瀬戸際であるということをトークのなかで痛感しました。

 いやあ、昔の噺家の音と画像が残ってて、YouTubeデモ見れるからいいじゃないか?と思う人もいるかもしれないでしょうが、動画で聞く落語と、ナマで聞く落語は違いますね。噺家とお客様とのコール・アンド・レスポンスによる一発勝負。単にYouTubeで見るだけでは感じられないものが、もし、無くなってしまったら・・・?

 落語会に限らず、あらゆるジャンルの芸能界では未だにセクハラ・パワハラが蔓延るという困った側面があるようで、各分野での根絶に向けてのアクションが起こっているようです。
 芸能界に身を置く皆様も、私たちと同じ血の通った人間ですからね。
「その業界で食ってくことを選んだから仕方がない」ではもう済まないと思います。
 それを再確認させられた有意義な寄席でもありました。

 最後に。
 下記リンクにもあるそうですが、この寄席が行われるにあたり、浅草演芸ホールにご出演されていた師匠の皆様方が激励にお見えになられたとの話は本当に驚きました。
 こういうレアでかつ、センシティブな問題がバックグラウンドにあることから、申し訳ないけど「この寄席は完全アウトロー扱いになるのかな」と思っていました。
 しかしながら、こんな素晴らしいサプライズの贈り物がされるということは、ものすごく大きい意味を持つと思います。
 
 落語会は今、大きな転換期に来ている。
 この寄席は、その始まりの狼煙でもあり、その象徴として行われた。
そう言っても過言ではなかろうかと思います。

馬雀さんも、「吉原馬雀」としてまだ始まったばかり。
前の時の様子は知らなくても、ブランクの影響は多少あったかと思いますし、とにかくコレから彼の本当の噺家人生が始まるのですから、異端だろうがなんだろうが、一生懸命頑張る人は精一杯応援していきたいと思います。
馬雀さんのこれからのご活躍を心より祈念して。


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