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#3 【自分の嫌いな奴らが世間で評価されているのを見ていて焦る。】

【#3  相談者さん】
・柳さん
・50代男性
・小説家(元研究職)
・小説家になる夢が諦めきれず、会社員をやめる
・娘さんが二人いる

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柳さん、こんにちは。

「上岡さん、ありがとうございます。星読みで自分の人生を肯定することができた気がします。」


今日は何のお話をしますか?


「小説を書くのにもっと集中してみたいって気持ちがずっとあって仕事を辞めたんですが、売れなくて。年頃の娘もいるし、格好悪いなって思っています。」

ご家族や娘さんは小説家になることを反対していたんですか?

「いえ、全然。でも賛成というわけでもない。まあ、呆れてるんだろな。我が家の女たちはみんな『パパの勝手にやれば?』という感じ。」

なるほど。『小説家になるぞ!』と決心した時のお気持ちを教えてもらえませんか?


「『自分にしか書けないものを書きたい』ですね。」


柳さんらしいですね。自分にしか書けないものを書けたとしたら、自分のことをどう評価しますか?


「『よくやったな』って思いますね。」


会社員を辞めた時のお気持ちも聞いていいですか?


「研究は好きだったんだけど、若い頃からずっと出世にも興味ないからつまらなかったし、自分の納得する小説を書きたかったし、退職前に軌道修正したってところでしょうか。」

どんなところがつまらなかったですか?


「会社にいる奴ら全員アホだなって思っていて。アホたちは会社から評価されるように自分の頭で何も考えない、心が動かないように生活している。そこから早く抜け出したかったんです。」


じゃあ、退職した時の気持ちとしては『金輪際、お前らの物差しには従わねぇよ?』みたいな感じですか。


「あはは、そうですね。あとは、元々、ひとりで黙々と取り組むのが好きですし自分のペースで生きたかったというのもあるかもしれないです。」



『アホと離れて退屈な会社員を辞めて、家で好きな小説も書いて暮らしている』でも心の中では『こんなはずではなかったのに・・・』と思っている?


「そうですね。焦りですかね。」



わかりますよ。どんな時に焦るんですか?



「売れている小説家にコンプレックスがありますよね。焦ります」



いわゆる売れている小説家の作品は読むんですか?



「読みますよ。◯◯とか◁◁とか。」



柳さんはそれを読んでどう思うんですか?


「『ふーん』って感じですね。自分には良さがわからない」


柳さんっぽいですね。それでいいと思いますよ。


「でも私は売れていない。」

うーん、柳さんは本来◯◯とか◁◁みたいな大ブレイクに興味があるように思えないんですよね。大勢の人の話題になるような本を書く作家さんというより、濃厚な、コアな、ファンがついてきてくれたら嬉しいというタイプでは?


「そのとおりですね。」


自分が生み出した作品によって誰かの人生が変わるとか、人生のバイブル的な感じで何度も読み返してくれるようなファンがいたら嬉しいですよね?


「それもその通りですね。うーん、心の中では別に売れなくていいと思っているんだけど『それは本当?』って思っている自分もいる。仕事を辞めた以上、もっと結果を出した気持ちがあるし」



柳さんは『会社からの評価軸で生き続けて心が削られるのが嫌で、独立して自分の心を表現する道を選んだ』この感覚ってあっていますか?



「その通りですね。わたしの人生だしって思うところもあるし、社会の評価軸で生きている奴らが嫌いだし。」



少し厳しいことを言いますが、社会の真ん中で誰かの評価軸で生きている人を嫌悪している一方で、柳さんは社会に評価を求め続けているんですよ。いわゆる社会という場所から抜け出して自分の心を表現する道を選んだのだけど、その結果をまだ『社会』に求め続けている。本当の意味でまだ自由になっていない。


「盲点でしたね」


不安な心が聞こえてきますね。『私の選択は正しかったですか?』という不安を解消するために、社会に評価されることを求めている、そんな不安な声が聞こえてきます。


「小説家として評価されないって格好悪いですよね」

小説家として評価されるって、芥川賞を取るとか、サイン会をひらけば長蛇の列ができるとか、自分の半生が星野源主演で実写化されるとかですか?


「妻はそれを望んでいるんじゃないかな。自分は別にそういう成功を求めていないんだけど」

家族の話は今日は一回横におきますね。まずは柳さんの気持ちに気が付くことです。『脱サラして小説書いてますが無事成功をおさめました。以上、私の選択はあっていました』と証明することを一旦横に置きましょう。構造としては『社会の評価軸から離れたことを、その離れた社会から評価されようとしている』ということです。これに気がつかないと苦しい。


「格好悪いな。お恥ずかしい話ですけど、仕事をやめて自分のことをばかにしている奴らを見返したいですよね」

当然じゃないですか?それを恥ずかしいと思わず、作品にしちゃってくださいよ。でも『自分のことをばかにした奴らを見返してやろう』と作品を書くのってリベンジ活動なんですよね。芸術には必要な要素だと思いますが、柳さんは『自分にしか書けないものを書こう』を見失っては本当には満たされない。


「そうですね」

ある歌手が、事務所の期待を一身に背負って、売れるためのブランディングをされていたとします。でもそれだと自分が本当に歌いたい曲を作れない。そこで『自分で活動する』と事務所を離れてYouTuberになったとします。そのYouTuberがまず目標にすることは『自分が本当に歌いたい曲を人に届ける』であって『東京ドームを埋める』ことでも『事務所を見返す』ことでもないはずなんですよ。自分が本当に歌いたい曲を人に届けた結果、東京ドームが埋まるというのは最高のシナリオではあるかもしれないけど。リベンジだけに生きてしまうと『大事なこと見失いがち』という話です。

「すごくわかりました」

柳さんが今やるべきことは『みんなが見ないようにしていること』をたくさん書くことです。その中には恥ずかしいと感じることがたくさんあるかもしれない。でもそれが海を超えて誰かの心に届いたり、100年後に読んだ人の人生の色合いが変わっていくようなことがあったら嬉しいですね?



「鳥肌が立ちました」


家族もいますし売れないよりは売れる方が当然いいんだけど、ブレイクするかしないかは、自分の力でコントロールできることではないので一旦横に置きましょう。もっともっと突き抜けてみては、面白いんじゃないですかね。


「突き抜けるというのは、上岡さんはどんなイメージで言っていますか?どんな人生だと私は満足するんだろう。」


死んだ時に、上空から棺桶に入った自分の姿を見て、『売れなかったし、恥の多い人生だったけど、お前はよくやったよな』って笑っちゃうような人生はどうですか?


「上岡さん、まるで私の小説のようなことを言うんですね。」

(続く)









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