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若い先生方へ(20)

 前編から少し間が開きましたが、今回は授業参観の二編目です。前回も記述しましたが、所属校や教育研修における他校での授業参観は「タダ」です。企業等の研修はお金を払ってOJTをするわけですから、たいへんだなと現職の頃から思っていました。しかし、授業参観は「観るだけに終わっている」先生方は多いのではないでしょうか。教科が違おうと校種が違おうと、自分の授業に取り入れる要素は多いと思います。流す参観に終わるか、学ぶ参観にするかの違いは大きいものです。授業達者になることは、自分の本業を高めることになるのです。
 では、何の視点で授業を観るか触れてみます。
5 盗むことがら
 ①導入は子どもの興味関心をどう引き出し、どのような手法で中心課題を    
  提示しているか。
 「わっ」と思うようなモノを出して導入を行えばしめたものです。モノとは、物だけでなく話や事柄等、ヒントはグラウンドの石ころぐらい豊富にあります。そのモノから本時の目標や中心課題へ敷衍すると、今日の授業は「いただき」です。
 ②本時の中心課題には研ぎすましたどのような発問が添えられているか。
 発問は「間口が狭く、奥行きが広い」ものでなければなりません。いきなり「閉じた発問」をすると展開はゼロです。この発問で多様な意見が出てくると展開は大いに楽しいものになるし、子どもたちも引き付けられます。
 ③課題解決のために個人学習、ペア学習、グループ学習、発表活動といっ  たどのような学習手段がとられているか。
 「課題解決のための種々の学習展開」です。指導に課題のある先生方の授業では「ペア学習のためのペア学習」が行われており、活動が目的化されています。これでは本時の課題に到達できません。「なぜその学習形態をとるのですか」ご自分に問うてみることです。
 ④展開時の説明や二次提示ではどんな手段で子どもを引きつけているか。
 授業達者な先生方には「手段」が多彩です。それは盗むに十分な価値があるものです。
 ⑤板書は、思考が流れるようにどんな工夫がされているか。
 行き当たりばったりの板書は、上の学校に行くほど多いもの。小学校の先生方は日々の実践で確立されている方は多いと思います。
 ⑥一対一、一対多の発問から、子どもの中に対話が広がるように、どのよ  うな発問を展開しているか。
 授業達者の先生は、まるで長けた話術のように発問を技巧して展開されます。ぜひ盗みたいものです。
 ⑦机間指導では、個に応じた指導や評価も含め、どのような配慮がなされ  ているか。また、どこから指導を始め、どう巡っているか。
 私は現役のときに「赤ペン」を持って机間を回っていました。そして朱書きをしながら個々の学習を助けていました。ぜひ私の手法もまねてください。そのために、授業開きで「赤ペン」のことをことわっておく必要がありますね。
 ⑧能力差がある集団をどのように操っているか。
 課題を済ませた子どもは時間を持て余す。課題が重すぎる子どもはおしゃべりを始めたり、私語を始める。机間指導とはその個々の違いに応じる指導です。前者にはスペア課題や他の課題を出す。後者には間隙をぬった指導をするなど、机間指導はおろそかにできません。
 ⑨課題解決と定着、余剰時間の活用はどうなされているか。
 学級すべての子どもたちが本時の課題を具現化するように授業は進められるのですが、どうしても個々の差はできます。私は、そこを家庭での課題に託していました。そして毎時の授業評価でそれを確かめていました。授業最終版の授業評価は案外大切です。
6 授業の後で
   授業後、子どもたちにどのような余韻が残っているか。その余韻は授業 の主眼であったか否か。その日のうちに気づきをメモにして授業者に手渡 すこと。口頭で感想も添えること。また、不明な点はその際授業者にたず ねることも忘れないで。
 参観の後に「勉強になりました」「すばらしいご授業でした」と言うのではなく、具体的な場面を挙げて真似たい事項を伝えることは授業を開いた授業者にとっても役立つものです。
 私が若いころのある教頭は、授業を観た後に必ずメモを机上に置いてくださいました。それは歯の浮くようなことばだけでなく、まさに自己課題の正鵠を射たものでありました。私も教頭・校長と勤めるなかで、彼の教頭のメモをまねたものです。
7 お礼はどうするか
 授業参観のお礼は、「私の授業も見てください。」と授業を開くこと。見 せてもらった成果が生かされていればなおよい。
 お礼をすることは自己課題解決の姿を見せることでしょう。「悶々としていたことが、先生のご授業を観て吹っ切れました」とか「こうすれば個々の
子どもに応じた指導ができるんですね」とか、伸びる職員集団でありたいものです。
 今回もお読みいただきありがとうございました。

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