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チャロナラン

バリの寺院祭礼時に奉納されるチャロナラン劇(バロン劇)の物語には、いくつかの説があるようです。
チャロナランはウダヤナ王の妻マヘンドラダッタという説、チャロナランの夫はアイルランガ王説などあるようですが、ここでは夫はウンプー・クトゥランであるというお話をもとにしたものです。

9世紀ごろのお話です。東ジャワのギラーという小国に、クトゥランという僧侶がいました。ウンプー・クトゥランには、妻と美しい一人娘がいました。しかし、ブダ・マハヤナ派で正当な宗教を信仰するクトゥランに対して、妻はやましい黒魔術を使うバイラワ派の信徒でした。妻の考え方に愛想をつかしたクトゥランは、妻子を捨ててバリに行って戻って来ませんでした。
未亡人となった妻は、ランダ・ナテン・ギラー(ギラー国の未亡人) と呼ばれ、そしていつの日か、チャロナランと呼ばれるようになりました。チャロナランは、村の四つ辻で自分の魔力の訓練をよくしていました。チャロナランには、ディア・ラトナ・ムンガリという美しい娘がありましたが、その美しさにもかかわらず、母親が黒魔術を使うという噂を恐れて、娘に求婚する者はありませんでした。
娘を想う母心から、チャロナランは国民に復讐してやろうと決心しました。チャロナランは、恐ろしい魔力を使って国中に疫病を広め、国民は病に倒れて死んでいきました。遺体を埋葬する暇もないほどになり、国民は困難に陥ったのです。
そんな状況を知ったクディリ王朝のエルランガ王は、なんとかして国民を助けようと思いました。疫病の原因がチャロナランの使う黒魔術であると知ると、エルランガはレマートゥリスにいる偉い僧侶のウンプー・バラダーに相談をしました。
事情を知ったウンプー・バラダーは、息子のバフラにチャロナランの娘に求婚するよう命じました。父の言いつけどおりに、バフラはディア・ラトナ・ムンガリと結婚しました。
ある時、バフラは妻に母親の魔力のことをききました。ラトナ・ムンガリからチャロナランの 魔力の秘密の書かれたロンタルがある事を知ったバフラは、妻にそのロンタルを盗むように言いました。盗み出したロンタルは、バフラからウンプー・バラダーの手に渡り、チャロナランの魔力の秘密はあばかれました。秘密を知られたチャロナランは、バラダーの敵ではなく、チャロナランはウンプー・バラダーの霊力の前に敗れたのです。


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