ドラマ「だから私は推しました」第8回(最終回)個人的レビュー

いやー、遂に完走してしまいました。

アバンタイトル

[取調室]
聖護院のスマホに映るのは、監視カメラの画像。
聖「服が違いますけど、これ、あなたですよね?…おかしいですよねえ、誘拐されたのは昨夜のはずなのに、何で今日こんなところ歩いてるんですか?」
愛「…」
聖「誘拐されてたのはあなたではなく、…ハナさん、ですよね?」

瓜田が突き落とされた映像が巻き戻ってゆき…

FAREWELL

聖『昨日の夜、ハナさんのSHOWCASEを見ていたところまでは、まあ、うん本当なんでしょう』

[ハナの自室]
(インターホンの音)
ハナ「はあーーい」

聖『ただ、瓜田さんが押し入ってきたと言うのは、あなたではなく、ハナさんの部屋だった』

玄関の鍵を外し、ドアを開けるハナ。
唐突に向こう側から伸びてくる腕。
強引に押さえこまれたハナは口にハンカチのようなものを当てられ…。

[解散ライブ会場]
サニサイへのフラワースタンド(活動初期のライブハウス・BASEMENTからです)、ファンからのメッセージ色紙がホールに置かれている会場。
聖『そして今日、会場入りしない、連絡もつかないハナさんに、みんなは当然騒ぎ出した』

小豆に呼ばれる愛。
小豆「ハナ、まだ来てないんだって」
愛「……小豆くん。私、最悪の妄想言っていい?」

[瓜田のマンション]
聖『そして、あなたとお仲間は、瓜田さんのマンションに向かった。場所は、ファンクラブの登録かなんかで確認できたんでしょう』

駆けつける二人は、敷地に大の字で倒れている瓜田を発見する。
何があった?とそこから建物を見上げる愛、おそらくは落ちたか。
となるとこの上が墜落箇所か、二人は階段を駆け上がり始める。

愛「ハナ!!」
駆けあがった先、2階と3階の間の踊り場。
そこにうずくまるハナがいました。どうした!?と駆けよる愛でしたが、ハナは泣きじゃくるだけ。
階段のその先を駆け上がった小豆は、瓜田の自室へ侵入。するとリビングか洋間と思しき箇所、部屋の壁と天井の至る所に卵パックが貼られた異様な部屋が。思わずその部屋が目に留まる小豆、そこへ愛がハナを宥めながら玄関へ連れてきました。
愛「そこ座って」
小豆「何があった、ハナ?」
ハナ「……段ボールに入れられて、連れて来られて…」
見ると玄関の脇には、洗濯機がまるまる一台入りそうな大きめの段ボールが。第7回で瓜田が台車に乗せて運んでいたのはまさにこれだったのです。
ハナ「目が覚めたら…」

[回想・瓜田の部屋(真相)]
ベッドの上で目を覚ましたハナ。
そこはこぎれいなベッドとクマのぬいぐるみ、加湿器が置かれたそれなりに快適そうな空間。

ただし部屋一面の卵パックにさえ目を瞑れば。

そこにドアの開閉音。
ハナ「!?」
瓜田「お腹すいたでしょ、そろそろ」
硬直するハナに、マグカップと目玉焼きを乗せたトレイ片手ににじり寄ってくる瓜田。
瓜田「ハナのためなら、えーんやこーら」
目玉焼きを口元に持っていく瓜田。(仕方なく?)それをひとくち口にするハナ。
瓜田「ハナさあ、いろいろやってたの、俺だってわかんなかった?」
ハナ「…?」
瓜田「(半笑いで)だってさあ!アカウント"スイカ"だもんね!?すぐわかるよね!?ヘヘッヘッヘッヘ」
ハナ「ごめんなさい…」
瓜田「……(唐突に声を荒げて)なんで気が付かないんだよぉ!!俺はハナのことずっと考えてたのにぃ!!不公平だろこんなの!!
瓜田が壁に当たり散らしたおかげで、貼られた卵パックが一枚剥がれ落ちます(小豆はこの状態の部屋を見たのです)。暴れる瓜田を目にし、恐怖に顔を歪めるハナ。そのハナにゆっくりと瓜田が振り向き…

瓜田「ハァ…わかんないかな?ハァハァ…俺がこういう風にされたら、怒るって…!」
ハナ「いやぁぁぁぁ!!
髪を掴もうとする瓜田をつい蹴り飛ばすハナ、そのまま部屋から脱兎のごとく抜け出します。
瓜田「おい!!待て!!!」
それを追う瓜田はやがてハナに追いつき、やがて彼女は…。

[(回想終わり)瓜田の部屋]
愛「ハナ、とりあえず服替えよう」
ハナ「なんでですか…?」
愛「いいから!早く!」
一部始終を聞いた愛、何かを思いついたようでパーカーを脱ぎだします。
おっとここでサービスシーンか!?と思いきや。
愛「ちょっと、小豆くん、向こう行ってて」
小豆「おうおうおう(把握できてない)」
愛「早く!!」
デスヨネー。そして押し出された先は監禁部屋。どんな心地だ小豆よ。
愛の声「小豆くん、着替え終わったらハナのこと連れてって。人目につかないように。出来る?」
小豆「・・ああ、たぶん」
そして着替え終了、パッと見は変わらないように見えるのですが、、あの白っぽいパーカーはハナのものだったのですね。
愛「じゃあハナ、ライブ行って?」
ハナ「愛さんは?」
愛「瓜田をあのままにしとくわけにはいかないでしょ、警察に事情を説明しないと」
ハナ「でも、それって私がやることですよね!?」
愛「それは私にでも出来る!でもライブは私には出来ない」
ハナ「…」
愛「だから行って。5人で歌えるの、今日が最後なんでしょ?みんなだってこれが最後だって楽しみにして、覚悟もして。あいつにみんなからラストライブ奪う権利なんてないでしょ!?
ハナは涙目になりながらも愛の言葉に耳を傾けています。
愛「私はさ、ライブを守りたいの。ハナのTOとして!
ハナ「(泣き出す)」
小豆「よっしゃ!ハナ、行こう!」
行って、と力強くハナの肩を叩く愛。
ハナ「すぐ来てくださいね、待ってますから!絶対来てくださいね、待ってますから!」
そしてハナと小豆が玄関から出たのを確認し、愛は電話をかけ始めます。
(※ここで例の監禁段ボールが画面に映るのですが、『株式会社ウォータメロ(ン)』と書かれています。まさかこの箱まで自作してきたのか瓜田よ、どれだけ手が込んでるんだ、変な意味で)

愛「…あ、すみませんあの、知人男性と揉めまして。突き落としてしまったんですけど」

ハナの服に着替えなりすまし、キャリーバッグを手にハナの部屋を出る愛(第1回の冒頭はここに繋がるわけです)。
そのままキャリーバッグを提げながら街を全速力で駆け抜けます。

[病院]
慌ただしく運ばれるストレッチャー。
男性医師A「事故?」
男性医師B「はい、マンションから転落したそうです」
女性医師「瓜田さーん?聞こえますかー?」
瓜田を乗せたストレッチャーは、そのまま処置室へと入っていきます。

[警察署・取調室(事件当初)]
入室を促される愛。中にいた聖護院刑事が迎え入れます。
聖「こちらに座ってください。…瓜田勝さんとこにいらした方、ということですよね。お二人はどのようなご関係で?」
愛「あの、"推し"ってわかりますか?」
聖「…推し?」
愛「『推薦』の"推"に、「し」って書いて、"推し"です。推薦したい人、応援したい人…」

[警察署・取調室(現在)]
聖「そして、ライブ会場に向かわせないように、話し続けた。…洋服を替えたのは、万が一目撃者が出た時に備えて、ということでしょうか。…あと、急に洋服に髪の毛を入れたのも、そうでしょう?」
愛「たとえ!…その写真で、私が着てる服がハナのところから出てきたとして、ハナがここにいたという証拠にはなりませんよね!?」
聖「いやあなたね、身代わりになるのも"犯人隠避"と言って立派な犯罪なんですよ!?分かってますか!?
愛「ハナは関係ありません、ここにはいませんでした!やったのは私です!」

苛立ちからか机を叩き立ちあがる聖護院。
そこに誰かがドアを叩く音が。
聖「どうぞ!」
部下「失礼します」
聖「どうした?」
部下「…話がしたいそうです」

部下が迎え入れたのは、

愛「………ハナ?」

そこにはステージ衣装のままのハナが。ライブは無事に終わったのでしょうか。
ハナ「あの、愛さんってチケット買ってますよね?」
歩み寄りおもむろに口を開くハナ。
愛「…いや、何で?」
ハナ「見せてもらっていいですか?」
(聖護院刑事は怪訝な顔のままですが、とりあえずは二人の動向を見守っているようです)
バッグの中からチケットを取り出すと、ハナはそれを手にし、半券をもぎります。
ハナ「チェキはちょっと撮れないんですけど…」
そう言ってハナは、"あのポーズ"で愛へ向けて両手を差し出しました。
ハナ「今までありがとうございました!」
愛「…」
ハナ「お礼を言えばキリがないですけど、私は愛さんと出会って、生まれ変われたような気がします」
愛「…(実に形容しがたい表情)」
ハナ「…あ、握手してくださいよ」
愛「(涙をぬぐって)…やだ、なんでこんなところに」
ハナ「や、私の鍵締めするのは、愛さんしかいないじゃないですか!
愛「だからそんなのやだって言って…!!」
こんな形で、こんなところで推しの握手なんかしたくない、そう言いたいのでしょうか。
そう声を荒げて立ち上がった愛の手をひしっと握るハナ。
(もろに腰回りが見えるのですがムチャクチャ細いです。ここに臓器やら何やら入っているわけがないと断言できるほど細いです)
ハナ「(涙声で)今までありがとうございました」
むをおおおお!ハナちゃんむをおおおお!!
手を離し、改めて聖護院の方に向き直るハナ。
ハナ「遅れて申し訳ありません。瓜田さんを突き落としたのは、私です」
愛「…(目を伏せる)」
聖「別室でうかがいましょう。こちらへ、どうぞ」
ハナ「はい」
そのまま別室へと向かうハナの後姿を見送った愛はやがて嗚咽をこらえきれず…。
机の上には、もぎられたチケットが残されたまま。

[警察署外]
辺りはすっかり夜になってしまっていました。
警察署外では小豆が立ち尽くしていました。おそらくハナを連れてきたのも彼でしょう。
正面入り口から出ようとしていた愛は彼の姿に気づき、近寄り…突き飛ばします。

愛「何で連れて来たの…?…もう少しで、もう少しでハナは無関係だって押し通せたのに!!」
小豆「…バカなのか?」
愛「…?」
小豆「もしオバハンがハナにおんなじことされたら、嬉しいのか?『あざっすゴチになります』って言えんのかよ!?」
愛「…」
小豆「言えるわけないだろ?だいたいそんな出まかせいつまでも通じるわけないだろ。警察バカにすんなよ」
ぐうの音も出ないほどの正論。いつもの小豆が戻ってきました。
小豆「ほら、行くよ。みんな待ってるから」
そう言ってさりげなく愛の手を掴んで歩き出そうとします。やだなにこのイケメン。
そして促され歩き始めたオバハン、このタイミングで泣き出してしまいます。
泣きじゃくりながら小豆の手を振りほどくのですが、イケメンTOはまた手を掴みます。このやりとりが実に微笑ましい…。

A World Of Pandemonium

[日常]
スマホ片手に行きかう人々。

『@snow1213yukino 1時間
近所で事件。
あんま報道されてないけど人が
突き落とされたみたい…。』
『@luck_flat777 24分
地下アイドルが拉致られて監禁!
怖すぎ_| ̄|○il||li』

通行人A「これ見た?」

『2019/07/03 03:13.02 ID:ZFd70yLn0
被害者はサニサイのハナ
→前にも騒動あり
→「サニサイ ハナ 裏の顔」で検索』

通行人B「見てるよーw」

『2019/07/04 09:21.53 ID:gKidFEM6S
【犯  人  特  定】
 瓜 田  勝 (36)
某リサイクルショップ店長』
『2019/07/04 11:24.19 ID:BfmKidy6J
監禁してた方が突き落とされたって、ややこしいw。
加害者だけど、ある意味被害者。自業自得か。
#瓜田勝 #サニサイ #ハナ #監禁事件 #ヲタの
末路 #サニサイ永眠のお知らせ #御愁傷様

…etc。

やがてネットの中だけでは収まらなくなってきたこの事件、遂に紙媒体(週刊誌)にまで記事が出る始末。

『元サニーサイドアップ・栗本ハナが監禁された事件。その舞台裏に迫る──』
『襲われた地下アイドル。原因はファンとの歪な"愛"』
『洗濯機に加湿器に…欲しいものはヲタ頼り』
『瓜田は他のヲタに対し強く嫉妬していたという。「一度ライブ会場から追い出されたことがありました。ハナちゃん推しが増えていた時期で…嫉妬したのか、ハナちゃんに"洗濯機使った?"と大声を出し始めて…」』
『ずっとハナのこと考えてたのに!!(←見出し)
現在も記憶が戻らない瓜田容疑者であるが、栗本を監禁した際、「なんで気づかないんだよ!おれはずっとハナのこと考えてたのに!」と歪んだ愛情を叫んでいたという。栗本は奇跡的に逃げ出し、追いかけてくる瓜田容疑者を突き飛ばした。これが原因で瓜田はマンションから転落したとのことだ(事実関係はいまだ謎に…)』

[TVのワイドショー番組?]
コメンテーター『ここまで大きな事件に発展するケースってのは稀であって、問題は瓜田容疑者の動機、にあると思うんですね。えーそれ次第では実刑は免れないかも知れないという事案だと思います』
<暴走 歪んだ愛の表現!?熱狂ヲタクの末路>と銘打たれたニュースを取り上げるコーナーでは、コメンテーターが解説しています。
コメンテーター「えー現在では退院はして、本格的な取り調べが始まったところですから。今後また明らかになることはたくさん増えてくると」
画面には事件の相関図が映し出されます。

            日ごろから信頼  
元サニーサイドアップ →→→→→→→→  栗本ハナのファン
栗本ハナ(19)   ←←←←←←←←  会社員女性Aさん(28)
            身代わり出頭

(↑だいたいこんな感じ(瓜田の欄は技術的な面で省きました。なおスマホでは正しく表示されません)

司会『この女性の身代わり出頭は、理解に苦しみますよねえ』
コメンテーター『そうなんですよね。この意味がちょっと分からなくて、あの、この女性も瓜田容疑者と同様に周りが見えなくなってるということは言えると思うんですよね』
週刊誌のカットが時折挟まるのですが、そこには愛のインスタのスクショと思しき画像、そしてチャトレのスクショまで掲載されています(目の部分に黒い棒線が入ってはいますが…)。ここでそれが来たか。
ともすれば醜く都合の悪い部分は隠され、美談だけで終わらせてしまうドラマもありますが、そこにもしっかり目を向ける丁寧な作り方。いやはや、脱帽です。
コメンテーター『で、考えが、たいへん幼稚だってこと』

[愛の自室]
ベッドに寝転がり、漫画を読みながらお菓子をぱくつく愛。
一見呑気そうに見えますが、しかし彼女をとりまく環境に大きな変化が訪れようとしていました。

是非もなし

[愛の職場・会議室]
男性が二人、愛たちの前に座っています。
上司?「何とか、お目こぼしいただくことは…」
人事「……」
押し黙る重役を前に、愛は「分かりました」と短く言い放ち、頭を下げました。
愛「では」
愛と上司?は席を立ち、再び頭を下げました。
なんとなく、このシーンが何を意味するのかは分かる気がします。
そして。

[愛の職場・エントランスホール]
菜摘「クビ!?」
愛「うん、さっき人事に言われた。大人しく従うなら、懲戒解雇じゃなくて自己都合退職にはしてやるって」
菜摘「でもそれっておかしくない?愛が何かやったわけじゃないじゃない」
愛「まあー…最後はチャトレを理由にされたよ。ハハッ」
ああそうね(遠い目)
真衣「(自分を見る菜摘の視線に気づき)わっ、私言ってないからね!?」
愛「わかってるよ!まあでも、いい機会だったと思って」
真衣「いい機会?」
愛「うん。正直私、社名でしか会社選ばなかったからさ。人の目ばっか気にして。だから、自分が何の仕事をしたいのか、この機会に考えてみようかと思って」
真衣・菜摘「…」
愛「あれぇー?なんかもしかして、憐れんでます?」
真衣・菜摘「いや?」
愛「ンハハハハ。…何かさあ、何だろう…私いま、すっごい清々しいんだよね。不思議なんだけど。…だから、大丈夫。心配しないで」
ふふっと笑う菜摘、その表情を見た真衣もつられたのか表情を崩します。
真衣「分かった」
愛「うん」
笑いあう同期。よかったよかった、なんだか修復したようですね、オバハン職を失うことになりましたけど。
菜摘「あっ、そうだ!ハナちゃんって子はどうしたの?」
愛「(手を叩いて)おととい、不起訴が決まりました~~!!」
喜ぶ同期s。第3回の時とかもう比較になりません。よかったギスギスしてない空間って。
愛「いやさー取り調べやら何やらで連絡とか控えて、って言われてたんだけど、今日久しぶりに会えるんだよ~みんなと」
みんな。それはつまり、サニサイヲタの面々でしょう。
愛「ハナの不起訴祝いにかこつけての、ヲタ飲み?」
菜摘「あっははは」
真衣「そういうことね」
愛「(手を叩いて)ヲタ飲み行く人?」

──間──

訊いてんじゃねえよw
愛「えー…みんな独身で、彼女なしだよ?」
椎葉さんもだよなw
真衣「それとこれとは…ねえ…」
愛「行こうよ~~!!」
だから誘うなオバハンww

最後のあいさつ

[ライブハウス・BASEMENT]
時は2019年7月18日(木)、懐かしのBASEMENT。
入口のボードには『サニーサイドアップ ハナちゃん不起訴祝い 今夜だけ!会員限定2000円(食べ飲み放題)』と書かれています。なんだこれ俺も混ぜてくれ。
バーカウンターには懐かしい前髪呪縛時代のハナちゃんの写真が加工されたボードが。こんな時代があったなあ(←古参)。
「どうも~久しぶり~」と軽やかにオバハン参上、サニサイヲタが喜んで出迎えます。
愛「ねーBASEMENT貸切って気合い入り過ぎじゃない?」
カッキー「ハナちゃんのトップヲタが何言ってるんですかぁ、盛大な方がいいに決まってます!」
愛「ま~ね~」
ヨネ「それハナちゃんにですか?」
愛「あ、これ?そう。不起訴祝いの~?加湿器~~!!」
それはいつか配信で欲しいと言っていた加湿器でしょうか。そんなやりとりをしていると椎葉さんもやって来ます。
しかし…

カッキー「あれ?ハナちゃんは?一緒じゃないんですか?」
椎葉「(帽子をとって)それが…ハナちゃんは来ないことになりまして」
愛「?」
ヨネ「え、なんでですか?」
椎葉「来ちゃうと決心にぶりそうだから、って」
愛「…いやいやいや、決心にぶるってどういうことですか」
椎葉「ハナちゃんは以後、皆さんとの連絡いっさい断つそうです」
愛「…なんでですか」
ここで小豆がようやく口を開きます。
小豆「オバハンのためなんじゃねえのか?」
愛「…?」
小豆「瓜田の話ってさ、これからも続くじゃん。捕まったってそのうち出てくるわけでさ。反省して、人が変わってくれりゃあいいけど、そうなるとは限らねえし。その時に、自分とはできるだけ無関係な方がいいって思ったんじゃねえのかなあ、ハナ的に
愛「ちょっと、ハナにDM送ってみます」
スマホを取り出しツイッターを開く愛。しかし、

なまたま@8787
このアカウントは存在しません。

愛「ハナの…これ…ちょ…」

ハナの裏垢は削除されていました。サニサイヲタは…(当然ながら)既に事情を知っていたのか、黙って愛を見ているだけ。
無理もありません。あの日、ライブを観ていないのは愛だけです。

そこに小松くんがやって来ます。
小松「小豆さん!」
小豆「お、いける?」
小松「はい、大丈夫かと」

愛はまだスマホを見つめて固まったままでしたが。

小豆「おし、じゃ、まずは見ちゃいますか!」
椎葉「そうですね、その方がハナちゃんの気持ちも分かるでしょうし」
ヨネ「いきますか!」
小豆「ウィィ!!」
そうしてまだフリーズ中の愛を強制連行していきました。
愛「待って待って待って!ハナの、ハナ、ハナは…!?」

その連行先とは。
小豆「はい、真ん中まで~!」
あの頃のライブステージ。ステージにはスクリーンが設置されています。
小豆「オバハン、ライブ、観てないだろ?あ、小松、途中から再生して?あの、例のあの辺」
小松「わかりました(PCを操作する)」
「じゃあ行くか!」「行きましょか!」口々に気合を入れて腰を下ろすヲタク達。
小松「じゃあ、ちょっと前から流します」
小豆「ありがとー」

それは、ラストライブの模様の鑑賞会でした。

ギッチリ詰まったハコの中、「おちゃのこサニサイ」でフロアが熱狂に包まれています。
拍手で讃える椎葉さん。
しっかり撮ってる小松くん。
何やら吠えるヨネさん。
ヲタクのラストライブにかける様々な情熱が交錯します。
そしてその様子を見ながら再び沸いているサニサイヲタ。いいですねー。

花梨『え~~~はい、と言うことで、ライブもたけなわ?なんですけど。こちらご用意いたしました!』
ヲタク『ウオオオオーーー』

花梨は何やら模造紙らしきものを広げます。
そこには。

凛怜『アイドルの主張!<ライブの真ん中あたりで愛をさけんでみる!>』
ヲタク『ウオオオオーーー』
花梨『で、もう、こちらで、好きなことを叫んで、その理由をね、カミングアウトしていただきたいと思います!』
ヲタク『おおーーーー!?』
凛怜『えーーとじゃあ、見本やって』
花梨『見本?私?』
凛怜『うん』
ナイス誘導w そしてすぐさま乗る花梨、盛り上がるフロア。さすがはリーダーです。
そしてステージに運ばれてきた、高さ10cmほどの台。指揮台?と呼べばいいのでしょうか。
さてリーダー、満を持して壇上へ上がります。

花梨『えーー、行くよ?じゃあ。


好きだーーーーー!!

ヲタク『『オレモーーーーー!!!』』

満足そうにその様子を眺めている小豆(現在)。

花梨『ありがとうございます。私は、三度の飯よりライブが好きだっ!…本当にもう、生まれた頃から目立ちたがり屋で、これでもか、これでもかってくらい、でっかい声で、泣いてたみたいです』
その様子を涙を流しながら直視している小豆(過去)。そして鑑賞会でその様子を見てどこからか笑い声が。あの小豆、こんな泣いてたんですねw
花梨『だから私は、死ぬまで歌ってるんだと思います!…また、こんな形で、皆さんとお会いできたら!できると、信じております!ありがとうございます!!』

フロア、拍手。
小豆(男泣き)、パンケチャ。
実に男らしい、いやヲタクらしい。
そして現在の時間軸でもまた拍手。愛もその様子に表情を緩めています。

続いては。
詩織『あの、ちゃんと言えなかったけど、ずっとずっと好きでした』
ヲタク『オレモー』
詩織『目玉焼き~~~!!』
ヲタク『エェーーーーー』
詩織『最初はオムレツ派で、目玉焼きとか意味わかんないとか思ってて。でも、サニサイ入って黄身黄身歌ってるヤツがこれじゃダメだって、食べるようになったら、今では大好きになりました』
うん、うんと頷きながらスクリーンを見つめる小松くんが印象的です。
詩織『あの、しおは、誰かのために頑張るとか、そういうことしたことなくて。そういうことが、楽しいって知らなくて(涙声)。だから、、』
ヲタク『ナカナイデーー』
詩織『…大好きだよ、サニサイ!フォーエバー!』

フロア、拍手。
小松くん、涙ぐんで鼻をかむ(現在)。

三番手、凛様です。
凛怜『いきます!(前へ移動)…スタッフーー!
カッキー「はーい」
小豆「いやカッキーカッキー違うから違うから」
誰かが「凛様、古いw」と突っ込みを入れています。
PA卓のスタッフが手を振っていますがライブハウスの人なのでしょうか。
凛怜『歌を、くれる人がいて。音を、フリを、灯りをくれる人がいて。やっと、私はここに立てます
涙ぐみながら推しを見据えるカッキー(過去)。
凛怜『見えないとこで、支えてくれる人がいること、無自覚でした。(メンバーを一度振り返って)私たちを、輝かせてくれて!ありがとうございました!!
笑顔で礼する凛怜。
その様を改めて拍手しながら見つめるカッキー(現在)でした。

四番手は元気印・のりたまちゃん。
紀子『愛してるよー!みんなー!!』
ヲタク『オレモーー』
ヨネ『おれもおおおおおお!!!(号泣)
紀子『私は、すんごい普通で、ちょっと踊れるだけの女子でした。』
ヨネ『うぉんなごとぬぁいよおおおお(訳:そんなことないよ)!!!
小豆「何言ってるかわかんないよ~w」←ここは本当にそう感じましたww
紀子『ありがとう~。でもそう、そうやって、そうやってみんなが私を支えてくれたから、私は小さいころから夢だった、アイドルになることが出来ました。私がサニサイの"のりたま"になれたのは、みんなのおかげです』
またも涙ぐみながら推しの言葉に頷くヨネさん(現在)。
紀子『私の初恋は、みんなでした!(涙をこらえて)みんな大好きーーー!!』
ヨネ『俺には最後の恋だったーーーー!!
改めてまた涙し、タオルで涙をぬぐうヨネさん(現在)。純粋だなあこの人。好き。

そしてのりたまちゃんに背中を押されるようにして最後に壇に上がったのは。

ハナ『リーダー』
花梨『はい、じゃあ最後はハナ、お願いします』

ハナ『コォォォォォォル!!』
なっ何ぞ!?何ぞ!!?
ハナ『…アンド・レスポンスです』
ヲタク『www』
ハナ『あの、あの…私、ここで、すごい嫌われ者だったんです。すんごい、ヤなヤツで。声かけても、返事なんてしてもらえないし。誰かに、名前呼ばれることもなくて』
見つめる愛、既に涙目です。
ハナ『だからここに来て、名前コールしてもらえるとか、レスできる!とか、…そういうことがもう、いちいち嬉しくて。…私は、さびしくてアイドルになったヤツだから。だからきっと、もう、こうして、みなさんにお目にかかることは…ないと思います。もう満たされちゃったから』
そう言って作り笑いするハナは…泣いていました。
その様子を見て泣き崩れる愛。
ハナ『だけど、これからは、皆さんが私に教えてくれたみたいに、『推すって愛だ』って。今度は、私が、誰かをそう感じさせるような、そういう生き方が出来たらいいなって、思います。…ありがとうございました!栗本ハナは、幸せでした!!』
一礼するハナ。
フロアは万雷の拍手。そして鑑賞会も、また拍手。
花梨『では、次の曲に行きたいと思います』
愛はこぼれる涙もそのままにスクリーンを凝視しています。

花梨『それでは、聴いてください。<ただいまミライ>』
曲に合わせ、肩を組んで歌声に身を任せるヲタク。
そしてそれは鑑賞会でも、再び同じようなことが。
黄色のサイリウムが発動し、肩を組んで5人のステージを見つめています。

♪泣いたり つまづいたり 落ち込むこともあるけど
立ち向かう 勇気くれるのはいつもの場所があるから
今日も 明日も 時間は刻々と(刻々と)
スクロールされて Jump 過ぎていくよ
でもね でもね この瞬間は 永遠だよね♪

涙しながらも、仲間の心や推しの言葉に笑顔になったり。
願わくばこの瞬間は、ずっと記憶の中で。
ああ、そうなんです、きっと。
だから私は、推しました。

ただいまミライ

──1年後──

[椎葉法律事務所]
椎葉「こんな封筒が、届きましたよ」
愛「ありがとうございます」
あれから、愛は椎葉さんの事務所で働いているようです。捨てる神あれば、拾う神ありですね…
その封筒には可愛らしい細やかなデコレーションと、『栗本ハナ』の署名が。
愛「ああ…貸してたお金全部返って来ちゃいました」
椎葉「遠い街のどこかで、ハッピーウェディングクリスマスですよ」
愛「…はい。あ、じゃあ、私ちょっと、お先に失礼します」
そう言って上着を手に取り帰り支度を始めます。
愛「じゃあ、お疲れ様でした」
椎葉「お疲れ様でした」
愛「お疲れ様です」
愛の帰る様子を笑顔で見つめ、椎葉さんはふと彼女のデスクに視線を移します。
そこには、初めて愛がハナと出会ったあの日のチェキが、スタンドに入れられ飾られていました。

[街]
こんにちはー!と移動販売車の人に挨拶する愛。
販売員の男性がにこやかに挨拶を返すのですが…問題はそこではなく、車に貼られた写真とサイン。
サインと写真の主は…"那須凛怜"。
どうやら念願のアナウンサーの夢は叶ったようです。

[どこかのオフィス]
スマホでインスタ?を眺めている小豆。
おそらくブリザガプロデュースのユニットのメンバーとなった花梨(アカウント名はkarin_ERULIAF)。
なのですが…そこには花梨、詩織、紀子の3ショット。
自撮りをしている3人のスケブには"のりしおぽてち"と描かれています。
さらに「#昔の仲間  #サニサイ #てか告知かよ!!!!」の更に思わせぶりなタグも。
仲いいなあ、とそれを見て呟く小豆でしたが、そこにクライアントが。

[ライブハウス]
おはようございまーーすとライブハウスに入っていく愛。え、客として?
ヨネ「愛さん、MARINちゃんが相談したいって」
アイドルなのでしょうかこの子は…ってちょ!ヨネ!Tシャツどピンクになっとるぞ!!w
おまけになんだそのTシャツ、"フロスティのダンス"っておいおいおいおいw

(↑元ネタは間違いなくこちらです)
愛「あ、どしたの?」
MARIN「(スマホを出して)こんな下着みたいな衣装着るように運営に言われたんですけどぉ」
カッキー「(スマホを覗き見て)えぇーー何それ!?【※聴き取れず】さんが着るってこと?いやそれはダメですよ!」
ヨネ「でしょ!?俺達のフロスティを何だと思ってるの!」
ってかカッキーお前もフロのスヲタかよww
愛「(Tシャツを着ながら)意に反することをやらなきゃいけない義務はないから。運営さんにちゃんと話してみて」
MARIN「はいっ」
ふふっと笑う愛、なんと着ているのはBASEMENTのTシャツ!バイトなのか好意でスタッフやってるのか。もう完全にアイドル現場のお母さんですw
そこに相変わらずカメラ片手に小松くんもやって来ます。
小松「愛さーん、ジンジャーエールお願いします」
愛「あっ、またご新規さん連れて来たの~?」
小松「ヨシくんっていいます」
愛「ヨシくん?ど~も~(礼)」
ヨシくんも「どうもっす」一例を返します。いい奴やんけ。

[どこかのオフィス]
クライアントと名刺交換をしている小豆。
小豆「フリーでITコンサルをやってる小豆沢と申します、宜しくお願いします」
女性「初めまして、松田と申します」
小豆「小豆沢と申します、宜しくお願いします」
先方「どうぞ、おかけください。すいません暑い中来てもらっちゃって~。先日、電話でお伝えした通り、うちのシステムを更新することになっちゃって…」
ヲタク強いから大丈夫です…って小豆、女性の名刺を見つめています。

"NCom Net 松田杏子"

小豆「あの…松田杏子さん?」
松田「はい?」

それはもしかしたら、あの松田杏子?

小豆「以前、どこかでお会いしましたっけ?」
松田「いや…お会いしてないと思いますけど」
小豆「ああ…」

[BASEMENT]
お待たせしました~、と客にドリンクを渡す愛。
ふとカウンター上に置いたスマホにLINEの新着が来たようです。

(ここで一瞬映るLINEトーク画面の内容を参考までに↓)

「夕飯なんかある?」
「カレーなら」
「バカなのか?」
「三日連続なんだけど」
「なら自分で買ってきな」

(そういうことです)
小豆『新しいクライアント、まさかの松田杏子さん!!!』
小豆『しかも、こんなの入手!』

それを見て笑みがこぼれる愛。
添付されていた画像には、松田杏子と仲良く並んでいる一人の女性の姿が。

笑顔で彼女と並ぶその女性は、栗本ハナその人でした。

-THE END-

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