祝TVアニメ化「推しが武道館いってくれたら死ぬ」に寄せて -紹介編-

まずはこちらをご覧いただきたい。

昨今ではやたらと長いタイトルの作品が多くなったように思えます。
作品のタイトルは大事です。
「告白」
「少女」
とか最短2文字くらいで話の内容を判断することが出来る最大級の見出しです。

昨今では、
「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」
「やはり俺の青春ラブコメは間違っている」
などなど、長くなる傾向があります。
短いタイトルにその作品とは何かを凝縮しきるのは限界があるのか、
はたまたヤング層の文化の流行なのか。
とは言え一昔前に、

「博士の異常な愛情 また私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」

というB'z真っ青の長い長いタイトルが付いた映画(邦題ですが)も存在したのも事実。
なんか話の方向性がずれて来てますね。

さてもさても。
タイトルとはまず見る者、見ようとする者に興味を持たせるようにするためのインパクト材料。
それは今も昔も変わりません。
そして、最近またも目を引くようなタイトルの作品が知名度を上げてきているようです。

その名も、

「推しが武道館いってくれたら死ぬ」

電子書籍はこちら

──死──

なんというインパクトに満ちたタイトルでしょう。
そしてそんな死の願望、到底理解できないでしょう。
ドルヲタ(※アイドルヲタク、縮めてドルヲタ)でない限りは。

この物語の舞台は岡山県。
県内某所のビル地下の"劇場"で定期公演を行いながら細々と活動をしている、文字通りの地下アイドル「Cham Jam(以下ちゃむ)」
そして全体の人数は少ないながらも足しげく劇場に通い、時には外部イベント出演の場所にも通う、彼女らのファン(以下ヲタク)。
これら大きく分けて二つの存在からなる群像劇です。

何のために、ヲタクはアイドルを追いかけるのか。

自分の好きなアイドルを応援しているから。
推し(ドルヲタの世界では一般的に、好きな相手を指す言葉)がいるから。
推しがそこ(ステージ)にいて輝いているから。
その姿をこの目で見たいから。

なんだかんだと理由は人それぞれでしょうが、詰まるところはそこ、「応援」に行き着くのだろうと思います。
応援といっても、「フレーフレー○○!」という文字通りのエールを送ることではない。
客が多かろうが少なかろうが、彼女らはステージに立つ。
ヲタクは声を限りに推しの名前を呼び、応援し続ける、いつか推したちが夢の舞台に立つことを願いながら。
勿論夢見ているのはヲタクたちだけではなく、アイドルも然り。
有名になりたい。
いつかもっと大きい場所で。
たくさんの人に見てもらいたい──。
それらの夢を信じてステージに立ち続けるアイドルの力になれる手段は、「ライブを見に行って楽しむこと」に他ならない。
それがドルヲタの「応援」。

もちろんこれはアイドル側から見ても「あの人来てくれている!」と喜んでくれるのならまさにウィンウィン。
この辺はアイドル側に立ってみないと分からない気持ちなのですが、もしそうならこちらとしては何とも嬉しい話ではないですか。
この心の距離の近さは地下アイドルの世界ならではのものと言えます。

さて、ドルヲタにはもうひとつの応援方法があります。
それはいわゆる"接触"と呼ばれるもので、この業界に馴染みのない方でも
「いわゆるAKBででいう"握手会"ですよ」と言われれば何となく察しがつくかと思います。
どこの地下アイドル界においてもほぼほぼの共通システムは、
「ヲタクがお金を払ってアイドルと握手しつつお話をする」。
基本ライブステージの後でそれは行われます。

(※ファンの絶対数の桁が違うことにより、握手会をライブ会場ではない場所に設けなければならない地上アイドルの接触とは、ここが決定的に異なります)

「推し武道」に於いての"接触"の方法は、ちゃむの楽曲CD(一枚1000円と推察される)に付随している"握手券"。
ヲタクに与えられた時間は、握手券一枚につきたったの5秒。
もちろんCDを複数枚購入することにより握手券の枚数は増え、その分長い時間の接触が可能になります。
ヲタクは同じCDであろうとも推しへの好意や感謝の言葉を伝えるため、CDを大量購入する(この行為は俗に"積む"と呼ばれる)。

全くの部外の者から見れば、ただの刹那的な浪費。
しかしそれは、夢見る者と支える者とが直接言葉を交わすことが出来る唯一の手段。

ヲタクは、推しへ愛と感謝を伝えたいのです。
ライトの下できらめく彼女たちからステージでもらったあらゆるプラスの感情を、熨斗つけて丁寧に。
たとえそれが短い時間でも。

と、ここまで書いてきましたが、
実際にアイドル現場へ行ってみないとこの感覚は理解できないのではないかと思います。
ましてステージを見て「あの子素敵!応援したい!」という感情が芽生えないと。

そんなわけで。
アイドル現場を見たことがない方へ。
無銭(※観覧無料のライブの事)でもいいのです、
どこかのアイドルさんのライブに触れるきっかけが訪れますように。
そして願わくば、「どうして今まで出会わなかったんだ!」という感情にも出会えますように。

そうして現場で何かの感情が芽生えてから、この作品に触れてみてください。

「分かる」

きっと↑こう呟くはずですから。
たぶん。

(※この記事において、特定のグループまたはファン層の行動などを、揶揄したり貶めたりするわけではないことをご理解いただきたく存じます)

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