雷都少女・宮﨑紅波ソロ曲「等身大の可能性」について真面目に解説してしまった

「決して伝わらない細かすぎるモノマネ選手権」
などというタイトルのモノマネ企画をたまに見ます。
「一部にしかウケない」と評する人もいれば、
「いいねえ作品への愛が伝わるよ」と評する人もいます。
当然それは作品を見る者(つまり我々)が、元ネタとなる作品について分かっている事が前提なのですが。僕自身はああいったものは元ネタへの愛に溢れる真面目な芸だと思っています。ただ入れ込み過ぎるあまり万人には伝わりにくいものだと思っています。
まあそんな感じで、分かる者にしか分かることのない作品レビューをば、今回は(毎回かもしれません)いたしましょう。

強引なマクラから閑話休題。

栃木県に、雷都少女(ライトガール)というアイドルがおりまして。

(※ヘッダー画像右:町田愛花(15歳)、ヘッダー画像左:宮﨑紅波(21歳))
所属事務所のHappy Strike自ら「栃木系ボーカルダンスユニット」と称したこのユニット。
ほぼ全ての楽曲を手掛ける花崎右門さんによるオリジナルレパートリーは10曲を超え、現在もうすぐ活動三年目に差し掛かろうかとしているところであrああもうめんどくせえや、早い話が私個人のお気に入りであり、応援しているアイドルユニットなのです。
え?可愛い?何言ってるんですか当然じゃないですかそれは。

https://www.youtube.com/watch?v=MiNJERpnAEY
(↑1st EP表題曲「For Your Love」)

https://www.youtube.com/watch?v=BfLlFTK6mho
(4th EP表題曲「Emergency Code」)

(注:動画は楽曲披露前のものです。またこれら動画のヴォーカル部分はおそらく仮歌と思われます)
これらのように、非常に耳馴染みのよい90年代のJ-POPテイストなどを盛り込んだテンポある楽曲がウリのグループなのです。
え?可愛い?そうなんですよ。ええ。

僕が初めて彼女らを見たのは、おそらく2016年6月。新潟のcana÷biss、乙女座長☆銀河団を擁するmusic trace inc.主催のイベント「CatchUp」で見たのが初めてで。なかなかいい楽曲を持っているなと思い始め、気がついたらはまっていました。ここまでにそこそこの時間がかかりましたが。
最近ではもろユーロビートの「Magical Japan Baby Love」というキラーチューンが生まれ、ライブもますます盛り上がりを生んでいるのですが。

今年6月、メンバーの宮﨑紅波さんが21歳の誕生日を迎え、その生誕の際にオリジナルソロ曲が製作されました。
それがこの「等身大の可能性」。

https://www.youtube.com/watch?v=icybSnF2VWM


僕がその曲に触れたのは2019年6月末、cana÷bissのあやちむ生誕(新潟開催)において、雷都少女ターンにおいての際。"ミニくれは生誕"と称し、持ち時間は40分近く。その時にソロ曲を披露したのですが…
それまでどこか懐かしさを感じる曲調が並んでいた雷都少女でしたが、この曲がそれらをぶっちぎってさらに時代を逆行したレトロな作風であることに度肝を抜かれたのです。
彼女、ヴォーカルに関してはかなりのポテンシャルを持っていると感じていたのですが、それをこういう方面で持ってきたか!ほおおーーー…と立ち尽くして見ていたんです。

どういう曲調か、何系なのか。そんなのは専門家でないので詳しくは語れません。
ただ驚いた。驚いたというかシブイ。5分間徹頭徹尾渋すぎませんか。
この曲をね、紅波さんが身を削るかのようにして歌うんですよ。こんな歌い方するんだマジか…って。
で、曲はと言えば。知らない人が聞いたら2時間サスペンスのエンディング曲かと思うかもしれません。いえ褒め言葉ですよ。本当に。でなきゃこんなズラズラと書かないですって。

再生ボタンを押した途端に広がる、青と黒の夜の街を交錯するライトの光。喧騒の音。むっとする熱気の中を行きかう人々。
その中で生きる一人の女性の姿…みたいな。ありがちな風景が浮かぶんですけど、何回も聴いていくとどんどんその世界が広がっていって、陽が傾いてくるとふと口ずさんでしまっているような。そこまではまってしまったこの一曲。
んでこれがあまりにも気に入って、弾き語りできないものかとコードを拾っていたら、作詞・作曲をしたおのしうさんに引用ツイされたりとまあ驚くやら有難いやら。
(実際のコードはテンションノートやら5度抜きやらが入ってかなり複雑ゆえ凡人の力では完コピは不能でした)
とまあそんだけ入れ込んだこの曲、もう一度書きますがアイドルのソロ曲です。いやいやマジか。こんなド渋い曲をアイドルに歌わせるのかと。

この曲、曲が美しいのもさることながら、歌詞の方にも注目してみるといろいろ見えてくるのです(全部紹介するのもなんなので部分的)。

「夜の隙間に 孤独を抱いて
産声を上げた意味を問う」
よくよく考えるとこの曲そのものが21歳の生誕に合わせ作られた曲だということをここで再認識します。

「幸せなのは 分かっているけど
なぜこんなに溢れ出す涙」
そう言えば彼女涙もろいとこあるよなあ、なんて。そのまんま彼女を投影しているのかもな、なんて思ってしまうわけなんですよ。

そして2番の後、この曲の最大の盛り上がりであるラスサビへ向けての橋にあたるCメロ。

「この世の平和なんて
私の胸の中じゃ抱え切れない大きな夢だから
せめて抱きしめるだけ
この両手なら出来る」

この世界は広く複雑すぎて、自分の身の回りはおろかワールドワイドクラスで何が起きてどう進んでいるのかなどは誰も把握することはできない。
自分の手にはあり余りすぎる膨大な事象。その中のほんの一握りを職や生活として選び、地上で目を覚まし一日の中に身を投じる。
それは聴き手も、この歌い手ももちろん同じ。
そんな世の中で自分にできることはと言えば。

Cメロはこう締め括られます。
──アナタだけは笑顔にするから──

そう、自分を支持・応援してくれる人に笑顔を届け笑顔にすること。
自分にはそれしかできない。だがそれができる。その手段がある。
みんなまとめて幸せにしてやるぜ!という大言壮語ではなく、せめて自分の目の前の人にだけは…と振り絞るように歌うのです。
(このあたり、Mr.Childrenの「タガタメ」をなんとなく連想してしまったのです。あれも"結局自分にできることは目の前の存在を愛することなのだ"ということを歌っていました)
それがまさにタイトルの「等身大の可能性」を指し示しています。これからどう活動の幅が広がるかは分からないが、「私にできることは…」とあえてその内容を"笑顔にするから"と。それがあのマイナーコードの曲調に乗るのです。
そのスケールは決して大きくなく、ありがちに聞こえるかもしれないけれどその真摯さが伝わってくる。一人の人間にできることは押し並べてそうなのかも知れません。

そして彼女は今日も歌う。
「高鳴る鼓動が 道のない明日を描くの
あなたに会いたくて
走り出してた 愛の導く方へ」
先に何が待ち受けているのか知るものはいない。しかし、たとえ何が起ころうとも、愛をくれる人──支援してくれるファン──がいるならこの命を燃やせる。生きる力になる。私は、今日も生きていける。

…これが、5分間の中で繰り広げられる儚くも強い意志を持とうとする人間のドラマ。
生誕記念の曲であり、歌詞をじっくり見るとタイトルの意味を理解することができたり、しっかりファンへ向けてのメッセージもあり…と様々なエッセンスをその5分近いこの曲に非常に丁寧に盛り込んであって、うむむこれはずるいわぁ…ともう何回聴いたことか。ある程度年齢がいっているからか←、この曲は実に刺さるのです。
また、歌詞をよく見ると彼女の名前である「紅」「波」という文字が分散されながらもしっかり記されていて、思わず「おおお」と唸ってしまう仕掛けもあり。
これを丁寧と言わずして何と言えばいいのか。

と、こんな感じでものすごく丁寧なソロ曲を用意する雷都少女運営、次は12月に誕生日を迎える愛花さんのソロ曲もきっと出来て、そしてまたいいものができるのだろう…と勝手に期待してやまない僕がいます。ありますよね?出来てきますよね?すんごいのがきっと。すいません勝手な願望でした。

とても丁寧に作品を作る雷都少女、これからも目が離せないのです。

いずれ楽曲レビューも全曲やりたいものです。出会ってよかった。

(2019.07.30 加筆修正しました)

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