WF-1000XM4のマスク着用時に発生する誤動作について

WF-1000XM4はSONYのワイヤレスイヤホンです.かなり高性能で,私は普段,実験室の騒がしい装置の音を消すために,また,装着しながら外部音を聞くこともできるため,高級耳栓として愛用しています.

先代のXM3も所持しており,それは見下ろす角度の時にイヤホンが外れることが多かったのですが,XM4ではそのような問題もなく,ほぼ完璧な耳栓となっています.

しかし,このところ誤動作することがたまにあり,原因もよくわからずに困っていました.

具体的には,タッチセンサに触れていないにも関わらず,勝手にセンサがタッチされたと判定してモードが変わってしまうという動作です.

何回か発生し,しばらくすると治まり,また何の前触れもなく唐突に発生しており,どうにも面倒だなと思っていたのですが,この度,その原因がわかりました.

どうやらマスク着用時にマスク横からイヤホン側に漏れる呼気により誤動作していたようです.これは先日,息を吐き出す動作に合わせて誤動作が起きていることを発見し,明らかになりました.

もしかすると他に原因があるかもしれませんが,今のところ,これが原因だとして対応すると誤動作が発生しないことから,この問題は一応解決してはいます.

具体的な誤動作の仕組みは以下の通りです.

・マスクが正しく装着されていない時,呼気はマスク全面の不織布を通してではなく,マスクと顔面の間にある隙間を通り外部に排気される.

・呼気がマスク横からイヤホン側に排気された場合,呼気がイヤホンに当たる.

・イヤホンはタッチセンサを備えており,タッチセンサに呼気が当たる.

・タッチセンサは静電容量の変化によりタッチの有無を判別するが,呼気に含まれる水分はタッチセンサの静電容量を変化させる.

・静電容量が変化するとタッチセンサがタッチされたと判断され,そのセンサに割り当てられた動作が実行される.

・タッチしていないのにイヤホンの機能が動作し,誤動作となる.

以上の通りだと思われます.タッチセンサに水分を含んだ呼気が当たることで誤動作が引き起こされている,ということになります.

この問題はユーザとしてはマスクを正しく装着する以外には,この問題に対応したソフトウェアアップデートを待つしかないでしょう.ただマスクを正しく付けていれば起こらない,もしくはマスクを付けていない時には発生しないので,対応はできます.

ソフトウェアアップデートがあるとすれば,呼気がイヤホンに当たる際に発生する風切り音を利用する処理を入れるか,もしくは単純にタッチセンサのタッチ判定の閾値を変化させることだろうと思われます.

このあたりは実機に対して適切な環境で実験を行い,その時のセンサの出力を見ることができればよいのですが,内部へのアクセスが困難であるため,ユーザとしてはできることが少ないでしょう.

何にせよ,マスクを正しく付けていれば発生しない問題なのですが,これは逆に,マスクの装着具合を判断することができる,とも言えます.

今のご時世,誰もがマスクを付けていますが,その装着方法は人により様々です.さらに骨格や肉付きは人により違うため,大量生産されている同一形状のマスクでは全ての人に正しく装着させることは困難であるでしょう.

ここでイヤホンのタッチセンサを,呼気をモニタする用途に使用すれば,マスクのイヤホン方向への呼気の量,つまりはイヤホン方向への隙間がわかると思われます.

風切り音を利用した呼気のモニタもできそうですが,風切り音は屋外では頻繁に発生するため,タッチセンサを組み合わせることで,より正確なモニタができそうです.

この用途であれば今回のイヤホンに限らず,タッチセンサを備えているイヤホン全てに応用できるとも思われます.

他にも,呼気が判別できるのであれば,1分間に何回呼吸が行われているか,というのも把握できそうです.医療分野で呼吸回数をモニタする必要がある場合や,運動時の呼吸回数把握にも使用できそうです.

すべてマスクを隙間ありで付けていればの話ですが.


これらの機能を確認したり,実装したりできれば楽しそうですが,外部へは公開されていなさそうであり,今後も公開されることはないでしょうが,個人でもSpresenseを使用すれば実験できるかもしれません.

SpresenseはSonyが開発し,販売,公開しているマイコンボードです.その辺のマイコンに比べ,かなり高機能で,特にオーディオ周りの作り込みが特徴ではないかと思います.

ADC,DACはハイレゾ対応のようで,ハイレゾの是非はともかく,高機能なADC,DACが使用できると考えると他にはなかなか無い,良い環境が整っているのではないでしょうか.

マイク入力に対してもボード上にピンが用意されていたはずなので,Spresenseとマイク,さらに静電容量センサを利用すれば,今回のイヤホンと同じ環境を作り出すことができます.

今後,時間がある時に触っていきたいなと考えています.

以上,マスク着用時のイヤホン誤動作についてでした.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?