環境法令 その8(地球環境分野-5)

気がつけば10月も下旬に入りました。コップに少し水を入れ今朝食べたブドウの種を入れて発芽するか実験しようとすると、6歳の娘に「そんなん土もないのに出えへんやろ」と笑われました。
娘の思い込みを覆せるか楽しみです。

今回はオゾン層の保護・フロンガスの規制ついて触れていきます。


まずは、2001年に制定されたフロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(以下「フロン排出抑制法」)についてです。(2001年当時の法律名は「フロン回収・破壊法」2013年に全面改正され法律名も変更)

フロン」は、人類が発明した自然界には存在しない人工物質です。
1928年、冷蔵庫などの冷媒に理想的な気体としてフロンは開発されました。不燃性、化学的に安定、液化しやすいという優れた特徴は冷媒として重宝されました。
さらに、油を溶かし、蒸発しやすく、人体に毒性がないという性質をもつフロンは、断熱材やクッションの発泡剤、半導体や精密部品の洗浄剤、スプレーの噴射剤(エアゾール)など様々な用途に活用され、1960年代以降、先進国を中心に爆発的に消費されるようになりました。(経済産業省HPより)

しかし、フロンは大気中に放出されると、拡散・上昇し、成層圏に到達します。そこで紫外線により分解され放出された塩素原子が触媒となり連鎖的・継続的に大量のオゾンが破壊されます。

1970年代の終わり頃から南極上空でオゾンホール(オゾン層破壊)が観測され始めました。そして1980年代から急激に拡大し、2000年には過去最大規模を記録しました。


フロン類にはオゾン層を破壊する特定フロン(CFC)、オゾン層破壊性の比較的小さい特定フロン(HCFC)、オゾン層破壊効果はないが温室効果が大きい代替フロン(HFC)に大別されます。


オゾン層の保護のため、
1985年にウィーン条約(オゾン層の変化により生じる悪影響から人の健康及び環境を保護する研究や観測に協力することなどを規定)が、

1987年にはモントリオール議定書(オゾン層破壊物質の全廃スケジュールを設定し、消費及び貿易の規制、最新の科学・情報に基づく規制措置の評価を実施することなどを定めた)が採択されました。

その後規制強化が順じ行われ、先進国では特定フロン(CFC)の生産を1996年に全廃(途上では2010年)、同じく特定フロン(HCFC)も2020年に全廃(途上国2030年)することとなりました。

日本では1988年特定物質等の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(以下「オゾン層保護法」)が制定され、特定フロンの製造の規制や排出の抑制措置が定められました。

そして2001年にはフロン回収・破壊法が定められ、同法は2013年フロン排出抑制法に改正されました。

フロン排出抑制法では、製造から廃棄まで使用済みフロン類の回収・破壊を含むライフサイクル全体を対象とした包括的な対策が導入されました。
そして2020年からは回収義務などに関する規制が強化されました。

例えば、
業務用のエアコンや冷蔵庫・冷凍庫等の冷媒にフロン類を使っている機器(第1種特定製品)を使っている事業者には、
機器の点検実施義務(フロン類の漏えいの有無等)がありますが、改正により機器を廃棄した後も3年間は点検記録を保存する義務があります(第1種特定製品の管理者の判断の基準となるべき事項(H26経産・環境省告示13号))。


そしてフロン類の充填・回収は、第一種フロン類充填回収業者のみが可能で、機器を廃棄する際には、まず第一種フロン類充填回収業者にフロン類の回収を依頼する必要があります(法第41条)。そして、フロン類の回収を怠ると即座に50万円以下の罰金刑が科せられます(法第104条第2号)

上記のフロン類回収の際には、第一種フロン類充填回収業者から「引取証明書」が発行され(法第45条第1項)、この証明書は3年間保存する義務があります(法第45条第3項)

そして法改正により、機器を廃棄物処理業者やリサイクル業者に引き渡す際には「引取証明書の写し」を交付する義務が追加されました(法第45条の2第1項)


このようにフロン類を使用している「業務用機器」の取扱いに関しては、フロン排出抑制法で規制されています。

それでは家庭用のエアコンや冷蔵庫、自動車のエアコン等のフロン類を使用している機器はどうでしょうか?
こちらはそれぞれ、特定家庭用機器再商品化法(以下「家電リサイクル法」)や、使用済自動車の再資源化等に関する法律(以下「自動車リサイクル法」)によってフロン類の回収がされるように定められています。

 このように国際的な地策が迅速にとられた結果、南極でも2060年頃には1980年レベルまでオゾン層が回復すると予測されています。
このため、オゾン層保護は地球環境問題の中では最も効果をあげている取組みであるといわれています。


次回は温暖化対策について触れてみたいと思います。

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