医療分野でのモバイル技術の活用

国や地域の状況により、様々な医療の形が求められます。日本でも地方での医師不足や医療アクセスの問題などが挙げられます。医療の中の手段のひとつとして、今回は、モバイルヘルスに関するレビューを取り上げてみました。

医療従事者間のコミュニケーションとケアマネジメントを促進するためのモバイル技術の活用
Mobile technologies to support healthcare provider to healthcare provider communication and management of care (Review)

目的:
医療従事者が携帯電話などのモバイルデバイスを介したmHealth(モバイルヘルス)サービスを利用して、他の医療従事者とコミュニケーションをとることで、ヘルスケアへの迅速なアクセスが可能になり、患者の健康状態を改善できるかどうかについて調査すること。

主な結果:
医療ケアを必要とする5766人以上の対象者を含む研究が19件該当した。そのうち16件の研究は高所得国での研究であった。

1.プライマリ・ヘルスケア従事者がモバイル技術を使って病院の専門家に相談することの効果
‐ 慢性腎疾患患者がガイドラインに従って治療されたかどうか、乾癬患者の健康状態や生活の質については、ほとんど差がない。
‐ 糖尿病患者が網膜症スクリーニング検査や何らかの症状に対する超音波検査を受ける可能性を高めること、また皮膚疾患患者のクリニックへの紹介や受診、その他の健康問題のフォローアップのためのクリニックへの紹介を減らすかもしれない。
‐ 医療従事者や患者の満足度、医療提供にかかる費用にはほとんど差がない。

2.救急医がモバイル技術を使って病院の専門家に相談することによる効果
‐ やや迅速に患者対応がなされている。
※救急医のガイドライン遵守度、患者の健康とウェルビーイング、医療従事者や患者の満足度、コストに関するモバイル技術の効果を調べた研究はなかった。

3.地域医療や在宅医療従事者がモバイル技術を使って診療所のスタッフに相談することによる効果
‐ 糖尿病による足部潰瘍のある患者や経管栄養が必要な高齢者が看護師に訪問してもらう回数や入院回数にはほとんど差がない。
‐ HIVや糖尿病患者の死亡者数に違いはないかもしれない。また、関節リウマチ患者の健康状態や生活の質にもほとんど、あるいは全く差はないようだ。
‐ 糖尿病やリウマチ性関節炎患者の満足度には、ほとんど、あるいは全く差はない。
※地域医療従事者がガイドラインを遵守しているか、医療を受けられるまでの時間、医療従事者の満足度、コスト、技術的な課題に関して、モバイル技術の効果を調べた研究はなかった。

 今回のレビューは2019年までの研究を対象としていました。もう少し何か効果があるものかと思いながら読んだレビューだったのですが、意外と研究がなされていないのだなと感じた一方で、評価の難しいテーマであることにも気づきました。しかしモバイルヘルスなどの新たな技術や手段を必要な場所で適切に利用することの検討は、医療の手段を増やすこと、より安心で安全な医療の提供に寄与するものだと思います。また今回のパンデミックに対して様々な対応や工夫がなされていることも、今後のよりよい医療体制の構築、発展につながるのではないでしょうか。

(文責:山田)

Mobile technologies to support healthcare provider to healthcare provider communication and management of care (Review):https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD012927.pub2/epdf/full


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