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研究業績の管理とアピール

今回は若手の研究者や博士課程の学生さん向けのお話をしたいと思います。
皆さんは、これまでに自分が行ってきた研究の業績をアピールする場をお持ちですか?
毎年、所属施設へは申請しているけど、それ以外は特にしていない、という方もいらっしゃるかもしれません。
なぜ、わざわざ手間をかけてアピールすることにどんなメリットがあるのか、どういう方法があるのか、をご紹介したいと思います。

researchmap


日本学術振興会の科学研究費助成事業(通称、科研費)に申請したことがある方は、「researchmap」に登録するように促されたことがあると思います。
これは、2019年度の公募から、「審査の際に審査委員がresearchmapと科学研究費助成事業データベース(KAKEN)の情報を参照する」ようになったからです。
科研費の申請書では、申請者の研究遂行能力を示すために、これまでの論文業績や学会発表を記載することが重要です。しかし、そのページは最大でも2ページまでであり、題名や雑誌名は書けても、研究の概要を記載するスペースはありません。
また、申請書内には書ききれないような業績、例えば、学術集会の事務局をお手伝いしたことがあったり、研究班の一員として活動をしていたり、学外の学術貢献活動をした経験があり、それぞれが申請の研究課題と関連があるかもしれません。
審査委員の方は大量の申請書をチェックするため、申請者1人1人の名前を使って、Googleや医中誌で検索してくれることはないでしょう。
しかし、researchmapに業績がまとまっていれば、見てもらえるチャンスは生まれるかもしれません。そのほんのちょっとが、申請書の評価を上げる可能性があるなら、登録する価値はあるかもしれません。

とはいえ、かもしれない、ばかりの科研費でのメリットが登録作業に見合うのか、は人によると思います。
私自身は、科研費の申請よりも、自分の業績の管理が便利だと感じています。
researchmapは医中誌やMEDLINE、KAKENなどと連携ができるようになっており、自分の研究業績を取り込むことができます。
若手の研究者の方で、業績が英文のみ、という方は稀で、日本語の論文や学会発表、英語の論文などがあって、まとめようとすると全部手作業になるということも多いのではないでしょうか。
また、Web上にあることで、どこからでも自分の業績を確認することができるということが、地味に便利だと感じることもあります。

ただし、researchmapに登録できるのは研究者番号を持っている研究者だけです。
研究者番号を持っていない臨床の方や学生はどうしたらいいでしょうか。
researchmap以外でも、ORCIDやPublonsなどでアカウントを作成することで、自分の業績を管理できます。
特に、これらは海外の研究者や編集者にアピールすることもできます。

ORCID


ORCIDは研究者を一意に識別するためのものです。
簡単にいうと、同姓同名の研究者の識別や、氏名が変更になった場合でも一貫性を持って研究者のデータを蓄積することが目的とされています。
英語論文の投稿の際には、このORCIDを入力することが推奨されている雑誌も多いです。
ただ単に、識別番号があるというだけではなく、マイページにこれまでの経歴や論文業績を登録することが可能です。
また、ORCIDはresearchmapやPublonsと連携することができることも魅力の一つです。

publons


もともとは査読業績のデータ化を目的として開発されたものです。
業績として見えにくい査読の実績を蓄積し、研究者の科学への貢献を評価するとともに、雑誌の編集者からすると、適切な査読者選択に利用できることが強みです。
ただし、査読業績意外にも、ORCIDと連携して、論文業績を管理することができます。
Web of Scienceが検索できる範囲内で、引用回数やh-indexなどの情報がアピールできることも魅力です。
そのため、まだ査読をする側ではない若手の方にとっても、登録しておく価値はあると言えます。

この他に、Google scholarでアカウントを作成して、論文業績を管理することが可能です。
個人的な感覚では、自分の論文が引用されているかどうかを確認する、という点ではGoogle scholarが一番幅広く情報が集まっているように思います。

皆さんもこれらのツールを活用して、自身の業績管理とアピールをしてはいかがでしょうか。

古藤雄大

各種ホームページ
researchmap: https://researchmap.jp/
ORCID: https://orcid.org/
Publons: https://publons.com/about/home/
Google scholar: https://scholar.google.co.jp/

画像:いらすとや ペーパーレス化のイラスト


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