論文までに苦手克服!会社法の思考過程 -論文答案編-
こんにちは、しまのです。
前回に引き続き、今回も会社法の思考過程についての記事となります。
0. はじめに
会社法において重要な視点は、債権者と株主(+取引の相手方等)の利益保護であることは前回お話しました。
今回は、その理解を答案にどのように反映していくかについて説明しようと思います。
1. なぜ答案に法の理解を示す必要があるのか
予備試験の問題は、一般に論パ貼り付けの当てはめ勝負の傾向が強いです。論点に配点があることも過去の再現答案から明らかであり、メイン論点を落とすとそれだけで致命傷になりかねません。
しかし、それがすべてではありません。論点を落とした答案や、論点は落としていないものの当てはめで書き負けたにもかかわらず、高評価になる答案も一定数存在します。R5予備の商法はその一例でした。比較的書きやすい問題であったため、ほとんどの人が論点を漏らさずに書いているように思いました。しかし、蓋を開けてみると、A答案でも筋外しが散見されたり、あてはめでの書き漏れがあったりと、一概に当てはめ勝負とはいえない結果だったと思います。
これの意味するところは、定性的評価のウエイトも軽視できないということです。では定性評価の対象は何か。それこそが、会社法の理解、つまり、会社法が保護する利益の調整の視点を示せたかどうかにあると私は考えます。
私のR5商法の答案は、設問1と設問2いずれにおいても前段で回答の筋をやや外しており、後段も当てはめの事情を拾い切れていません。また、設問1での裁量棄却の検討も忘れました。にもかかわらずA評価がもらえたのは、会社法の理解を上手く表現できたからだと思っています。
前置きが長くなりました。今回の記事では、まず、私の思考プロセスを抽象的に説明します。その上で、予備のR5商法の私の答案構成をベースにして、どのような思考過程で答案を書いたのかを説明します。そして、出題趣旨と比較して、私の思考過程がどのように評価されたのかを検討しようと思います。
2. 論文答案のフレームワーク
今回は論文答案の記事ということで、まず答案のフレームワークに関する一般論を書きます。民事系は、基本的に以下の構成で検討することになると思います。
①当事者の不満の抽出
②当事者の主張を叶えるための法律構成(条文選択)
③条文の要件該当性の検討
→問題となる要件は、解釈をいれる
④結論
3. 問題文に即した利益衡量の視点
この中で、ポイントになるのは③の要件解釈なのは明らかです。要件充足性が微妙じゃないと争点になりませんもんね。ここで多くの人は判例を想起します。そして、判例規範を使って要件解釈を行い、問題文の事実のに当てはめて結論を出します。
しかし、冷静に考えてみてください。これは作問者が求めた回答筋でしょうか。判例規範に機械的に当てはめるという作業で、当事者の利益を調整することはできるのでしょうか。
問題文と判例の事案は完全には一致しないはずです。そのため、判例規範が必ずしも妥当するとは限らず、そこに妥当な結論を導く理論構成に『悩み』が生まれるはずです。その悩みから逃げず、正面から向き合って利益衡量を示した答案こそが、試験委員の求める答案だと思います。
その利益衡量を示すことは、問題文の利益関係を正確に把握することが出発点です。その手掛かりとなるのが、これまで散々説明してきた株主・債権者(+取引の相手方)の利益です。問題文の事実から、誰の利益と誰の利益が対立しているのか、法の趣旨から保護すべきなのはどちらか、これを答案に表現することが、この試験の要求事項だと私は考えます。
ここまで散々偉そうに語ってきましたが、私が予備の時点で上記の思考を答案に表現できた科目は会社法と公法系くらいです。民法・民訴は判例規範に当てはめるまでしかできませんでしたし、刑事系に至っては判例の理解すら危うい状況でした。
なので、上記のとおり答案を作れるようになる必要は必ずしもありません。悩みから逃げても判例から結論を導けば、最悪守れます。
ただ、この理解を意識しているかどうかで、答案に質に差は出ます。そして、試験委員はこの差を見逃さないと思います。そのため、日ごろから利益調整の視点をもって問題に取り組むことで、答案は洗練されます。1か月もあれば別人のように成長することもできるので、ぜひこの視点を取り入れてみてください。
4. 注意書き
問題文の特殊事情を踏まえた規範定立が必要と書きましたが、あくまで判例への理解があることが前提です。判例規範で適切な利益衡量をできるなら、無理にその射程を問題にする必要はありません。
やみくもに判例を外せという趣旨ではないため、この点はご注意ください。
5. 実践編① 令和5予備試験 商法 設問1
(1) 答案構成
(2)分析
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