妻が包丁で指を切っただけだと思ってたら救急車に乗っていた話

日をめくって深夜一時。
今日起こった私の家族の小さな事件を文章で吐き出さなければ眠れないと思い筆をとっている。
暇つぶしだと思って少し付き合って欲しい。

妻が包丁で指を切った

「指切ってもうたー!」
リモートワーク中にキッチンから妻の声が聞こえた。
驚いて駆け寄ると指をおさえている。
「いたーー。でもちょっと切っただけやから大丈夫。」
大事ではなさそうだ。
気をつけろよ、なんて言いながら私は呑気に血のついたまな板を片付けたり絆創膏を用意したりしていた。

ふと、妻に目をやると洗面台に上半身をあずけて足が震えている。

様子がおかしい

「大丈夫か?」声をかけると
「やめて…」と妻が言う。
…やめて?…どういうこと…?何を言っているのか分からない。
後から聞くとこの辺りから意識が混濁し、記憶も無いそうだ。

再び「大丈夫か?」声をかけ上体を起こしてみる。
妻の顔は真っ青。目は虚で手も冷たい。
「あ〝ぁ〝ーーーー」
安いゾンビ映画のような、うめき声を出している。
こちらの血の気も引く。
明らかに様子がおかしい。

私は気が動転してしまった。
「おい…おい……おい!」
最後は怒鳴っていた。
「あ…あぁ…大丈夫」
後から聞くと私の怒鳴り声で意識を取り戻したらしい。

最愛の妻の死を連想させるには十分な状況であった。
先ほどまで2人で病院行くほどでもないね、などと相談していた状況が一変した。指を切っただけなのに?これどういうこと?
恥ずかしながらこの時点で私は冷静さを欠いていた。

とにかく病院へ行こう

付近の形成外科を検索して電話をかけてみる。
2軒かけたが今から行っても診察まで30分以上かかるとのこと。急ぎなら救急医療をやっているところへ電話をかけなさい、と言われる。
妻の呼吸は荒い。顔色も戻らない。とにかく病院へ連れて行かなければ。

救急医療センターのある病院へ電話する。おそらく通常の来院予約番号に電話してしまったらしく呑気な音声ガイダンスが流れる。どうしよう、ボタンを押して担当者が出てくるのは待っていられない。どうしよう、救急車の番号に電話して相談しようか。あれ?119って何番だったっけ?私は焦っていた。混乱していた。

とにかく119に電話してみる。
「どうされましたか?火事ですか救急ですか?」
「妻が…という状態なんですがどうしたらよいでしょうか!」
「相談であれば #7119 に電話してください」
それはそうだ。119は緊急性が高い方が電話する番号だ。救急車を呼ぶほどではないはずだ。まだ、たぶん、大丈夫だ。
#7119に電話してみる。押し間違いか?何度電話してもつながらない。
おそらく私の契約しているMVNOでは接続できないようだった。(本当にそうなのかは確認中)

妻の呼吸はさらに荒くなっている。
「大丈夫か?」
「血が…止まらへん…」
もう無理だ。とにかく救急車に来てもらおう。119に再び電話する。
「すみません、救急車をお願いします」

病院へ

救急車は5分程度で到着してくれたと思う。
その間娘の通っている放課後こども教室に連絡をとりすぐ帰してもらうように手配。準備と着替えをしている間に救急救命士が到着。
妻と帰ってきた娘をランドセルもそのままに救急車に乗り込ませる。
妻の呼吸はまだ荒い。

救急車内で適切に処置を施していただきつつ病院へ。手を握ることしかできない自分に歯痒さを感じている間に病院へ到着。だんだん妻の様子も落ち着いてきていた。
妻は処置室へ案内され私と娘は受付へ。不安そうな娘を落ち着かせつつしばらく待っていると妻が処置室から出てくる。痛そうにはしているものの、いつもの会話ができる、いつもの妻に戻っていた。心から安堵した。

いったいぜんたい何故こんなことに?

妻が少し指を切っただけ、と言っていた傷は指の腹を直径5mmほど丸く切り落としたような深い傷だったそうだ。妻の一部だった肉片はまな板に転がり、私は気づかずに流してしまっていたらしい。
病院でもなかなか血は止まらず、結果的には傷口を焼く?ような処置でやっと止血できたとのこと。

同じ傷や出血でも今回のような状態になる人、ならない人がおり、なる人は "怪我に弱い人" と救急救命士の方は表現されていた。おそらく妻は "怪我に弱い人" にあたるようで、今後気をつけようと心から思う。

反省

私は娘を持つ親でありながら付近の救急医療対応ができる病院の電話番号も事前に確認していなかった。娘を呼び戻す際、こども教室の電話番号も分からず、ずいぶんとまごついてしまった。普段エンジニアとして鍛えている情報収集・整理能力をなぜ家族に活かせていないのか、なぜ事前に確認しておかなかったのか。今猛省している。

もし大切な方がいらっしゃるなら何かがあった時の連絡先を、医療機関や勤務先、子供の習い事の連絡先などを、確認しましょう。今回は大事には至りませんでしたが、もし、命に関わるような事態に陥った際、迅速な連絡で救えるかもしれません。私は今日から準備を始めます。

最後に

ここまで拙い文章にお付き合いいただきありがとうございます。時計はちょうど3時をまわりましたが文章で吐き出すことでようやく心が落ち着いてきました。今後も大切な家族をちゃんと大切にできるように精進していこうと思います。

それでは。

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