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ジロリンタン備忘録210805

 1950年代のフォーセット出版/ゴールド・メダル(金メダルの意味)のペイパーバックを現代に蘇らせるつもりで創立した<ハード・ケイス・クライム>(HCC)の出版人兼編集人であるチャールズ・アーダイが、来年2022年2月に刊行する予定の作品をツイッターで公開した。
 ドナルド・E・ウェストレイクの Call Me a Cab という作品だ。HCCはこれまでローレンス・ブロックやウェストレイクの古いペイパーバックを再刊をしているが、2008年の大晦日にメキシコ旅行中に亡くなったウェストレイクの未発表小説をこれまで3作ほど刊行しているので、たぶんこれが最後の死後出版になるはずだ。でも、もう1作残っているぞと言う奴もいるが、確認は取れない。
 殺人の起こらないサスペンス小説だと、アーダイは主張している。話はこうだ。ニューヨークのタクシー運転手トムは、マンハッタンで若い美人をタクシーに乗せる。彼女はケネディー空港までやってほしいと言うが、何か心配事があるらしい。LAにいる恋人と結婚することになっている。しかし、彼女は彼と結婚したいのか、したくないのか、まだ決心がつかないのだ。LAに到着する5時間後にイエスかノーか返事をしないといけないのに、まだ決心がつかない。それで、LAまでのタクシー代はいくらか尋ねると、4千ドルだとわかる。彼女にとっては一生の問題なので、4千ドルでも借金してタクシーで行くつもりだ。
 という状況設定だ。実はこの長編小説の短縮中編版は<レッドブック>1979年6月号に掲載されていて、おれは読んでいる。完成させた長編がどこの出版社にも売れなかったので、ウェストレイクは中編版を女性雑誌に売ったわけだ。これは、1979年12月にウェストレイクにインタヴューしたときに、聞いた話だ。(詳しくは『尋問・自供』早川書房を参照)
 そのオリジナル長編が執筆完了から約40年ぶりに出版されるわけだ。見本の第1章を読んだが、ウェストレイクの『踊る黄金像』や『ニューヨーク編集者物語』のような雰囲気で、おれ好みのお話だ。

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 5日の朝に大変なニュースが飛び込んできた。8月下旬にルイジアナ州ニューオリンズで催される予定だった<バウチャーコン>がコロナウイルスのデルタ株の感染拡大のせいでキャンセルになった。
 じつは去年、2020年にカリフォーニア州サクラメントで催されるはずだった<バウチャーコン>もキャンセルになったし、ほかのミステリー大会もほとんどキャンセルになった。ついに、今年もキャンセルが続いている。今年はワクチン接種が広がっているので、マスクもつけずに全国大会などが開けるという希望があったのに、残念ながら、コロナウイルスとの戦いはまだまだ終息しそうにない。
 ニューオーリンズ大会の執行委員の皆様は、2018年秋に開催地が決定してからずっと一所懸命に準備してきたのに、開催時の半月前にキャンセルを決意するのはさぞ悔しかっただろうと察する。
 でも、2025年にもしコロナが収束していたら、ニューオーリンズで<バウチャーコン>が開催されるらしい。そのときは、2021年の来賓たちが戻ってきてくれるはずだ。つまり、生涯功労来賓はマイクル・コナリーのままだ。
 まあ、それでも2021年度のアンソニー賞は予定どおり、8月28日か29日には発表されるだろうし、<バウチャーコン>の開会式で発表されるはずだったマキャヴィティー賞やバリー賞も発表されるだろう。

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 では、また…… 



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