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ジロリンタン備忘録211213

コンセプチュアル・アートって何?

 きのうの12月12日は何を書こうと考えていたけど、フランク・シナトラの誕生日の話をしたら長くなるし、12月13日にロス・マクドナルドの誕生日の話をしても長くなる。12日の夜にNHK総合の<日曜美術館>(俗に「ニチビ」と呼ばれている)を観ていたら、富山生まれの篁 牛人(たかむら・ぎゅうじん)の作品展の情報を知られていた。落語には「抜け雀」など放浪画家のネタが多いが、篁は自分で描いた絵を持って、居酒屋で酒を飲ましてもらっていた。21世紀の現在はそんなことが困難になっているのが、悲しい。
 篁(竹カンムリに皇太子の皇と書いて「たかむら」と読む)は本名は、篁浄信というので、苗字は本名なのだ。篁牛人の展覧会について、先週「ぶらぶら美術館」で紹介していたので、最後にパトロンに出会えたことは知っていた。それは幸せだと思うが、最後の10年は病床で過ごしたというのは、家族が可哀想だったなあ。
 そのあとの「アートシーン」は出演者も同じで続きのようだが、番組登録の上では別番組なのだ。そこで、「ミニマル/コンセプチュアル」企画展の紹介があった。最初のポスターを見ると、黒い立方体がたくさん並べられていて、その端にたくさん並べた立方体を集めてた正方形の平面体が一つある。どうも、カール・アンドレの作品に似ているなあと思ったら、やっぱりそうだった。コンセプチュアル・アートと言えば、おれにとっては、ソル・ルウィットが一番身近だ。
 あとで、ソル・ルウィットの立方体を合わせた日本のジャングルジム(英語でも jungle-gym)のような立体作品も出てきた。おれは60年代後半にニューヨークい住んでいた時、このジャングルジムのような木製の立体作品に白いペイントを塗ったり、作品の写真撮影の助手をしたり、個人のロフトやニューヨーク近代美術館 (MOMA) のルウィット展でウォール・ドローイングをしたり、ソルにはたいへん世話になったのだ。そのとき、ソルのエイジェントはウェスト・ブロードウェイにあるジョン・ウェバー・ギャラリーで、そこから作品を外に出す手伝いもしたような気もするが、もう約50年も前のことなので、記憶がほとんどないのだ。
 おれの友人がイースト・ヴィレッジからロウワー・イーストサイドのロフトに引っ越すというので手伝ったら、そのロフト・ビルディングにはおれの大学の美術教授が住んでいた。そのロフト・ビルディングには、アーティストが多く住んでいて、ソルもその一人だった。おれの友人たちがソルの作品の手伝いをしているので、手が足りないときに、おれも駆り出されたというわけだ。
 2000年代前半にニューヨークを訪れたとき、西57丁目のあるギャラリーで「ソル・ルウィット展」があったので、観に行ったが、会場にソルはいなかった。そして、2、3年前にMOMA とユニクロがソル・ルウィットのドローイングをプリントしたTシャツを販売したので、数種類買った。見出しの画像はそのときの付属カードだ。ちょうど正方形なので、ビールのコースターにしている。
 じつは、「コンセプチュアル・アート」という命名は、ソルの美術雑誌に発表した記事から来ているのだということを、今頃知った。70年代にソルのロフトにはいったことがあるが、その頃は珍しかったカプチーノ・マシーンや、だシール・ハメットのペイパーバック(タイトルは忘れた)、マッキントッシュ製(コンピューターではない)のカラフルな椅子を見たのが印象に残っている。
 おれの書いているジョー・ヴェニスものの中短編でソル・ルイットの作品がときどき登場するのは、そのときのことを忘れないためかもしれない。
 残念ながら、ソル・ルウィットは2007年に78歳で亡くなった。こういうことを書いていると、悲しくなるので、今晩はこれで終わろう。
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