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私は「右」と「→」、「左」と「←」が咄嗟に結び付かない。
「左」「右」という「言葉」と実際の「方向」がなかなか結び付かないのだ。
少しは間をおけば「左右」という言葉とそれらが意味する方向が頭の中で結び付くのだが、👇のブログで書かれている通りのプロセスが必要である。
「右に曲がってください」という指示に対して・・・
インターネット上に、左右が苦手な人が選択しない方がいい職業に「医師」と記載しているサイトが多くて、ドキッとしてしまう。
「自分は左右の判断が苦手」と常に自覚しているので、左右の判定はかなり慎重に行っている。また、対面した患者の身体所見はまず「右側」からとる、という動作を体に覚えこませている。
だからなのか、仕事上で「左右」の聞き間違いや記載間違いによる致命的なミスをしたことは、今のところはない。
MRIやCTなどの画像は、有難いことに右側に「R」と記載されていることがほとんどなので、苦労はしない。
運転は困らない。左右を「イメージする」ことはすぐにできるからだ。
「左右」という言葉を方向に置換したり、方向を「左右」という言葉に置換することは苦手だが、身体感覚で方向を認知することには支障はない。「上下」や「前後」と同じようにすぐに認知できるようだ。
ゆえに音声ナビは苦手だが、地図を読むのはむしろ得意だ。「地図を読む」だけなら、わざわざ方向を「左右」に置き換える必要はない。地図をきちんとみておけば、初めての場所でも道に迷うことは、滅多にない。
そして、不思議なことに「東西」はすぐに言葉に置換できる。地図で示される時も、「左へ曲がれ」と言われるより「西の方向へ曲がれ」と言われた方がわかりやすい。
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左右識別困難について検索してみて、参考になったものを挙げる。
まず2006年に愛媛大学から発表された論文「健常大学生における左右識別困難」
この研究で使用された質問項目が、左右識別困難の特徴を見事に表していて興味深い。
私にとって、思い当たることばかりだ。
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次にQuarterly Journal of Experimental Psychologyという雑誌に掲載された論文 「Distinguishing left from right: A large-scale investigation of left–right confusion in healthy individuals」
オランダで行われた調査だ。
404人中59人(14.6%)が「自分の左右識別が不十分である」と自己評価していた、という。
そして最も印象に残ったのは以下の表だ。
何も考えずに左右を判断できる人は半分ぐらい(46.0%)で、左右の判断に自分の手を利用している人が結構多い(42.4%)、ということだ。
手を使っている人の内訳は
親指と人差し指「L」の形が作れる方が「左」、と判断するのが13.2%(オランダ語で「左」は「Links」)
字を書く方の手はどちらか、で判断するのが28.2%
何か(ジュエリーなど)を付けている手はどちらか、で判断するのが1.0%
だそうな。
なるほど、「L」を作る、というのは実際に使えそうだ。
「左右識別が咄嗟にできない人は意外と多い」と考えてよさそうだ。
では何故「咄嗟にできない」のか?
BBCの記事「Why some people can't tell left from right」が参考になった。
クィーンズ大学ベルファストの臨床教授であるGerard Gormleyが言うには、
まず自分自身の「左右」を判断した後に、対面している相手の「左右」を判断するために、「自分が他者と同じ方向を向くように、自分自身の身体を心的回転させている」という。
なお、心的回転とは、「思い浮かべたイメージを頭の中で回転変換させること」だそうな。
人間にとって「左右」の判断は、「上下」や「遠近」などを判断するよりも、はるかに複雑で難しいものだという。
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しかし、「心的回転が不得意」だけでは、私の感じている左右認識の困難は説明できない。
また、前述の愛媛大学の論文で使用された項目のうち、少なくとも以下の5項目は「心的回転が不得意」なだけでは説明がつかない。
これらは、どちらかというと私と同様に、「左」「右」という「言葉」と実際の「方向」が結びつかないことが原因かもしれない。
実際、同論文では以下のように述べられている。
そこで、この「言葉」と「方向」の関係について考察した論文を読んでみた。
(続く)