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【ブルアカ】楽園の話

記憶が薄れないうちにvol.3の感想でも書こう。
ということでエデン条約編でしばしば言及されていた“楽園”を主軸になにがし文章を置いておこうと思う。
別に考察というわけでもなく、解説というわけでもなく、まとまらない脳みそを整理するため書き散らしているだけなのでそのへんよろしゅう。

当然ネタバレしかないです。vol.3読んでない人は回れ右で

 


さて、エデン条約編は開幕セイアの語りから始まる。主題は「楽園にたどり着きし者の真実を、証明することはできるのか」
いきなり何を言っているんだと面食らったが、要は
「もし全てが充足する楽園にいるならば、そこから外界へ出る必要はないので、外部で楽園観測者に会うことはない=楽園の外から楽園の所在を確認することはできない」
のではないかという哲学問答である。

小難しいことを言っているが、
私はセイアが「私は辛く厳しく吐き気のする現実に心底疲れ果てているのですが、どこかに楽園があるのではないかと希望を捨てきれずにいます。」と自己紹介してくれているのだろう。
と解釈した。

 

エデン編には多数の視点と思惑があるが、セイア視点に着目すると「彼女がこの問答に折り合いをつけるまでの物語」だ。

実際に彼女はアズサと接するうちに考えが変化していくわけだが、その話をする前に前提を確認しておきたい。

 

そもそも「キヴォトス」は楽園ではないのか?

古代キリスト教の神学者オリゲネスは“楽園”と“天国”を区別する際
「楽園は楽園は高潔な死者の魂が天国へ登る準備をする地上の学校である」と述べたそうだ。
学校が世界単位のキヴォトスと通じる概念である。

“楽園”の定義をどうするかにもよるが……
・死が基本的には存在しない
・外見が画一的(皆美少女、もしくは動物、もしくはロボット?)で格差が少ない
・皆が等しく一定以上の力を持つことができる

と現実世界の私から見れば十分楽園に見える。
しかし実情はどうか、

肉体の強靭さは物騒な火器で抗争する免罪符になり、犬と猫すら諍いあい
ブラックマーケットでは犯罪が横行し
トリニティとゲヘナは四六時中いがみあう

まったくもって不幸、楽園なんて程遠く見える。

 

こうなるとブルーアーカイブ自体が「楽園に居ながら楽園を破壊してしまった者たちの話」なのではないだろうか。

「楽園にたどり着きし者の真実を、証明することはできるのか」
この言葉は、
「楽園にたどり着きし者自身が、その事実を自覚することはできるだろうか」という意味にも思える。

セイアがここではないどこかをいくら探そうが見つからないのもさもありなん。

 

ここまで読み替えるとアズサのスタンスが腑に落ちる

アズサは現実が辛く厳しいことを自覚しているが、しかしそれでも“楽園”があると信じている。
どこにあるのか、この現実にである。

だがその思想に初めからたどり着いていたわけではない。
アリウス時代のアズサは他の生徒達と同じように「Vanitas vanitatum omnia vanitas=全ては虚無である」という思想の元に生きていた。
いや生きることを強いられていた。

ただセイア襲撃の際、もっというとサオリに庇われた事件の時点でもうアリウスでの常識に疑問を抱いていた事は間違いない。

それが生来の小さな反骨心だったにせよ、
セイアとの出合い、トリニティへの編入、補習授業部での暮らしを通じ、より強固な信念へと成長した。

 

そして殺人の覚悟を決め、スクワッドと一人で戦い、友との絆を爆破し、
そこまでしても解決には至らず、絶望の淵へ沈んでも。
それでも諦めず、歩きだした。

セイアはそんなアズサの強さを目の当たりにし、覚悟を決める。
「何もかもが虚しく、破局に至るエンディング」の先を見る勇気を手に入れたのだ。
他者を奮い立たせるほどの強い意志、まさしくヒーロー。

その思いはヒフミのハッピーエンド宣言によって結実する。
ハッピーエンドとはつまり楽園へ至るということ
「壊れてしまった楽園を取り戻す話」、それこそがブルーアーカイブだと定義された。

 

そして先生は我々こそがエデン条約機構だと宣言する。

「楽園にたどり着きし者の真実を、証明することはできるのか」
そんな証明はできない
しかし
「楽園にたどり着きし者自身が、その事実を自覚することはできるだろうか」
と読み替えた上で逆説をとると
「ここが楽園であると自覚すれば、楽園へと至る」
まったくもって詭弁だが、それが大人のやり方。

そんな裏ワザを目の当たりにしたセイアもまた納得する。納得というか、保留というか。
稚気じみたなぞなぞ問答をやめ、問題に折り合いをつけるすべを学んだ彼女は、一つ大人になったのかもしれない。

そして久方ぶりにティーパーティは揃う、楽園の実現のために。

 

めでたしめでたし

 


と、ここで終わればそれこそ大団円だったのだが……

この記事では意図的にアリウスの話を一切していない。
なんならミカの話もしていない。
友情努力勝利部分にしか触れれなかった。

これら暗部を書こうとすると記事が倍になるどころでは済まなくなるため、一旦切ろうと思う。

 

1章にて提示された問題は概ね3章で解決。
語り手のようなツラをしていたセイアの心境がもっとも変化し、成長しているというのがかなり好みです。

アズサは最初から最後まで台風の目であり、ヒーローであったが、年端も行かぬ少女には必要のない苦しみをあまりに味わいすぎた。
願わくばこの先が安寧であればいいが……この物語は結局「アズサがめちゃくちゃ強かったからどうにかなった」という感もある。

その強固すぎる精神性の根も気になるところだが、アズサを持っていないのでわからない。
なぜ我がシャーレにはアズサがいないのだろう。

 

次回がまとまればアリウスのことを書きたい。
というかようやくイベントが読める。
この記事をずっとぐるぐる考えていたせいで新しいストーリーを取り込む余裕がなかったんだよな。

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