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30歳差。水子供養。

稽留流産の摘出手術が終わったその夜。
(以下、人によって気分を害される内容もあるので留意ください)

私は水子が入ったケースから内容物を取り出し、どのような状態なのかを確認してみた。
レバーのような塊の胎盤に、人肌の色をした物体。
その物体の細かい凹凸を確認してみたら、目鼻口、腕のライン。
全体で小指ほどの大きさだったが、そこには確かに生命が宿っていたことを感じた。
愛おしくなり、手のひらに乗せて何度も頭を撫でた。

全快までには時間を要した。痛みは尾を引き、家事もままならない。
自宅で横になっている間に、水子供養について調べた。

  • 通常は12週以上が火葬可能で、死産届を提出できる

  • 12週未満でも火葬可能な寺院、神社はあるが、ペット火葬としての処置になる

近隣に12週未満も対応してくれる神社はあったが、夫が仏教徒であり、少し離れた地域の寺院を予約した。

コロナ禍の制限ですぐにとはいかず、我が子は10日ほど冷蔵庫に保管された。



寺院はSNSで想像していたよりはこじんまりしていたが、内装は装飾華美で、お堂やお墓の様子、おみくじの多様さが参拝客の多さを物語っていた。
住職の自宅が敷地内にあり、子供がにこやかに通り過ぎていく。
アットホームな雰囲気に、心が癒された。

ペット火葬車の焼却炉の中に置かれる我が子。
炉のサイズにはあまりにも小さく、お供え花に隠れて見えなくなってしまった。
骨はなく遺灰もほとんど残らないため、“おしるし“として10円玉を添えた。

ドラマを観る時以外はあまり泣かない夫が、鼻をすすりながら敷地内から出ていった。
本人は花粉症のせいと言う。
普段は表さない感情を見ることができたように感じ、「哀しんでいたのは自分だけじゃないんだ」と、少し安心した。


骨壺には我が子の魂が宿ったコインを入れた。
帰りの車内では壺を腕に抱えていたものの、時折鳴るカラカラという音。

途中で下腹痛に襲われ、摘出手術をおこなったクリニックに寄った。

3月に入ったばかりの寒さが傷に響いたのかは、分からない。
供養の帰りに子宮が鳴き声をあげたことによって、「ああ、もうあの子はいないんだ」と再認識したと同時に、
住職や看護師の優しい笑顔で、勇気をもらえた気がした。






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